環境

2010年12月04日

チベット高原の花が遅く咲き始めた

メキシコのリゾート地カンクンでは、先月29日から、世界の環境問題を話し合うCOP16/CMP6会議が開かれている。

もっとも、今回も2大環境汚染国である中国とアメリカがCO2排出規制を拒否する可能性が高く、全体の法的規制も議決されないという効果の薄い会議になりそうだ。

今日は、まず、世界の第3極と呼ばれるチベットの環境問題を訴えるビデオを2つ紹介する。
1、カナダ・チベット委員会(CTC)制作の「チベット高原/第3極」
ダライ・ラマ法王自ら解説を行われている。
http://www.youtube.com/watch?v=i2BMvL8gJxI

2、ヒマラヤの氷河/アジアのウォータータワー「溶解」
http://sites.asiasociety.org/chinagreen/feature-the-melt/

次に、Phayulに掲載されていた、地球温暖化がチベット高原の植物に与える影響についての記事を紹介する。

チベットの草原の花々の開花期が遅れ、牧草が減少するという話。

写真:TAO Images Limited / Alamy

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チベット草原の花々<チベット高原の開花期が遅れる>
http://www.phayul.com/news/article.aspx?id=28646&article=Plants+flowering+later+on+the+Tibetan+Plateau

Nature News[Tuesday, November 30, 2010 18:11]
By Hannah Hoag
「世界の屋根」の暖かい冬が植物の生育期間を縮める

多くの地域では温暖化の影響により、春の開花期が早まったり、落葉期が早まったりしている。
しかし、チベット高原の草原や湿地帯では逆の現象が起こっている。
植物の開花期が遅れ生育期間が短くなっているのだ。
この変化は草原で放牧することにより生計を立てる、多くの遊牧民の生活を脅かす可能性がある。


「私は25年に渡り、チベット高原地帯を歩き続けて来た」と昆明の世界農林センターに所属する民族経済学者(ethnoecologist)のJianchu Xu(许建初)氏は語る。
彼はまた中国科学院の昆明植物学院の教授でもある。
今週かれは国家科学院に以下の論文を提出した。
http://www.pnas.org/content/early/2010/11/18/1012490107
彼はチベット高原の開花期も他の地域のパターンに従い、その開花期が早まるものと予測していた。
例えば、ヨーロッパでは1971年に比べ2000年度の春の開花期は平均8日早まった。
そして秋の紅葉は3日早まったという報告がある。
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1365-2486.2006.01193.x/abstract;jsessionid=F42758CF3D8FE116123682ED3D9D0606.d03t01

「しかし、私の博士課程の生徒であるHaiying Yuは最近のデータを基に(チベット高原において)反対の現象を発見した。温暖化ラインと植物生育期の連動ラインに矛盾ラインを発見したのだ」とXu氏は語る。

研究班はサテライトデータを使って、1982年から2006年までのチベット高原における高原地帯と低地湿地帯の植物生育期の始まりと生育期間、その終わりについて、温暖化と関連付けながら精査した。
この期間を通じ高原地帯における気温上昇は平均1.4度C、より低地の湿地帯においては1.25度Cであった。

生物季節学(phenology)的調査により、高原地帯、湿地帯ともに最初の15年間は生育期が早まるという現象が起こっていることが判明した。
しかし、2000年から2006年までは、この現象が逆行していたのだ。
全体にみれば、この期間高原地帯では1ヶ月、湿地帯では3週間の生育期間短縮が観察された。

寒冷地域の植物は冬期の凍結を避けるため、冬には休眠期に入るように進化してきた。
しかし、高原の温暖な冬期は春の生育開始を遅れさせる。
これは植物の冬眠に必要な寒冷条件が十分ではないからだ。
植物には春、目覚める前に一定期間の冬眠期間が必要であるからだ、と教授は語る。

これに対し、トロント大学の生物進化学者であるArthur Weis氏は「この考え方は存在していたが、温暖化に対する植物の反応がこれほど早く現れると予測した人は少なかったと思う」と述べている。

モントリオール、マックギル(McGill)大学の植物エコロジストMartin Lechowicz氏はこの調査結果に驚かなかった。
Lechowicz氏とその仲間たちは21世紀になってからの北米大陸の22種類の樹木の発芽時期に関する調査を行って来た。
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1365-2486.2008.01735.x/abstract
その結果、ほとんどの種類の発芽時期は早まる傾向が認められたが、数種類の樹木については冬期の寒気が十分でなかったことが原因で、数年間異常な発芽時期をとるものがあったという。
「植物が四季の気候変動に対応するための内的気候制御システムは、様々な気候変動モデルが植物の生育期に与える影響に対応しきれていないようだ」とLechowicz氏は語る。

チベット高原の草原は、地元の人々によりヤクや羊の放牧地として利用されている。
「この植物生育期の変化は牧草地のバイオマス(植物量)の減少を意味している」とXu氏は言い、「遊牧民たちは家畜への十分な飼料を確保するために何らかの新しい方策を考えだす必要に迫られるであろう」と続ける。

