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「ビジネス書って楽しい!」 知恵と知識をシェアするブログ

カテゴリ : 経営・社長論

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(http://k-kabegami.com/nagoyajyo/12.html)

歴史上の人物でだれが好きか?というような質問はよくされていますが、そういったことを聞かれたら私はまっさきに徳川家康の名を挙げています。

けれど、徳川派は少数なような気がしています。
織田信長や豊臣秀吉は人気がありますが、家康はそれほど好きな人がいないのかもしれません。
なぜでしょうか?

考えてみて、2つ原因が思い当たりました。
ひとつは「狸オヤジ」などと揶揄されるように狡猾な手法を使って人を騙した、とか操ったと考えられているからかもしれません。
もうひとつはやはり、「織田がつき、羽柴がこねし天下餅、座りしままに食うは徳川」とも詠われているように、家康というのは生まれたのが2人よりも遅く、まだ長寿であったために偉業を成し遂げたと考えられている点でしょうか。
(※羽柴というのは豊臣秀吉のことです)

つまり、家康が大成功を成し得たのは「ラッキー」で運によるものだ、と・・・。
確かに、信長が腐敗しかけていた日本の旧価値社会を叩き壊し、秀吉がその後を継いで新しく創造の礎を築いたのは確かなことです。
けれど、家康の仕事というのは、本当に歌にも詠まれているとおりの前任者の功績をそのまま自分の手柄としてしまった、というようなものだったのでしょうか。

そんな疑問を解決するべく、童門冬二さんの『徳川家康の経営学』を読みました。


●破壊・建設・維持管理

歴史の順番的には、織田信長、豊臣秀吉、そして徳川家康と天下人がそれぞれ続きましたが、実は3人はみんな愛知県からの出です。
なので、3人はそれぞれ関連があってまったく知らないところからぽんと出てきたというのではありません。

秀吉はもともとは信長の家来でしたし、家康もまだ幼かった頃に「人質」として信長のところで過ごしていた時期があります。
(人質といっても今日、私たちが想像するような悲惨なものではなく、領土からは出れないけれどある程度の自由はあったようです。)

戦国の時代というのは、一般の民衆にとってつらい時期でした。
農民なども戦になれば戦場へ駆り出されるし、そこにはいつも「死」が隣り合わせでリスクとして存在しているのです。
戦になれば町が燃やされたり、負けてしまえば人質として過酷な労働を強制されることにもなります。

経済的にも安定しておらず貧困を極めていて、収穫できた米も二重、三重と年貢として持っていかれるのです。
そういった時代背景のなかで、民衆はだれもが世の「平和」を望んでいました。

3人は、それぞれ時代の空気のなかから、戦国民衆のニーズをキャッチし、「そのニーズを満たす社会をつくろう」と決意しました。

” そして、織田信長が旧価値社会の破壊、豊臣秀吉が新価値社会の建設、そして徳川家康が2人の先輩がやったことを微修正しながら、つまりローリングをしながら長持ちさせる、維持管理の仕事を分担しました。 ”

秀吉がつくり上げていた新しい社会システムをさらに発展・練磨させて、そのシステムを持続させるための社会基盤、礎を築いたのが家康ということができます。

” このへんは、伊達政宗や武田信玄や上杉謙信や毛利元就などが、やろうとしてできなかったことです。
つまり、事業の継続性や連続性があるということは、それを連続、継続していく人々の間に、
『共同精神』があったということです。 ”

ここがもっとも大きなポイントでしょう。
秀吉も家康も前任者の信長が成し遂げようとした事業をただ「形」だけ引き継いだのではなく、その「思想」までも含めて継いでいたということなのです。

もちろん、後任の2人がすべて信長が走ろうとしていたレールを目指したわけではありませんが、少なくない影響は受けていたはずです。

信長が旧社会システムの破壊、秀吉が新しくより時代に適したものを建設し、そして家康がそのシステムを「維持管理」しました。
ただ、そう聞くと私たちはどうも家康だけカンタンなことをしたように思えてしまうのではないでしょうか。

それは「維持」や「管理」という言葉の響きにあるのかもしれません。
しかし、家康がやったことは決して容易に成せるものではありません。

家康は自分一代だけ「維持」したのなら、それは特段目立った功績ではありません。
ポイントはその新しい社会システムを徳川15代、200年以上にもわたって平和な世を継続させる礎を築いたというところです。
それも、ただ保守的に守り通すのではなく、「進化」させながらです。

