ここんとこ、ハロプロ・宝塚・乃木坂と3コンテンツを「摂取」しているわけですが、前者2つにあって乃木坂に無いものがある。
そう、「トンチキ」であります。
コテコテの衣装、赤面したくなる歌詞、謎のセンスのサウンド…でも何故かハマると忘れられない。ベクトルは違えど宝塚にもハロプロにもこれがある、一種アイデンティティでもある。(ちなみにジャニーズとアイマスにもある)
決して現代のエンタメにおけるメインストリームではないながら、根強い支持で続いている一因もこのトンチキだ。
何せ宝塚からして、超代名詞「ベルばら」がトンチキの極みなのですから。初心者に気軽にベルばらを勧められないのもこのため。
でも、10年に1度くらいでいいから定期的に見たくなるし何だかんだで見てしまう。
【大時代な植田歌舞伎「ベルサイユのばら」】
男装の麗人オスカル!輪っかのドレス!軍服!革命! と、まさしく宝塚のために作られたような原作ベルばらを見事選んだ植田御大のセンスは確かに素晴らしいが、舞台をよくよく見ていると...結構赤面する。
大時代な「青きドナウの岸辺」のイントロで緞帳が上がれば、ゴテゴテにデコられたセットに池田先生のマンガによる肖像画があらわになり、それが開いて王妃様やオスカルやフェルゼンが登場。
脚本自体も中途半端に原作を端折ってるので突っ込みどころが一杯だったり、植田御大の時代独特の「植田歌舞伎」と通称される大げさな演技や、」「少しも早く」のような、「?」となる日本語も。
【語彙力が足りないキムシン】
植田歌舞伎的なケレン味の強い作風を若干引き継いでいるのがキムシン(木村信司)。ファンの好き嫌いも分かれるが、個人的には迷作・珍作メーカとして愛すべき人だと思う。
氏のトンチキといえば何を置いても「スゴツヨ」@王家に捧ぐ歌。品格を重んずる宝塚で、「エジプトは強い♪」「すごい♪つよい」「スゴッスゴッ♪ツヨッツヨッ」のインパクト、いい意味で洗脳ソングのような中毒性を有する。美麗なジェンヌたちからこういう謎のワードが飛び出してくる。
氏のトンチキといえば何を置いても「スゴツヨ」@王家に捧ぐ歌。品格を重んずる宝塚で、「エジプトは強い♪」「すごい♪つよい」「スゴッスゴッ♪ツヨッツヨッ」のインパクト、いい意味で洗脳ソングのような中毒性を有する。美麗なジェンヌたちからこういう謎のワードが飛び出してくる。
キムシンのトンチキは「語彙力の足りない歌詞」に象徴されよう。スゴツヨの他にも、「明智小五郎の事件簿」(07年花組、原典は黒蜥蜴)での通称「結婚ソング」とか、「暁のローマ」(06年月組)のトド様カエサルを讃えての「カエサルはえらい♪」大合唱などである。
【カサゴ?マツケンサンバ?大衆演劇?コテコテのラテンショー】
最近は減少傾向ではありますが…よく草野且氏とかのショーであった、ラテンショーの一部の衣装。
両腕と両脚に御大層なフリルみたいな飾りがゴテゴテとつき、襟にもエリマキトカゲみたいなフリフリがつき、たまにはインナーが透けそうなくらいに胸元が開いた衣装。にしきのあきらもかくやという、昭和チックなスター衣装をここまで惜しげもなく使い続けているのは宝塚だけではあるまいか。
そもそもなぜ宝塚で黒塗りラテンショーなどやるのか...という疑問も出てくるが、これを掘り下げるとオリエンタリズムやポリコレなどのセンシティブな方面に触れざるを得ないので、とにかくそういうものがある、ととどめておく。
【ハロプロの場合】
ハロプロもまた、トンチキと切っても切れない縁で結びついている。そもそもつんく♂さんのユニット命名センスからして昔から言葉遊びを活かしたものが多かった(後浦なつみとかあか組4・黄色5・青色7とか)。