「驚くことではないが、非常に興味深い」とLechowicz氏。
さらに「しかし、もっと詳細なデータがほしいところだ。現場に人を送り種類ごとの調査が行われることが望ましい。そうする事で、植物コミュニティーの中で本当には何が起こっているのかを知る事ができよう」と語った。

Xu氏は、生物季節学(phenology)の見地から、変化を厳密に理解するために、冬期温暖化に対する植物の反応を種類ごとに調査する計画があるという。
「これにより、おそらく高原で牧畜する者たちへ、牧草地減少に対応するための何らかの方策を提案できるかもしれない」と話す。


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2010年07月27日

獄中にある環境三兄弟を救うために

0b742906.jpg以下、最近不当な懲役刑を受けた環境三兄弟に関するITSNよりのお知らせ。
(翻訳若松えり)

メール末尾に連名で団体名が記載されている環境保護団体や環境保護に携わる個人が、同じく環境保護活動家として知られるチベット人3兄弟のために以下のような公開書簡を発表しました。
有志は現在、各国から署名参加を呼びかけています。
皆様がご存知の環境保護活動に関わる個人または団体にも、参加を呼びかけてください。

署名参加、お問い合わせは若松えり;eliwakamatsu@googlemail.com または、
鎌田正樹;m-kamata@ja2.so-net.ne.jpまでお願いします。

なにとぞ、よろしくおねがいします。
背景資料も合わせて御覧下さい。


*** リンチェン・サンドゥップ、カルマ・サムドゥプとチメ・ナムギャルに関する公
開書簡 ****

市民社会が、めざましい勢いで形成される中国に大きな影響を与える事件として、地域の樹林活動や野生動物の保護などの環境保護運動家として知られる3人のチベット人兄弟が投獄されました。

中国国内のみならず国際的に評価される環境保護活動に携わる3兄弟の罪状は、地元チベット自治区チャムド地方(昌都)で絶滅危惧種の密猟を止めようとして、地元当局と衝突後、不正に作り上げられたと一般に推測されています。
結果、同地区の環境保護活動は多大な悪影響を受けました。

カルマ・サムドゥプは15年の刑を言い渡され、リンチェン・ サムドゥプには5年、現在、強制労働所で21ヶ月の判決をうけた弟のチメ・ナムギャルと、3名に与えられた刑は中国の刑事訴訟法に違反し、直ちに撤回されるべきです。
兄弟3人全員が拷問を受けたとの報告も届いています。
彼等の70歳半ばの実母は3人兄弟のうちの2人を逮捕するために、警察が当局高官を伴い自宅を訪れた際、暴打を受け意識不明の重傷を負いました。
彼等の従兄弟でチベット僧と若いチベット語教師の2名も逮捕され「蒸発」しています。

リンチェン・サンドゥップ3兄弟の貴重な人生や、彼等の親族や地域住民の代償に加えて、彼等の投獄は、必要とされる環境保護活動に携わる市民として、チベットと中国にて昨今めざましい勢いで形成されつつある市民社会の概念に対して非常に悪影響を与えると,私達は考えます。
チベットを第3極点と考え、温暖化が地球上の他の地域に比べ2倍の早さで進み、アジア圏の重要河川のほとんどの源流を抱える事実は国際社会の認識となりつつあります。

さらに、国際社会の認識として各国政府は気候変動に対応するために、NGO、市民社会や地域住民関係者の問題解決関与が必要不可欠だと認めています。
バンキムン国連総長はこの点を特に強調しました。
地域住民にとって環境保護のリーダーであり,自然保護の摂理を守ろうとしたこの3兄弟を投獄した中国の行為は、地球規模で環境問題の解決にあたる国際社会のパートナーとして相応しいかどうかが問われます。

環境問題はチベットと中国の共通の関心であり、この件で、中国は環境保護政策の推進を地元住民に示すことのできる機会でした。
しかし中国当局は全く逆の方法をとり、正義を求める代わりに、法と裁判を政治的目
的のために使ったことに遺憾の意をおぼえます。

拷問を受け生命に危険が及んでいるチメ・ナムギャルの罪状には” 兄弟であるリンチェンが非合法的な方法で動画資料、生態学、環境と自然資源、チャムド地区の宗教等の情報を3枚のディスクにまとめる作業を手伝った”とあります。
リンチェン・サムドゥプは慎ましく、そして地域住民に慕われていました。
地域でゴミ拾いを呼びかけ、密猟を監視し、何千本もの植林を行っていました。
彼の暮らす村は揚子江流域にあり、中国の環境保護活動家からは、その流域に植林することは、流域一帯の環境管理に必要なだけでなく、上流域一帯に影響を及ぼす水質と土壌の管理に必要とされています。
彼の拘束後に発表された中国政府の公式情報の記事の中でも、中国人ジャーナリストは彼の環境活動に対して賞賛し、政府の生態系保護政策を助けていたと述べています。