(信長が旧社会システムの破壊って具体的にどういうことをしたの?と気になる方は過去の記事:「織田信長に学ぶ『人の行く裏に道あり花の山』の生き方」をご覧ください。)


●家康は「世論」を常に意識して政治を行った

さて、家康は征夷大将軍に任命されて、晴れて名実ともに「天下人」となりますが、家康は決して権力の頂点に立って独断の政治を行うようなことはありませんでした。

” 意外なほど、家康は自分の行動基準を、「世論の動向」においていました。
つまり、自分を民心の求める方向に従わせたのです。 ”

それは家康の政治に対する態度が、
「きくことは天下の耳、みることは天下の目、理は天下の心。
この三つをとって是非を分明にし、身を摘みて人の痛みを知って、政道するは善政なり。
代々太平の根元と知るべし。」
ということにあったことからも明らかです。

と言っても、まあ、完全に利他的な心で「世のため、人のため」を願ったのではなく、民衆のニーズを聞き入れたのは徳川の幕府を長く続かせるため、という考えも多少はあったのですが・・・。


●「攻めの経営」もあった

世論や民衆の意見を聞いて、それに沿った政治を行っていくことは、言ってみれば「守りの経営」です。
しかし、時代の流れのなかでは、「攻め」が必要になるときもあります。

そのことは家康自身も、もちろん承知していて「攻めの経営」を行っています。

” 家康は、天皇から長屋の八っつぁんに至るまで、すべての日本人に、手枷足枷をはめました。
いわゆる、「法度」の制度です。
これによって、日本人である限りは「士農工商」のいずれかに当てはめられた。
しかも、それは世襲制であったのです。 ”


この手枷足枷は、やがて幕末の時代になると非常に「うっとうしい」ものになるのだが、これがあったからこそ新たな勢力の芽が生まれなかったという一面もあります。
長きにわたって幕府が力を維持していくためには、必要な措置だったのかもしれません。

また、ほかには家康が幕府を開くときに「江戸」を選んだことも「攻めの経営」だったと言えるでしょう。
それまでの日本の中心というのは、京都でした。
室町の足利将軍も豊臣秀吉も京都に幕府を開きました。
京都には公家や天皇がいたからです。

そんな1,500年の京都の歴史を無視して、「江戸」に幕府を開くと宣言したのですから当時は衝撃だったでしょう。
いまは東京都となって世界でも有数の人口密集地ですが、家康の時代の江戸というのは、まったく都会ではありませんでした。

商業(船)が盛んでもありませんでしたし、人口もそれほど多くありませんでした。
さらに水の問題が深刻で、大きな雨が降るとすぐに浸かってしまうような土地だったのです。
それを家康が江戸の大改革で、川そのものの向きや流れを変え、土地の埋め立ても積極的に行ったのです。

いままで当然とされていた京都や、すぐとなりの駿河(いまの静岡)の方に拠点を構えるのではなく、だれしもが思いつかなかった江戸に幕府を開くという新しい実施でした。

なので、家康はただ「維持管理」で守り抜いただけありませんでした。
より円滑に政治が運用でき、幕府(平和な世)が続くような社会システムを整備する、といった偉大な事業を成し遂げた人物だということができるでしょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

徳川家康の経営学―激動の時代を生き抜く (人物文庫)徳川家康の経営学―激動の時代を生き抜く (人物文庫)
著者:童門 冬二
販売元:学陽書房
(2002-12)
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先日の記事:『ケーズデンキの「がんばらばい」経営』で、創業以来64期連続増収という驚異的な成長をし続けている家電量販店ケーズデンキの秘密についてご紹介しました。
(まだ読まれていない方は、ぜひともご覧になってみてくださいね。)

本日もケーズホールディングス会長兼CEO、加藤修一さんの『がんばらない経営』からの学びをシェアします。

2009年から2010年にかけて、ケーズデンキを含む家電業界は、政府が発表したエコポイント制度のおかげでとても好調な期間でした。
私の実家でもTVをすべて買い替えましたし、多くの方が一斉に買いに走られて、締め切り直前の時期には品切れなども多数出てしまったというニュースを覚えています。

