テニスブログ Hawk-Eye

ATPワールドツアーについてのブログを展開中。特にランキング関連と各大会の展望予想に力を入れています。

2015年11月

フェデラーの必殺技として話題の「SABR(セイバー)」。
しかし、フェデラーの真の狙いはSABRでポイントを取ることではありません。


これは一体どういうことなのか、リターンが試合全体を左右するとはどういう意味なのか、具体的なデータも交えて解説していきたいと思います。

テニスではサービスキープが基本

極端な話、リターンゲームで全くポイントがとれなくても、自分がサーブを打った時に失点しなければ負けることはありません。
これはつまり、サーバーが絶対的に優位であることを意味します。 

ではなぜサーバーが優位なのか。それはもちろん、サービスで相手を崩して展開していけるからです。

トップ選手はファーストサーブから高確率でポイントに結びつける

ファーストサーブからのポイント獲得率平均は70%程度で、50%を下回る試合というのはほとんどない、というのが多くのトップ選手です。
さらに、ファーストサーブの確率自体も平均で60%程度です。
単純に考えて、70%もの高い確率でポイントに結びつくファーストサーブが60%の確率で入るのですから、サービスキープに成功するのは当然とも言えます。

だからといって、リターナーがそう簡単にキープを許すわけにはいきません。試合を早く終わらせるためにも、サービスブレークは狙っていかなければなりません。

サービスゲーム攻略の鍵はセカンドサーブにあり

サーバーの優位はファーストサーブに基づいたものですから、まずはセカンドサーブでポイントをとっていくべきだという結論に達します。

当然のことながら、ファーストサーブに対して球速の落ちるセカンドサーブではポイントに結びつく確率が低くなります。
具体的には、トップ選手でも50%台、最も高い選手ですら60%という確率です。
このセカンドサーブを突破口にしてブレークを狙っていくのですが、ここでリターン戦術が重要になってきます。

いかにセカンドサーブがチャンスとはいえ、ファーストサーブが入った時に不利なのは変わりません。
そこで、相手のファーストサーブの確率とポイント獲得率を下げる方法を考えます。

仮に自分がサーバーだとして、セカンドサーブになると相手が良いリターンを打ってきて思うようにポイントがとれないとき、どのような気持ちになるでしょうか。

「もっと強いセカンドサーブを入れなければ……」や「そもそもファーストサーブを入れなければ……」という気持ちになるはずです。

こういったプレッシャーは当然サービスコントロールの乱れに結びつき、ダブルフォルトやファーストサーブの確率低下を引き起こします。
ファーストサーブの確率が下がればコースを甘くしてでもその確率を上げようとしてしまい、ファーストサーブでのポイント獲得率も下がります。

セカンドサーブに対するリターンが良いだけなのに、ファーストサーブにもプレッシャーがかかり、サーバーの優位性が崩れてしまう
のです。

実際の試合でここまで都合のいい展開はそう簡単には見られませんが、その一例を紹介したいと思います。

今年のシンシナティ決勝ジョコビッチ対フェデラー戦のスタッツです。

ジョコビッチのダブルフォルトが4本ありますが、この内の3本は第2セット第4ゲームで犯したものです。
ジョコビッチらしからぬミスですが、この原因にはフェデラーのリターン戦術が絡んでいます

フェデラーが編み出したSABR

SABR(sneak attack by Rogerの略)を耳にしたことのある方も多いでしょう。ウィンブルドン終了後にフェデラーが編み出した超攻撃的リターンのことです。


※動画は全米オープン決勝戦のもの

サービスライン付近まで踏み込んでリターンすることにより、ボールが相手コートに入った時には既にネットに詰めています。本来ならジョコビッチの正確なパッシングショットが飛んでくるのですが、構える時間すら奪うことでそれを許しません。




再びシンシナティのデータに戻ります。フェデラーが相手のセカンドサーブをどの位置からリターンしたかの統計です。極端に前(ベースラインから4m付近)でリターンしているポイントがあり、これがSABRなのです。

