2013年05月20日

CCTVの焼身プロパガンダビデオへの反論

中国の国営テレビであるCCTV(中央電視台)は5月16日付けで「焼身ガイドブックー操られる悲劇の証拠:《自焚指导书》看达赖集团怎样操弄自焚事件」 」と題された23分ほどのプロパガンダビデオを発表した。これは中国語だけでなく英語等各国後に翻訳されネット上にも流された。

多くのシーンやストーリーはすでにこれまでにも流されたものだが、今回の特徴は元チベット亡命議会議員ラモ・キャプがブログ上で発表した、中国側言うところの「焼身ガイドブック」を大きく取り上げ、これが「ダライ一味が焼身を唆している証拠であり、このガイドブックに従い焼身が行われて来た」と主張することである。

今回もこの中国のプロパガンダビデオはツッコミ所満載で中国の嘘つき体質を露にする代物となっている。ウーセルさんが早速このビデオに関するコメントを書かれている。これを紹介するとともに、その他気付いたことを幾つか指摘する。

まず、第一に指摘すべきは、この中国側が「焼身ガイドブック」と呼ぶラモ・キャプ個人の考えが彼のブログ上に発表されたのは今年2013年2月末のことである。彼は冒頭で「もう100人以上も焼身した。もう十分である。もう止めるべきである」と書いている。しかし、もちろんこの事はビデオでは全く触れられていない。ビデオでは彼がこれを発表した時期についても全くふれず、あたかも、これが焼身が始まったころに発表され、多くの焼身者がこのガイドブックに沿って焼身したかの如く描かれている。

ラモ・キャプのブログ>http://www.chapdaklhamokyab.fr

ラモ・キャプは「焼身はもう止めるべきだ」と書いた後、「もしも、まだ焼身を続けるというのであれば、命が無駄にならないためにも以下の如く計画的にやるべきだ」として、「焼身の思想的統一。時期や場所。叫ぶべきスローガン。記録すべき事等」についてアドバイスを与えている。この彼の焼身記事は発表されると同時に亡命側のチベット人たちから激しいバッシングを受けた。そして、ラモ・キャプは謝罪と共に数週間以内にこの記事を削除した。しかし、中国当局はこれを見逃さず、3月1日にこれはダライ一味が焼身を煽動している証拠であるという記事を発表した。

彼はフランスに住む1人の亡命チベット人でしかなく、元亡命議会の議員ではあるが、ブログ上に発表された意見は彼の個人的見解である。これを「ダライ一味」と呼ぶのはお門違いだ。

彼がこの記事を発表した後にチベット内で8人が焼身しているが、今回のビデオにはこの8人の焼身についてはまったく触れられていない。唯一このガイドブック発表後にこれに影響されてカンゼ州セルタ県で3月13日にペマ・ギェルと呼ばれる23歳のチベット人が焼身を行おうとしたが、「直前に警官が察知し中止させた」として、彼がガイドブックに従って焼身しようとしていたという証言がビデオの冒頭で紹介されている。

彼が証言するというシーンはその後も何度か写されるが、彼だけは顔をぼかされ、声も変えられている。一般に焼身未遂の場合においても亡命側に伝えられることが多いが、彼のケースは全く伝えられていない。本当に彼が焼身を行おうとした人物であるかどうかは非常に疑わしいと思われる。むしろ、「ガイドブックに従った焼身」というストーリーを作るために作り上げられたお話であると見なす方が自然であろう。一旦は焼身を決意した者が、すんなりと「ガイドブックに従い焼身しようとした」なんていうであろうか?第一、発表後間もなく削除された外国のブログが内地で簡単に閲覧できたとは思われない。

以下は中国語版の部分であるが、英語版を観ることもできる>>>http://english.cntv.cn/special/01/20130516/106560.shtml




以下、ウーセルさんの指摘:
翻訳@yuntaitaiさん

チベット人の焼身をつじつまが合うように説明するため、中国中央テレビ(CCTV)はこれまでに5本の官製プロパガンダ番組を苦心して制作した。放送日時は2012年5月7日(41分)、2012年12月23日(31分)、2013年2月4日(24分)、2013年2月28日(約20分)、2013年5月16日(26分)だ。合計で2時間以上になる。

最新の官製プロパガンダ番組は16日、CCTV4の番組「今日の注目」で放送された。ネットで繰り返し見て気付いたことがある。

1.CCTVによると、四川省カンゼ州セルタ県で今年3月、チベット人の焼身未遂事件があったという。洛若郷の26歳の住民、ペマ・ギェルが県城(セルタ)で焼身しようとして警察に見つかり、遺書とビラが没収された。この事件はこれまでに明らかになっていなかった。

2.CCTVは最初のチベット人焼身事件を再び振り返っている。つまり、2009年2月27日にンガバ県城で焼身した僧侶、タベーのことだ。しかし、今回放送された番組は過去数本のプロパガンダ番組とは少し異なっていた。映像では、タベーが警備車両に近づいた時に突然大きな煙が上がり、後ろには銃器を持った警官が映っていた。このことから、タベーは焼身中に確かに撃たれたのだと分かる。

3.焼身したタベーについて、CCTVは「治療中」と説明する。タベーは2009年2月27日に焼身して負傷し、もう4年もたっている。まだ故郷や僧院には戻っておらず、誰も彼の状況を知らない。タベーは果たして「治療中」なのか?それとも当局に拘束される事情があるのか?ひどければ、この世から蒸発したのではないか?