たくさんの家電量販店がプチバブルのような売上げ増加に浮かれていた時期でしたが、加藤さんはそのエコポイントのスタート段階で社員たちに向けて、次のように伝達したそうです。

” 「今年は売上げは達成できるから、無理な売上げをつくらなくていい。
それよりエコポイントの反動が来る来年のために、今年1年間をかけて来期の出店計画をたくさん出してほしい。」 ”

エコポイント制度は、名目上では「グリーンエネルギーの普及」と置いていましたが、中身は政府が施策した「経済危機対策」のひとつです。
この発表によって、消費者が一斉に家電を買い替えることは簡単に予想されます。
というか、そのように仕向けているのですから当然の結果ですよね。

となると、家電量販店にとってみれば、「大幅な増収」が期待できる千載一遇のチャンスであるわけです。
しかし同時に、みんなが一斉に買い替えに走るということは、一度にドカンと売上げが増加したその後に、しばらくの間苦しい状態が続くことになります。

要するに「反動」ですね。
なので、普通に考えれば、「エコポイント制度によってこの1年は大きく売れるが、その後は揺り戻しで業界全体が低迷してしまう。だから制度の期間中に”他社よりもできるだけ多く売ろう!”」とこのように考えますよね。

けれど、加藤さんはまったく反対の考え方をしています。
「エコポイント制度があるために、普通にしていても売れるのだから”無理に”売ろうとしなくていい。それよりも、その後来る反動に備えて”新規出店”の準備をしてほしい」と通達しているのです。

社員たちに向けて言ったこの言葉にケーズデンキの哲学がすべて詰まっています。

このような、業界の調子が良いときには自分たちの成長の速度を意識的に弱くして、反対に景気が悪いときに新規でお店をつくっていくという考えを、ケーズデンキでは「好況充実・不況拡大」と呼んでいます。
この戦略には3つのメリットがあります。


●「好況充実・不況拡大」戦略の3つのメリット

1.いつもなだらかに伸びる

” 売上げを安定的に伸ばすことを考えると、景気が好調で売上げの調子がよいときは、既存店が伸びていきます。
ですから新規出店を抑え気味にしても、既存店の伸びで目標を達成できます。
しかし、世の中の景気が悪くなると既存店の売上げは下がりますから、その分、新規出店を多めにし、新しく売上げを創出します。
すると、不況の中でも全体の売上げは上がるので、いつも数字はなだらかに上がっていきます。 ”

加藤さんは経営を「終わりのない駅伝競走」だと表現されています。
それは、会社は増収を目指して規模を大きくするだけが目的ではなく、存続することこそが第一義だと考えられていることからも伺えます。

駅伝大会に出て、後先考えずにいきなり全速で走り出す人はいないのと同じで、経営でもいくら大きなチャンスがあっても「ペース」は守るべきだと考えているのです。
マーケットの変化によって、自分の会社が非常に有利な展開になったときでも、急成長は目指さずにあくまで当初の計画に沿ってなだらかに成長させていくのがトータルで見ればよいのだと教えてくれています。

会社を急激に大きくすると、人材の育成が追いつかなかったり指示系統が適切に機能しなかったりして、必ずどこかから綻びが出てくるものです。
そう考えていた加藤さんは、社長就任時の挨拶で「年率25%の成長率」でなだらかに伸ばしていくことを宣言しました。

そして実際に、バブルの時代など頑張ればさらに大きな飛躍を望める年はありましたが、はじめに掲げた目標を堅実に守ってきたのです。
(売上げ規模が1,000億を越えてからは、さらになだらかに年率15%の成長率ペースを再設定したそうです。)


2.出店コストが下がる

業界や世の中全体が不況の時期に、新規出店で拡大をしていくということは結果的に出店のコストを下げることにつながります。

なぜなら、景気が良いときは、どこも同じように調子が良いわけですから、みんな新規出店をしようと考えています。
そうすると物件の価格は上がってしまい、立地に優れた場所の確保も困難になります。
また、社員を採用しようにも景気が良いときは「売り手市場」ですので、人材の確保も難しくなってしまいます。

しかし、反対に景気が低迷しているときはだれも新規で出店しようとしません。
なので良い物件も人材も豊富にあまっています。
熾烈な競争をして、物件や人材の確保に奮闘する必要がないので、不況時に出店した方がコストは大幅に下がるということなのです。