フェデラーの真の狙いはSABRでポイントを奪うことではない

試合を見ていれば気付くことですが、SABRはポイントに結びつかないことも多々あります。セカンドサーブとはいえ時速140km程度のボールをライジングで処理するのですから当然です。

ではなぜフェデラーはSABRを仕掛けるのか。
先程の話に戻りますが、セカンドサーブのリターンで相手にプレッシャーをかけることでサーバーの優位性を崩そうとしているのです。
 
 シンシナティ決勝では第1セットから要所要所でSABRを使い、特にタイブレークの1本はそのままミニブレークに結びつきました。
 
第2セットでジョコビッチは相当プレッシャーを感じていたはずです。新技のSABRのみならず、フォアハンドへの回り込み、バックハンドのハードヒット、スライスを打って前に出るチップ&チャージなど、フェデラーはリターンで様々な仕掛けを試みてきます。 
 
 こうしたリターン戦術がジョコビッチのダブルフォルトを引き出したと考えられます。
 

一口にリターン戦術と言っても選手によって様々です。ジョコビッチやマレー、錦織のようにどのサーフェイスでも踏み込んで高い打点で打つ選手もいれば、ナダルのようにクレーでは大きく下がってラリー戦に持ち込もうとする選手、ワウリンカのように相手コート深くに返すことを主とする選手もいます。

こういったリターン戦術が試合をどう左右していくのかに注目すると、より一層試合を楽しめることでしょう。

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マルチチャートについてはこれまで通り、最下部のボタンをクリックすることで並べ替えの基準を入れ替えることができます。

ツアーファイナルズで獲得できるポイントは以下の通りです。

・ラウンドロビン(リーグ戦)で1勝するごとに200ポイント
・グループリーグを突破して4名による決勝トーナメントに進出し、準決勝で勝利すれば400ポイント
・優勝で500ポイント

つまり、ラウンドロビンで3戦全勝したうえで優勝すれば1500ポイントを獲得できるのです。

ちなみに、本来ランキングの対象となるのは18大会までなのですが、ツアーファイナルズに出場している選手は19大会になります。
詳しく説明すると、他の選手はグランドスラム4大会、マスターズ8大会、その他の6大会で計18大会となる(マスターズ出場免除等は考慮せず)のですが、ツアーファイナルズ出場者はグランドスラム4大会、マスターズ8大会、その他6大会にツアーファイナルズを加えて計19大会となります。いわばツアーファイナルズはボーナス大会と言っていいでしょう。 

暫定ポイントを見て頂ければ分かるように、錦織はラウンドロビン2勝でもフェレールだけしか抜けません(フェレールがラウンドロビン0勝の場合のみ)。
しかし、今シーズン序盤で多くのポイントを稼いだ錦織は1つでも多く勝ってポイントを稼いでおかないと来シーズンの序盤でランキング的に苦しくなります。
いわば今シーズンのナダルのような状況になるのですが、詳しくは「ナダルが直面する危機〜ナダル,マレー,錦織のポイント分析〜」 をご覧ください

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年間成績上位8名のみが出場できるツアーファイナルズ。
獲得できるポイントも最高で1500ポイントと、グランドスラムに次ぐレベルにあることは間違いないでしょう。
さらには破格の賞金金額、会場の独特な雰囲気、選手に対する様々な優遇も他の大会とは一線を画しており、観客だけでなく選手からも高い評価を得ています。

大会はまず8人の選手を2つのグループに分け、「ラウンドロビン」と呼ばれる総当たりのリーグ戦を行います。
そして各リーグの上位2名、計4名が決勝トーナメントに進出します。

選手8名を2つのグループに分ける際は、ランキング1位と2位、3位と4位、5位と6位、7位と8位の選手をそれぞれランダムに振り分けます。今年のリーグ表を見てみましょう。

グループ スタン・スミス

[1]ジョコビッチ
[3]フェデラー
[6]ベルディヒ
[8]錦織

グループ イリ・ナスターゼ

[2]マレー
[4]ワウリンカ
[5]ナダル
[7]フェレール

昨年までは「グループ A」及び「グループ B」という呼び名でしたが、今年からそれぞれ「グループ スタン・スミス」及び「グループ イリ・ナスターゼ」に改められました。
スタン・スミスは1970年大会の優勝者、イリ・ナスターゼは1971年~1973年と1975年の4大会の優勝者です。