4.CCTVはンガバの別の僧侶、ロブサン・クンチョクが2011年9月26日に焼身した写真について、2011年3月16日のプンツォの焼身写真だと説明した。これはなぜなのか?CCTVは同じテーマのプロパガンダ番組を続けて5本作っているが、なぜこうした取り違いが出てくるのか?これはわざとなのか?

5.2012年1月6日に焼身したツルティムは翌日になって死亡した。だが、CCTVが流したツルティムの話し声や受け答えの録音ははっきりしていた。死に臨んだ人間にこれが可能だろうか!?
2、3ページの供述調書を今回は出さなかったのは良かった。ツルティムがテンニ(ツルティムと同時に焼身し、その場で死亡)と一緒に窃盗、強盗、買春していたと「供述」したという調書だ。

6.CCTVは「焼身未遂者のペマ・ギェル」の映像と音声に「技術的な処理」を施している(しかし、不思議なことに、ほかの「焼身未遂者」の映像と音声には「技術的な処理」はない)。そして、今年2月13日にネパールで焼身して犠牲になったドゥプツェについて、ペマ・ギェルに「戒律に背いて飲酒、喫煙し、物を盗んでいた」と暴露させた。やはり汚名を着せるという手段だ。

7.CCTVは2012年12月3日に青海省ゴロク・チベット族自治州ペマ県で焼身した僧侶、ロプサン・ゲンドゥンの写真を同年11月27日に四川省ンガバ・チベット族自治州ゾゲ県キャンツァ郷で焼身したケルサン・キャプだと説明した(CCTVはケルサン・キャプの中国語表記を「格桑傑」ではなく、「尕譲下」としていた)。なぜ取り違えるのか?わざとだろうか?

8.CCTVによると、2012年11月27日に焼身したケルサン・キャプは友人に遺書を書いてもらった。そして、おじで僧侶の尼也沢譲が在インドの僧侶、次中江措と遺書を改ざんしたという。問題なのは、この2ページの遺書が明らかに同じ便せんに書かれ、CCTVが1ページ目だけを訳して2ページ目を訳していないことだ。訳した部分は以前に公表されていた遺書の前半と基本的には同じ(「600元を返済していない」という部分を除く)なのに、どうして改ざんと言えるのか?

CCTVの最新プロパガンダ番組では、ほかにもでっち上げや中身のすり替え、他人を利用して相手を倒すといった三十六計が多く使われているが、細かくは指摘しない。昨年5月に最初の番組が放送された後、安替がツイッター上で論評した言葉はやはりとても適切だ。「音声を消したら、すぐに反政府ニュース番組に変わると思う。両刃の剣のプロパガンダ番組をつくった目的が何なのか分からない」


ウーセルさんが(5)番で言及されている2012年1月6日に焼身した元キルティ僧院僧侶ロプサン・ツルティムは遺書を残していたが、これは最近このブログでも紹介した。http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51786680.html 立派な遺書と感じた。ウーセルさんも指摘されているように、彼は焼身の次の日に死亡している。そんな彼がはっきりした声で「(一緒に焼身した)友人のテンニはドロップアウトした負け犬である。彼は焼身すればみんなから尊敬されると言っていた。彼は尊敬されることを切望していた(5:35)」なんてことを話すであろうか!?

以下、亡命側が一度も言っていない、言うはずもない言葉を、法王やセンゲ首相が言ったとして偽っている箇所を3カ所指摘する。

3:18分辺りでダライ・ラマの言葉だとして「(2011年3月16日に焼身した)プンツォは中国の圧政に抗議した勇者」であると語ったと書かれている。法王は「焼身した人々は勇気があることは確かだ」とは言われているが、これまでに一度も焼身者に対し「勇者」という言葉を使われた事はない。

17:46分辺りでロプサン・センゲ首相が「チベット独立が第一の目的であり、チベットの自治は現在の目的である」と発言した事になっている。「中道」路線を堅持し、その故にTYC等の独立派から批難されているセンゲ首相がこのような発言を間違ってもするはずはないのである。

18:13分辺りで「第2回特別全体会議」で「国際的注目を得るために、会議はチベットに自由が訪れ、ダライ・ラマが帰還するまで、焼身キャンペーンを強化することを誓う」ことが決定されたとなっている。亡命側でこれまでに、誰1人として公式に焼身を奨励した者はいない。この会議にはオブザーバーとして私も参加していたが、このような驚くべきことが決定されたとは聞いていない。これは議事録によっても確認されることである。

その他、まだ色々とツッコミ所満載ではあるが、この辺で止めとく。このビデオをどう判断されるかは見る人の自由である。

中国当局は焼身の情報を外国に伝えたとしてこれまでに何人ものチベット人を逮捕し、重い刑期を与えている。そのように真実を伝えた人々を国家機密漏洩罪で罰する国の「これが真実だ」というニュース番組を額面通り信じろと言われても、である。

また、中国が一旦拘束した者たちから、傷の残らない拷問や近親者への脅迫により、シナリオ通りの言葉を引き出すということは世界に知られた事実です。

rftibet at 20:59│Comments(0)TrackBack(0)

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