3.雇用の確保

” 利益を出すためには、社員の稼働率が下がらないように気を配らないといけません。
人件費がいちばん大きな経費ですから、社員がヒマでしょうがない状態をつくっておいて、それで利益を上げようとするのは難しいのです。 ”


ケーズデンキでは、店の規模ではなく「売上げ」に応じて、一店当たりの適正人員の定数を設けているそうです。

景気が悪くなって既存店の売上げが下がって(つまり、お客様の数が少なくなって)、20人いた店舗スタッフの数を1人減らして19人で接客できるとなったとします。
すると、人件費は5%ダウンしますので、その店の売上げが2~3%下がってもいいということになります。

また、ケーズデンキでは2011年10月時点で全国に370店舗あるそうなので、仮にすべての店舗から1人スタッフを回せたら合計して370人もの人員が生まれることになります。
その1年の新規出店数が20店舗だとして、各店20人の配置なら「400人」必要になりますが、370人の人員が生まれているのであと30人ほど採用すればいいということになります。

人が余るわけではありませんので、リストラする必要もありません。
もし新店舗を出さなかったら、370人の社員の処遇をどうするかということになってしまいます。

” 会社というものは、不況だからといってじっとしているだけでは、売上げは下がるし、人件費は上がる。
経費高になって経営に赤信号が灯ってしまいます。
世間がヒマであるときに忙しければ、利益が得られるわけですから、いつでもまあまあ仕事がある状況をつくっておくのが理想的です。 ”

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

すべては社員のために 「がんばらない経営」すべては社員のために 「がんばらない経営」
著者:加藤修一
販売元:かんき出版
(2011-11-16)
販売元:Amazon.co.jp
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” 社員、取引先、お客様、株主・・・。
つながりのあるすべての人を幸せにするために「商売」はある。
この気持ちがブレないように「終わりのない駅伝競走」をひたすら続けていきたい。 ”

ケーズホールディングス会長兼CEO、加藤修一さんの『がんばらない経営』を、ベランダの近くで雨音を聞きながら読みました。
この本を買ったのは実はかなり前で、確か去年の冬頃だったと思います。

amazonで発見して、その異様なタイトル(この景気のよくない時代に経営をがんばらないってどういうこと?)が気になって買ってみたのでした。
買うまではよかったのですが、書斎兼寝室にあるカラーボックスに入れたままずっと読んでいませんでした。
なぜか、読む気が起きなかったのです。

私は未読本のストックは常時20~30冊は持っていないと心配になるので、定期的に書籍を買っており、そのためにどうしても読まない本(いわゆる積読)ができてしまうのです。
『がんばらない経営』もそのうちの1冊だったのですが、ふと手に取ってパラパラと読んでみたら、すぐに本の世界に入り込んでしまってそのまま最後まで読み進めてしまいました(笑)

今日はこの本からの学びをシェアします。


●がんばらない経営ってどういうこと?

まず、だれもが気になるのがこの書籍タイトルですよね。
景気が良いとはあまり言えない時代。
ニュースを見れば、赤字何億円とか大規模リストラといったキーワードが飛び交っていて滅入ってきます。

必死にがんばっていても業績回復につなげられずに沈んでいく会社も多い中、ケーズデンキの「がんばらない経営」とはいったいどういった意味なのでしょうか?
このように説明されています。

” 「がんばらない経営」とは、ゆっくり、着実に成長するために「無駄なことはやらず、やるべきことをハッキリ徹底する」ということです。 ”

がんばるとは、できもしないことをやろうとすること。
なので、がんばらないとは、できもしないことはやらないということになります。

加藤さんは「会社はゆっくり、大きくするもの」という哲学をお持ちです。
軸を定めて一度決めたらそこからブレないように、慎重に一歩一歩進んでいきます。

ケーズデンキは創業以来、64期連続増収を続けているそうです。
その間にはバブル崩壊、リーマンショック、直近では東日本大震災などもありましたが、それでも「ゆっくり」を初めから意識しているから、ほかの会社が落ちてもケーズデンキはなだらかに成長を続けてこられたようです。