曲も衣装も指摘し始めるときりがないが、昔から「すき焼きの歌なのに沖縄風のメロディー」「10期加入後の初のシングルで若い9期10期にひよこのコスプレをさせ、お姉さんズはニワトリ」「アユハピでのEDMからのマサイダンス」(いずれもモーニング娘。)などなど、通常の感覚ではちょっと考えられないような何かと何かの化学反応を起こしてみせるのも特徴だ。
トンチキはスマイレージ初期~中期にも多い傾向で、「恋にBooing ブー!で豚鼻をつけさせる」「寒いね。でなぜかアニメの戦隊ヒロイン風衣装」「○○ がんばらなくてもええねんで!!/ヤッタルチャンの二大関西弁アイドル歌謡」などなど、発想はいいのになぜそうなる?と思うポイントが多い。
比較的トンチキ要素低めなJuice=Juiceもタイトルからしてそれとわかる「地団駄ダンス」をリリースしたことがあるし、昨春ブレイクし2020ハロプロ楽曲大賞でも2位だった「ポップミュージック」もまなかんやたこやふコンビに鳩の(それも結構リアルな)かぶりものを着せる絵からPVがスタートする。ポップミュージック、70年代の洋楽オマージュを織り込んだりしていい曲なのに、「何故ストレートに彼女たちの美やスキルを表現しようとしない?」と突っ込みたくもなる(まあリリースはKANさんの方が先だったけど)。
そして、当代ハロプロでトンチキの極みといえば何をおいてもBEYOOOONDS。「眼鏡の男の子」の寸劇や口上、「Go Waist!」のPVも昔の通販番組みたいなつくりにしたあげく江口さやりんによるサヤーズブートキャンプと、初見ライト層はまず面食らうであろう。そこで沼にはまるか、スルーしてしまうかはその人次第。
極めつけは衣装。2年前の1stライブの頃の赤いパンツスタイルのやつなどがその極致だ。
…カニカマか?
デビューしたての子達でもこのように容赦なくセンスが迸った衣装を着させられる(その年の夏のTIFのレースと黒のアンダーの衣装は格好よかったのに…
ちなみに衣装に関して唯一このトンチキの魔の手から逃れられてると思うのがつばき。なのだが、それでも坂道に比べるとチープ感は否めない。
まだ年端もいかぬ研修生にも「おへその国からこんにちは」なるタイトルの歌を歌わせたり(おへその国とは?)、突然「地球がディスコティック♪」と大地が踊り出しそうなファンキーなナンバー(Say! Hello!)があったりするので油断もスキもない。
重要なのは宝塚もハロプロも、作っている方・やっている方は真剣で一生懸命なのだということ。決してウケ狙いではなく本気でトンチキの力を信じて発信しているから、その本気にアテられた客はハマっていくのだろう。
で、こういう「トンチキ」、坂道には絶対にあり得ないセンスだ。乃木坂に限らず櫻坂・日向坂も。衣装を見るだけでわかる。
論より証拠、ちょうど白石まいやんのチャンネルに「【これで見納め】厳選74着!乃木坂衣装でガールズルール【本人が踊ってみた】」と歴代衣装を着て見せた動画があるのでご覧いただきたい。
トンチキのトの字もない。清楚にして華麗。とりわけ「サヨナラの意味」「でこぴん」「Rewindあの日」「シンクロニシティ」等が素晴らしい。コミカル要素の強いさゆりんご軍団の衣装さえもリンゴを可愛くデフォルメしてアクセサリーにしたいりしている。まあ、そんな乃木坂でもRoute246の衣装は珍しくハロプロ寄りでしたが(靴はスニーカー、パーカーのようなトップスにボトムスはパンツスタイル、それでもグループからの紫基調でらしさは保っている)。
あと楽曲で言うと「ぼっち党」がギリギリの線だがあれはトンチキというよりコミカルソングと言うべきでしょう。いい曲だけど地団駄ダンスほどの破壊力には欠ける。
センスと贅を尽くして憧れの対象となった坂道も、トンチキという凶悪なブラックホールでもって一度捕まえた観客を離そうとしない宝塚・ハロプロも、どちらもよきかな。