[ ]内の数字がランキング順位で、1位のジョコビッチと2位のマレーが別々のグループに入っているのと同様に、8位の錦織も7位のフェレールとは別のグループに振り分けられています。

各リーグで総当たり戦を行いそれぞれの上位2名を決定するのですが、その主な基準は以下の通りです。

・勝利数の多い上位2名

・勝利数で並ぶ選手が2名の場合は直接対決で勝利したほうが優先
※今年のグループ スタン・スミスを例に
 ジョコビッチ3勝、フェデラー1勝2敗、錦織1勝2敗、ベルディヒ0勝3敗だった場合、勝利数順に考えてジョコビッチが1位通過。2位通過は1勝2敗で並ぶフェデラーと錦織のうち、直接対決で勝利した方(フェデラー 対 錦織で錦織が勝利していたら錦織)。

・3名の勝利数が並んだ場合
  (i)  セット獲得率の高い順
 それでも決まらない場合は
  (ii) ゲーム獲得率の高い順

細かい基準はまだまだあるのですが、基本的にはこのような基準で決めていくと考えて問題ないと思います。
結論としては、「勝つならストレートで、負けるならフルセットで」が原則です(勝利数で並んだ際にセット獲得率とゲーム獲得率で優位に立てる)。 
 

ファイナルズについての基本的な解説はこの程度にしておいて、今年の展望予想に移ります。
各グループから勝ち上がるそれぞれ上位2名の予想を挙げておきます。


グループ スタン・スミス

1位通過 ジョコビッチ
2位通過 フェデラー

グループ イリ・ナスターゼ

1位通過 ワウリンカ
2位通過 ナダル


まずはグループ スタン・スミスの詳細から
 
やはりジョコビッチは最有力でしょう。2012年大会から3連覇中で相性も良く、怪我で失速した2011年と違って今年はインドアシーズンに入っても好調を維持しています。
次いで有力なのがフェデラー。ファイナルズの舞台には滅法強く、2010年以降は絶不調だった2013年も含めて全てグループリーグを突破しています。
この2人が抜きんでた存在であることは間違いありませんが、ベルディヒや錦織にチャンスがないわけではありません。

ベルディヒは前哨戦のパリでジョコビッチ相手に2連続タイブレークの末惜敗しました。さらに、シーズン序盤のドバイ、クレーのモンテカルロではともにフルセットにもつれていて、実はジョコビッチが圧倒しているわけではないのです。あとは勝てるかどうかという大きな壁があるのですが、ジョコビッチとて油断は禁物です。

そして錦織は昨年の反省を活かせるかどうか。昨年はサービスが絶不調だったことが最後まで足を引っ張りました。会場の雰囲気(特にコート真上に吊り下げられたチャレンジ用の巨大モニター)に慣れた今年は改善が見込めますが、最終的には怪我の回復状況次第でしょうか。
特に今年初対戦となるフェデラーに対しては、完全に主導権を握られた昨年の状況を繰り返さずに勝負できるか注目ですし、ジョコビッチには昨年の第2セットのような驚異的な攻めをもう一度見せてほしいものです。
厳しいグループに入った以上、錦織が「勝てるか」ではなく「どこまでやれるか」に注目しましょう。 
 

続いてはグループ イリ・ナスターゼについて

スタン・スミス側と違ってこちらは混戦状態。ややフェレールが厳しい立場にありますが、蓋を開けてみるまでは何が起こるか分かりません。

ランキング2位の地元マレーですが、ハードコートのパリ決勝を終えてからはファイナルズ後のデビスカップ決勝に向け、クレーでの練習を積んできました。 いくら今大会が遅いハードコートとはいえ調整不足は否めませんし、地元開催にもかかわらず相性が良くないことも踏まえるとラウンドロビン敗退という可能性も低くはないと思います。いかにハードコートに調子を戻せるか、あとは他の選手の調子次第といったところでしょうか。