では、なぜ「ゆっくり」成長させることが重要なのでしょうか?
自分たちのビジネスの需要が目の前に広がっていて、急成長させる絶好のビジネスチャンスがあれば、だれでも全力でぶつかっていきたいと感じてしまうものです。
ですが、急成長にはリスクもつきまといます。

” 急いで売り上げをあげようとすると、「あれもやろう、これもやらう」とよけいなことにまで手を広げてしまいがちです。
そうなると、やるべきことまでおろそかになり、どれも中途半端な結果しか出てこないものなのです。 ”

つまり、無理にがんばると、やるべきことが拡散し、優先すべきことが明確でなくなってしまうのです。

必要なことにのみフォーカスを絞って、集中的に時間・お金を投資して成長していくためには「優先順位」が必須ですので、結果的に「がんばらない(=無理にやるべきことを広げすぎない)」ことが実は近道となるのかもしれませんね。

なぜ、加藤さんはそういった考えに至ったのかと言うと、会社は「存続すること」が第一義だという前提の上に立っておられるからです。
「成長して規模を大きくしていくこと」には主眼を置いていないのです。

そのことを、経営とは「終わりのない駅伝競走」だという風にたとえています。

” 駅伝大会に出て、後先考えずに全速力で走り出す人はいないでしょう。
それでは必ず途中で息切れしたり、棄権したりで、タスキは渡らなくなります。
経営というレースでは、それは倒産を意味します。
人は、常に100%以上の力を出し続けることはできないものです。
瞬発力があっても、それが持続力につながるかどうかが重要なのです。 ”

ビジネスとか会社だけではなくて、人間もいきなり急成長を遂げようとしたのではきっと転んだり、息切れしたりして止まってしまいます。

徳川家康公も語ったように、
『人の一生は重きを負うて遠き道を行くがごとし。急ぐべからず。』なのです。

焦らずに、ゆっくりと歩を進めていこうと思いました。
やらないことを明確にし、やるべきことだけきちんとやる。
できもしないことを望む必要はなかったのです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

すべては社員のために 「がんばらない経営」すべては社員のために 「がんばらない経営」
著者:加藤修一
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書店にあふれ返るビジネス書の中には、「目標を持つことの大事さ」や「目標管理」 の重要性について書いたものがたくさんあります。

山登りに例えれば、目標とはいわば目指すべき山そのものであって、登山にチャレンジするには道具など用意周到な準備や、「いつまでにどの地点まで登る」といった時間配分が欠かせません。
つまりは、これらが「目標管理」ということになります。

また船の航海にたとえれば、目標とは目指す「港」で、目標管理をすることは海の上で羅針盤を持つことを意味することになるでしょう。
目標ばなければ、その船は遭難してしまってまっすぐに運行することができません。

・・・と、そういったような話は、いくつもの文献で見ることができます。
私もいろいろな本で言われていることだからと、半ば盲目的に昨今流行りのライフハック的な「目標」や「目標管理」を持つことはなにより大事だと信じ込んでいました。

しかし、そういった考えや思い込みが音を立ててガラガラ崩れ去るような、世の中では「常識」とされているルールとは真逆を行く主張の本を読みました。

それが、Research Resources社の創業者で人気コラムニストでもある、デイル・ドーテンさんの『仕事は楽しいかね?』です。

本書からの学びのシェアに入る前に、今回は一風変わった語り口の本ですので、少し背景について説明しておきます。

物語は35歳のエリートビジネスマンの「私」(給料はいいが、人生がうまく言っているとはいえない)が、季節外れの吹雪のためにオヘア空港のターミナルビルに閉じ込められたところから始まります。
シカゴでは問題のない雪でしたが、オヘアでは飛行機の離発着は絶対にできないと言われます。

飛行機が飛べるようになるのを待つしかありませんが、再開の目途は立っていません。
「ついてない」そう吐き捨てながら、ターミナルビルの床やソファでほかの客たちといっしょに一夜を過ごすことになった「私」。

そんなとき不運なできごとにもめげず、近くに居合わせたたくさんの見知らぬと遊んで相手をしてあげている陽気な老人を見かけます。
年齢は70歳近くに見え、恰幅がよく、格子縞のズボンにポロシャツとループタイといった格好の老人は、ふらりふらりと「私」の方に向かって歩いてきます。

仕事は楽しいかね?仕事は楽しいかね?
著者:デイル ドーテン
販売元:きこ書房
(2001-12)
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(こちらが本の表紙です。この老人のことです。)

