チャレンジシステムの仕組みについて解説していく「チャレンジシステムの仕組みとホークアイ」シリーズですが、「ホークアイシステム」をすでに知っている方も多いと思います。
では、そのホークアイシステムに次ぐ新たな技術、と言ったら何を思い浮かべるでしょうか

今回はHawk-Eye Innovationsが開発し,グランドスラムでも導入が進んでいる「SMART Production」を紹介したいと思います。

Hawk-Eye Innovationsとは

コート周辺に10台のハイスピードカメラを設置し、カメラがとらえた映像からボールの軌道をコンピューター上で再現したり、様々なデータを分析する「ホークアイシステム」を開発、運用している会社です。
チャレンジシステムもこのホークアイシステムを利用していますが、詳しいことは次回解説していきます。

このホークアイ・イノベーションズが開発し、2013年に実戦導入されたのが「SMART Production」です。
まずは下の動画をご覧ください。



カメラの動きに何か違和感はないでしょうか。
実は、使用されているどのカメラにもカメラマンはついていないのです

カメラは選手を識別し、選手の動きに合わせて自動的に台が回転することで画面内に選手を捉え続けるのです。
実際にカメラが動いている動画がこちら(25秒辺りです)。



仕組みをさらに詳しく紹介していきます。

選手を自動追尾する台の上に遠隔操作できるHDカメラを載せる。これをコート上に複数台設置する。
・ カメラをモニタリングしているスタッフは遠隔操作でズームやカメラの切り替えなどの操作を行う
・状況に応じてリプレイも流す。リプレイは再生スピードを自由に切り替えられる


SMART Productionの意義

果たしてこの技術が何の役に立つのか。
最も大きいのは、試合の放映に必要な人員を削減することです。

普通はカメラマンや映像処理係など5人程度の人員を必要とするのに対し、SMART Productionを使用すれば1人で運用できます。 

5人が1人になっただけでは物足りない気がしますが、グランドスラムなど大規模な大会では複数のコートで試合が同時進行していることが多々あります。
2コート同時なら10人必要だったのが2人に、4コート同時なら20人必要だったのが4人にまで削減できます。
これによってより多くの試合を放映できるようになり、コストも削減できます。


事実、2015年の全豪オープンでは6コートに、全仏オープンでは12コートにこのSMART Productionが導入されました。
何に対しても保守的なテニス界において、ここまで積極的に取り入れられていることからもその価値がうかがえます。

ちなみに、試合数の多い1回戦や2回戦で使用されるコートを優先しているため、センターコートなど規模の大きなコートではこれまで通りカメラマンがカメラを操作しています。

このSMART Productionがウィンブルドンや全米オープンでも導入されるのか。
アイディアとしては素晴らしいだけに、今後のさらなる普及が注目されます。