今や試合には欠かせない存在となったチャレンジシステム。

それを支えているのが、世界中を飛び回る数十名のエンジニアだということをご存知でしょうか。

今回はチャレンジシステムの仕組みを軽く解説した後、その技術を支えるエンジニアの活動を紹介したり、ハイスピードカメラが捉えたボールの動きなど、興味深い内容に触れていきたいと思います。

チャレンジシステム(ホークアイシステム)の仕組み

それほど難しい理屈ではありません。
コート上に10台のハイスピードカメラを設置し、それぞれのカメラが捉えた映像からボールの軌道を計算してコンピューター上で再現します。

それぞれのカメラが捉えた2D映像から3Dの軌道を作成するプログラムが複雑なのであって、カメラ自体に何か特殊な機能が付いているわけではありません

この技術は「ホークアイシステム」と呼ばれ、チャレンジシステムはこの技術を使っているのです。

ホークアイシステムは常にボールの動きを捉え、さらには選手の動きまでも記録します。
テレビ中継の際に表示される以下のようなデータは、ホークアイシステムによるものなのです。


この他にもボールの回転数や選手が走った距離など、様々なことを知ることができます。

ホークアイシステムが記録する様々なデータ。
その中から、審判による判定を確かめるため、ほんの数秒間のボールの軌道をスクリーンに映し出すのがチャレンジシステムなのです。

ちなみに、Hawk-Eye Innovations という会社がこのホークアイシステムを開発、運用しています。

大会数日前から現地入りするエンジニア


ハイスピードカメラは1年中コートに常設されているわけではありません。
大会数日前にHawk-Eye Innovationsのシステムエンジニアが設置し、大会終了後には撤去されます

彼らは数十人で1つのチームを組み、世界中を回っているのです。

エンジニアはカメラを設置するだけでなく、様々な微調整やテストを繰り返して大会に備えます。

その様子が下の動画の中盤(50秒~)で紹介されています。




まずはラインにメジャーを当てて距離を測っていますが、何かおかしいと思いませんか。
そもそもラインの長さはしっかりと規定されています。
それをわざわざ測定するのはなぜなのでしょうか。

これはそれぞれのコートのわずかな歪み、ラインの塗装のずれを把握し、チャレンジシステムの精度をできるだけ高めるために行うのです。、
特にウィンブルドンではグラスコートということもあり、この測定の重要性が増します。

次はボールをコート上に並べていますが、これは夜間のライトアップされたコートを想定して調整しているのです。
ライトアップされた状態では当然ボールにも光が当たります。
もちろん均一に当たるわけではありませんから、微妙な影ができたりします。
それを約70個ものボールを使って事前に調べておくことで、精度を極限まで高めているのです。

動画では紹介されていませんが、昼間の影や風なども含めて調整が行われています。

こうした綿密な調整と技術的進歩のおかげで、かつては平均3.6mmだった、コンピューターでの再現と実際のボールの軌道の誤差は、現在では平均2.6mmにまで抑えられています


動画の後半では試合中エンジニアが待機するコントロールルームの様子が映し出されています。

全てのボールの軌道が画面に映し出されていたり、スコアを記録したりと、様々なモニタリングが行われています。
このモニタリングが充実したテレビ中継を支えているのです。

ハイスピードカメラが捉えたボールの動き


ボールがライン際でどのような動きをしているのか、それを映した画像がHawk-Eye Innovationsの公式サイトで紹介されています。

以下はこちらのpdfに掲載されている画像です

1000fps(1秒間に1000コマ)のハイスピードカメラで撮影したボールの動きです

① ボールが地面に触れる直前
hawkeye2
 

② ボールが地面(ライン)に触れた瞬間
hawkeye3
 
③ ②の画像からコンマ数秒後
hawkeye4
 
②の画像で地面に触れているボールは、③の画像でも接触したままです。
つまり、②地面と接触→③触れながら滑っていく→バウンドして地面から離れる、という動きをしているのです。

僅かコンマ数秒の間のこの動き、1000fpsというハイスピードカメラなら捉えられますが、テレビ中継用のカメラ(約30fps)ではそうもいきません。

また、チャレンジシステムの際にスクリーンに映し出されるではボールとコートの接地面がグレーで表現されていて、細長い跡になっているのが分かると思います。

跡が細長くなる理由はもちろん、"ボールがコートに触れながら滑っていく" という過程があるからです。

"ボールがコートにぶつかって潰れるから" という根拠もときどき見かけますが、そうであればボールはほぼ均一に潰れて細長くはなりませんから、その影響は僅かだと考えられます。


いかがでしたでしょうか。
次回はチャレンジシステムのルールについて取り上げたいと思います。