そして「私」の隣に腰を下ろした老人。
最初は迷惑に感じていた「私」は、いつの間にか仕事の悩みや愚痴(過去のことも含めて)を老人にすべて打ち明けてしまいます。

つまらない話にも関わらず、老人は嫌な顔をいっさいせず、熱心に聞いてくれています。
聞いてくれる人がいるという安心感から、私は心の奥底に眠っていた負の感情を洗いざらいぶちまけます。
そして、一通り話し終わった後に気づきます。

この老人こそは、マックス・エルモアという名の、偉大な発明家・起業家として巨万の富を築いた世界中で有名な人間だと。

「私」は後悔します。こんなめったにないチャンスを目の前にして、自分のつまらない愚痴をこぼして時間をムダにしてしまったことに。
けれど、幸いにも(?)飛行機は再開する気配がありません。
そうして、空港のターミナルビルで「私」とマックス・エルモアだけの一夜の特別授業が始まったのでした・・・。


●目標を設定すると、自己管理ができなくなる?

さて、ここから冒頭の話に戻ります。
「目標を持つことは大切だ」という多くのビジネス書で語られていることに真っ向から対立するおもしろい考えにです。

物語に登場する「私」も、いまブログを書いているこの私自身も、「目標を立ててそれに沿った行動をしていくこと」は大切だと思っていました。当たり前とさえ感じていました。

しかし、自分で立てた目標というのは、しばしば割り込みの急な用事がきたり、電話やメールなどの連絡に邪魔されたりして、思うようにいかないものです。
自分でさえコントロールするのが難しいのですから、他人や周りの環境をコントロールするなんてことはさらに難しいことです。

目標を立てたけれども、きちんと管理できずに「未達」ばかりでジレンマを抱えている人も多いのではないでしょうか?

この点、マックス・エルモアは考え方が180度違います。
そもそも、目標なんて持たなくていい。

” 「僕たちの社会では、時間や進歩に対して直線的な見方をしている。
そういう見方を、学校ではじわじわ浸透させるんだ――人生とは、やるべき仕事や習得すべき技術や到達すべきレベルの連続なのですよ。
目標を設定して、それに向かって努力しなさい、とね。
だけど、人生はそんなに規則正しいものじゃない。規則から外れたところでいろんな教訓を与えてくれるものだ。
人生は学校の先生にとっては悪夢だろうね。」 ”

要するに、人生とはなにが起きるかまったく想像がつかないのだから目標を持ってきちんとクリアしていくなんてことはハナからできない、ということです。
この考えはとてもおもしろいです。こんなこと書いてあるビジネス書はいままで読んだことがありません。

さらに、マックス・エルモアは続けます。

” 「たいていの人は、マンネリ化した生活から抜け出すために目標を設定する。
だけど、いいかい、今日の目標は明日のマンネリなんだよ。」 ”

人生なんてそんなに扱いやすいものじゃない。
そして、人生は決して思い通りにはならない。

だから、どれだけ立派な「目標」を持ったとしても、おいそれとは達成できません。
むしろ、未達成になることの方が多いのです。
中途半端に終わってしまうと、私たちはフラストレーションばかりを抱えていきます。
自分で決めた目標を守れなかったことで、自己嫌悪などのストレスも感じます。

そうして、気力が奪われていき、私たちの活力は少なくなっていきます。
つまり、「マンネリ化」の始まりです。


●持つべき価値のあるたったひとつの「目標」?

そんな、いままで常識とされてきたような「目標管理論」に真正面から異を唱えたマックス・エルモアですが、実は彼はひとつだけ目標を持っています。

” 明日は今日と違う自分になる、だよ。 ”

今日と違う自分になる?
一見すると、当たり前じゃないの?と思えてしまいます。
この世には、1日たりと「同じ日」はありません。万物は刻々と進化・衰退していきます。
私たち人間も同じです。
毎日、体の調子も違えば、食べるものも考えることも違うはずです。

・・・昨日とは違う自分なのは、簡単じゃないの?