グランドスラムやマスターズではしっかりと結果を出しているワウリンカ。幸いにもファイナルズは相性のいい大会で、初出場の2013年から2年連続でグループリーグを突破しています。カギを握るのは初戦のナダルに勝てるかどうか。今年は2勝1敗、2013年のラウンドロビンでは2連続のタイブレークの末ナダルがストレート勝ち、直近のパリではワウリンカが同じく2連続タイブレークの末ストレート勝ちしており、お互いの調子が良ければ拮抗したいい試合になるでしょう。ワウリンカとしてはまず自滅せずにプレーできるか、そのうえでチャンスを活かして勝ち切れるかどうかです。ナダルに勝てればその勢いのままグループリーグ1位通過も充分期待できます。

対するナダルもシーズン後半戦から調子を上げてきています。バーゼルではフェデラーに、パリではワウリンカに敗れていますが、内容自体は非常に良くなってきていますから、やはり初戦の結果が大会全体の調子を左右することになるでしょう。
元来苦手とするインドアシーズンで調子を戻してきたこと、例年に比べて大きな怪我もなくしっかりと準備ができていることを考えると、グループリーグ突破も期待できると思います。

結論として、このグループは1勝が結果を大きく左右すると思います。実力が伯仲しているだけあって、2人または3人が勝利数で並ぶ可能性も十分あります。つまり、「勝つならストレートで、負けるならフルセットで」という原則が重要になってくるのです。グループの中でランキング最下位のフェレールにとっては厳しい戦いが続きますが、とにかく1勝出来ればチャンスは大きく広がります。
予想としてはワウリンカが1位通過、ナダルが2位通過ですが、全く違う結末になるかもしれない面白い組み合わせだと思います。 
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マルチチャート、ポイント自動計算ツールの仕様は先週と変更ありません。詳しくは過去記事をご覧ください。
 
今週は昨年のツアーファイナルズのポイントが失効するため、来週のランキングではエントリーランキングポイントとレースランキングポイントが一致します。
それに伴って、マルチチャートの暫定エントリーと暫定レースも一致しています。

既にツアーファイナルズに出場する8人は決定していますが、補欠枠に入る2人は未定です。
昨年はラオニッチが、2011年にはマレーが大会期間中に怪我で棄権し、それぞれフェレールとティプサルビッチが途中出場したように、例えランキング8位以下でもチャンスは残されています。

補欠枠は来週のランキングで9位と10位の選手に与えられますから、ポイント差が僅かであるガスケ、ツォンガ、アンダーソン、イズナー、シモンは今週の結果次第で可能性があります。

そういった意味でも今夜の錦織対ガスケ戦は見応えのある試合になるはずです。
錦織としては過去一度も勝利したことがないだけに、ここで勝って気持ちよくファイナルズに臨みたいでしょう。
一方のガスケも先週のバーゼルでナダルに敗れてファイナルズ出場権を逃しましたが、好調は維持しているだけに依然難敵であることに変わりはありません。

錦織が取るべき戦術としては、とにかく先に攻めることと、安易にガスケのバックハンドにボールを集め過ぎないことでしょう。
錦織がガスケに勝てない理由としては諸説ありますが、バックハンドの打ち合いで優位に立てないことが有力とされています。
バックハンドが得意な錦織はバックの打ち合いから相手を崩して展開していけるのですが、ガスケなどの片手バックハンド強者にはそれが通用しません。
今年の全豪オープンでのワウリンカ戦も、バックハンドの強打、ダウンザライン、角度のついたクロスと自由自在に振り回されて優位に立てませんでした。
同じような展開を防ぐには積極的な攻めが必要ですし、ショートポイントを増やすためにも初戦で良くなかったサービスの調子を上げていくことが求められるでしょう。

11/6追記
錦織は脇腹の故障により第2セット途中棄権。
第1セットは7本ものブレークポイントを握っていただけに取りたかったセットでした。今は早期回復を祈るのみですが、ファイナルズまであまり日数がないだけに万全の状態で臨むのは難しいかもしれません。
そしてフェデラーを下したイズナーは準決勝まで勝ち進めば来週のランキングで10位に浮上し、ファイナルズ補欠枠を得ます。

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