椿山荘9Tx7kqqP “現役最強”と呼ばれる渡辺明名人(棋王、王将、36)と、“西のプリンス”の異名を持つ斎藤慎太郎八段(27)による名人戦七番勝負。その第1局が4月7、8日に東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」で行われた。将棋界のトップに君臨する渡辺名人が初防衛するか、斎藤八段が初名人に輝くか。
将棋ファン大注目のシリーズ開幕戦は大激闘だったが、同ホテルで行われた大盤解説会では、数年前とは別世界とも言えそうな光景が広がっていた。それは女性ファン比率の高さだ。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、例年よりは席数も控えめになっている大盤解説会。それでも主催社によりゲストとして呼ばれた人気棋士が、普段は聞けないようなトークを織り交ぜながら、約100席の会場を盛り上げていた。
 もちろん「解説会」だからこそ、プロの読みの深さに感心する、目から鱗が落ちるというシーンもあるが、8日に集まったファンのうち、実に8割が女性ファン。将棋を指すのではなく観て楽しむ「観る将」が中心だったようだ。

 女流棋士も活躍し、将棋を指す女性も増えているのは事実だが、なんといってもここ数年の盛り上がりで女性の観る将が急激に増えたというのが、現場の肌感覚だ。例年、名人戦の会場となっている同ホテルの関係者や、日本将棋連盟の関係者からも、この女性の多さは「数年前までなら考えられない」「こんな光景は見たことがない」という声が相次いだ。

 大盤解説会の状況を変えたのは、紛れもなく藤井聡太王位・棋聖(18)の活躍は外せない。2016年10月に最年少棋士としてデビューして以来、この4年半で数々の最年少記録、最多記録を樹立。タイトルも2つ獲得し、大手メーカーとスポンサー契約。テレビCMでも目にするようになった。これと同時に、藤井王位・棋聖が対戦する棋士たちにもスポットが当たるようになり、一般社会での認知度も高まった。また、新型コロナウイルスの影響もあり、なかなか解説会をはじめとするリアルイベントが行えなかった間、TwitterやYouTubeといったツールで発信を続け、ファン拡大に努めてきた効果が今になって目に見えた、とも言える。

 たとえば渡辺名人は、妻が漫画家の伊奈めぐみ。「将棋の渡辺くん」は、渡辺名人の日常を描いたものだが、昨年夏に藤井王位・棋聖と棋聖戦五番勝負で対戦した際には、情報番組で取り上げられもした。また斎藤八段も、もともとその端正なルックスで人気ではあったが、この時期に名人戦に挑戦を決めたことで、メディア露出も増加。新たな女性ファンを獲得したことだろう。斎藤八段が最終盤に逆転勝利を収めた際、大盤解説にいた女性ファンの中には、涙した人もいたという。

 長く男性の趣味といったイメージが強かった将棋界。今なお中年男性を中心に愛好家は多いが、イベントなどにフットワークよく駆けつけるという点において、女性ファンの方が積極的であることは、他業界でもよく見られるものだ。今は、これ以上多く人が集まったり、声をかけたりすることも難しい。ただ、コロナ禍が落ち着くころ、将棋イベントと言えば黄色い声援が飛び交うというようは、今とはまた別の世界が広がっていても、何も不思議なことはない。

※記事の出典元はツイッターで確認できます⇒コチラ