そういった疑問が浮かんできますが、マックス・エルモアはさらにこう続けます。

” 「<毎日>変わっていくんだよ?
それは、ただひたすら、より良くなろうとすることだ。
人は<違うもの>になって初めて<より良く>なれるんだから。
それも、一日も欠かさず変わらないといけない。
いいかい、これはものすごく大変なことだ。
そう、僕が言ってるマンネリ打開策は簡単なんかじゃない。
とんでもなく疲れる方法だ。
だけどわくわくするし、<活気に満ちた>方法でもあるんだ。」 ”

なるほど。少しわかったような気がします。
ただ、「変われば」良いのではなかったのです。
大事なのは「良い方向へ」変わっていくことです。

今日の自分があって、明日はそれにどんな些細なものでも一点、プラスの変化を与えることでさらに新しい自分になれます。
そうして、毎日「成長」し続けていくということです。

” 「人生は進化だ。そして進化の素晴らしいところは、最終的にどこに行き着くか、まったくわからないところなんだ。」 ”

なにが起きるか分からない人生の中でも、「明日は今日よりよくなろう」とだけシンプルに考えておくによって、どんな境遇・状況に追い込まれても自分を見失わずに済みます。
反対に、「これこれをいつまでに成し遂げよう」と従来型の目標を持っている人は、イレギュラーな事態が起きれば、焦っていらだって、そして精神を消耗して気力を失っていきます。

” だから僕は、たった一つしか目標を持っていない。
毎日毎日、違う自分になること。
これは「試すこと」を続けなければならないということだ。
そして試すこととは、あっちにぶつかりこっちにぶつかり、試行錯誤を繰り返しながら、それでもどうにかこうにか、手当たり次第に、あれこれやってみるということだ。 ”

あらゆる物事の中で、本当に大切なことというのは、いつも一見すると簡単に見えてしまうヘンテコなくらい「シンプル」なものなのかもしれません。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

仕事は楽しいかね?仕事は楽しいかね?
著者:デイル ドーテン
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さて、先日からオアシスグループ代表、久永陽介さんの『成功し続ける起業家はここが違う』からの学びを再三にわたってシェアしてきましたが、今回の記事をもってそれらの集大成とさせていただきます。
(本当にたくさんの学びを得ることができた1冊でした!費用対効果はバツグンです!)

成功し続ける起業家はここが違う (DO BOOKS)
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ラストの記事では、会社を興しても日の目を見ることなく消えていってしまう会社が圧倒的に多い中にも関わらず成功する起業家は「どこがほかと違うのか」についての学びをシェア。


●成功し続ける起業家になるために知っておくべき3つの原則

1.人から感謝された分だけ味方が増えるという原理を知る

あなたは普段、他人に頼ることが多いでしょうか?
それとも、自ら進んで他人の役に立とうと、自分にできることはないかと探しているでしょか?

” 人から感謝されるためには当然、感謝されるに値することをしなければなりません。
つまり、与えられる側ではなく、「与える側」になるということです。

与えることが多いと、多くの人から感謝され、笑顔を向けられるようになっていきます。
すると、人、物、金、情報などのさまざまな資産も一緒に集まってくるようになるのです。 ”

私たちはひとりひとり心の中に目には見えないコップを持っています。それが水で満たされたときに、しあわせを感じ、反対に空になっているときは不幸や渇望感を感じます。
このコップに対して、水を注ぐことが重要なのですが、自分のコップにではなく、他人のコップに水を注ぐということが成功の秘訣です。

他人のコップに水を注いでも、一見すると自分のコップの水量は変わらないので無駄骨に思えるかもしれません。
けれど、他人のコップに溢れるくらい水を注げば、感謝した相手やそれを見ていた他の人までもあなたのコップに注いでくれるかもしれないのです。そうして結果的に、自分ひとりで自分のコップを満たすより多く溜めることができます。

また、勘違いしてはいけないポイントとして、人に「与える」ということは高価なプレゼントを渡したりといった金銭的なものばかりではないことを知っておいてください。
目には見えないことでも、相手が困っていたらそっと手を差し伸べたりすることも十分「与える」ことになります。

もしくは相手のまだ顕在化していない問題に対して、先回りをしてフォローしたりすることもいいでしょう。
当の相手自身は「与えられた」ことに気がつかないかもしれません。けれど、それでも構いません。
自ら進んで「縁の下の力持ち」になってください。
「自分がやりました!」とアピールし過ぎてしまっては、せっかくの良い行いも印象が減点されてしまいます。

アピールしなくても良い行動は、必ず見てくれている人がいるものです。
遅かれ早かれ、相手自身にも伝わっていくものですので、「気付いてもらって評価を高めよう」などとはあまり意識せずに、それよりも相手に対して純粋に「自分にできること」を考えていきましょう。

” 相手の喜ぶ姿を味わえるということは、相手の感謝をもらっているということです。
このような善意ある行動を続けていけば、誰でも味方になってくれるし、結果的に有用な情報も入りやすくなってくるのです。

逆に自分自身の喜びばかりを追い求めていたら、一時的には成功することがあったとしても、それは永続的なものではありません。
なぜなら、他人との良好な人間関係の上に成り立つ情報の共有なしには、時代の変化についていけなくなってしまうからです。 ”

自分自身の幅を広げていくためにも、自ら進んで与え、提供し、情報発信していきましょう。


2.才能を開花させる方法を知る

” 自分の才能を開花させるためには、「ちょっと無理かな」と思うような高い目標を掲げた「環境づくり」が大切です。 ”

この「ちょっと無理かな」と思うような到達目標というのがポイントになります。
「自分のでき得る限界」を目標に定めても、残念ながら成長はありません。

なぜなら、「限界」というのは、言い換えれば「100%」ということだからです。
現在の自分のキャパシティの限界(100%)の範囲内でいくら頑張っても、自分自身の成長にはつながりません。

成長していくためには、「101%以上」を目指さなければなりません。
つまり、キャパシティの限界を突破するのです。
仮にそれまでの自分の実績に比べて、105%や110%を達成できたとすると、今度はその数字が自分の「新しい限界(=100%)」になります。

自分の能力が拡張されるのですから、これはとても大変な作業であります。
けれど大変とは、文字通り、自分自身が「大きく変わる」チャンスでもあります。

” 困難なことを、1回、2回と乗り越えていくと、苦痛の先には新しい発見や、次のレベルのステージが待っているのです。
自分自身を追い込む環境をいかにつくるか。
そういった環境がつくれる人こそ、自分自身の才能を開花させることができるのです。 ”


3.成功するビジネスを知る

” 本質的に見て、ビジネスというものは、常に需要と供給のバランスから成り立っています。
ほかの人がやっていないことをビジネスにすれば、その結果、報酬を受けることができるわけです。
みんなが興味のあることには人が集まり、お客様はお金という対価を払ってサービスを受けたり、商品を購入すたりするのです。 ”

需要と供給のバランスこそがビジネスの肝です。
売り手側は、お客様がほしいもの(つまり需要のあるもの)を売らなければなりません。
だれも必要でないものを、いくら高性能・低価格で売り出しても在庫の山が築かれるだけなのです。

しかし、多くの人がほしいと思っている商品やサービスは、マーケットが大きいのでその分、競合他社も多いのが通例です。
たくさん需要があるマーケットには、たくさんのライバル企業がひしめきあっているのです。
そんな中にあって自分のところの商品をアピールして売り出していくのは至難のワザです。

ビジネスの世界では獲物を狙うライバルたちがひしめき合う海という意味で「レッドオーシャン」などと表現されていますが、こういった海で戦いをするのは体力を消耗するばかりで実りが少ないのです。

そうなると、考えられる対策としては2つあります。
ひとつは、需要があるけれども、供給者がいないマーケットを見つけて飛び込む。
もうひとつは、まだ需要がない(潜在的に願望はあるけどまだ顕在化していない)商品やサービスを想像して、自分たちで新しいマーケットを創りだすのいずれかです。

そのためには今後、世の中や社会がどうなっていくのかを予想しなければなりません。
日本国内だけで考えれば、今後も総人口は減り続け、より高齢化していくことになるでしょう。
さらに国内市場だけではなく、グローバルな視点も持って、世界市場から見た日本、アジアの中でも日本など多角的なものの見方で、それを5年先、10年先と予想していかなければならないということです。

” 時代の流れや方向性を自分の力で読んで予想し、時代の少し先、半歩先を行くサービスを提供することが、潜在的な需要を刺激して呼び起こすコツです。

それには、時代の一歩先のことを知っておかなければなりません。
一歩先のことを知り、半歩先において需要があるものをお客様に提供し、その結果として、感謝される立場になることが大切です。 ”

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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