カルマ・サムドゥプが15年の刑を宣告された明くる日、彼の妻、ドルカ・ツォモは、自身のブログで弁護を担当した2人の中国人弁護士に,深く感謝を述べています。
「中国人、チベット人の違いを越えて、真実と正義のため共に努力します。弁護を担当してくださった2人の弁護士に、世界中の友人に、深くお礼を申し上げます。初めからこれまで、一度も一人だと感じたことはありません。」

私達、世界各地の環境保護団体を代表してドルカ・ツォモと夫のカルマ・サムドゥプ、と二人の兄弟リンチェン・サムドゥプとチメ・ナムギャルにこう伝えたいと考えます。
不正義を正すため彼等の側に立ち、全員の即時釈放を求めます。

以下、連名署名

Environmental Investigation Agency(環境調査局)
Caroline Lucas, Member of the UK Parliament(イギリス国会議員)
Animal Welfare Institute (動物保護機関)
Wildlife Trust of India(ワイルドライフトラスト、インド)
Business in the Community
Tibet Third Pole(チベット第3極点)
Tesi Environmental Awareness Movement

背景資料;

自然保護運動家に送られる著名なフォードモーター社の環境賞を授賞したリンチェン・サムドゥプ44歳は2010年7月3日に5年の刑を言い渡されました。

彼の弟、カルマ・サムドゥプ42歳は著名な考古学者でthe Three Rivers Environmental Protection Group(三河川環境保護団体)の設立者です。
彼は2010年6月24日に15年の刑を宣告され、裁判で拘束中にひどく拷問を受けたと証言しています。

現在、強制労働所で21ヶ月の刑を受けている、彼等の兄弟で障害を持つチメ・ナムギャルは拷問の末、介護なしで歩行することも、食事をすることもできない状態になっています。

70歳半ばの彼等の実母は、2人の兄弟を自宅で拘束する際に武装警察により暴打され意識不明となり重傷を負いました。

兄弟の地元であるチャムドのGongo 郡 (中国名: Gongjue)で20名の住民が、兄弟の拘束に反対して北京に嘆願署名を届けたのち、拘束され40日間に渡り尋問と拷問を受けています。
カルマ・サムドゥプの通訳をしていた中国語を話すチベット僧、リンチェン・ドルジェは3月の拘束され現在も消息が解っていません。

タシ・トプギャル、30代前半のチベット語教師はリンチェン・ドルジェの居場所を探すためにラサに向かったのち 7月5日に警察に拘束されました。

さらに兄弟の2人の従兄弟も逮捕されており、その内の一人ソナム・チュペル(60歳代)は18ヶ月の労働再教育施設で強制労働に服役中です。

以下、関連報道記事のリンク(英語):

New York Times http://www.nytimes.com/2010/06/25/world/asia/25tibet.html
BBC http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/asia_pacific/10414092.stm

AFP
http://www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5jBfxzXXRmmv8ChV7Y5_RQ8QZV3JQ

The Economist
http://www.economist.com/node/16539510?story_id=16539510&fsrc=rss

International Campaign for Tibet:
http://savetibet.org/media-center/ict-news-reports/fears-three-environmentalist-brothers-'gaunt'-karma-samdrup-trial-after-torture
and
http://savetibet.org/media-center/ict-news-reports/award-winning-tibetan-environmentalist-trial-today




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2010年06月23日

カルマ・サンドゥップ氏の裁判が始まる

4593e0ef.jpg6月22日付AP
http://www.phayul.com/news/article.aspx?id=27571&article=Tibetan+environmentalist+goes+on+trial+amid+claims+of+police+torture

によれば、先日お知らせした、環境活動家カルマ・サンドゥップ(42)
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51467955.html
の裁判が火曜日(6月22日)新疆ウイグルで始まった。
裁判には彼の妻と弁護士が同席を許された。

彼は今年1月3日に逮捕されたのち、新疆ウイグル自治区の焉耆回族(バルスク・カザフ)自治県のイエンチー(ウルムチの南南西約200キロ)で6カ月以上拘束され尋問を受けていた。
妻のZhenga Cuomaoはやつれ果てたカルマを見て「声を聞くまで、彼だと判らなかった」とAPからの電話に答えたという。

カルマ・サンドゥップは法廷陳述の中で尋問中に受けた拷問について語ったという。
「数か月間に及んだ尋問の間、係官は私を撲打し、数日間不眠を強制した。薬を飲まされ、鼻と耳から出血した。数時間、髪の毛だけで吊り下げられた」等と。
この日の法廷は朝10時から、夜11時まで続いたという。

拷問その他についてはもっと詳しくウーセルさんのブログに掲載されている。
http://woeser.middle-way.net/2010/06/blog-post_6719.html
どなたかに訳してもらいたいぐらいだ。

カルマ・サンドゥップ氏の妻ドルカさんその他、カルマさんの奥さんが自身のブログで詳しい報告を逐次更新されている。
http://drolkar.blog.sohu.com/奥さんのつらい心情が察せられ、読むのが苦しいほどだ。
私は翻訳ソフトでしか読めなので、翻訳は控える。

彼は相当痛めつけられたようだ。
それでも、彼は本物のカンパだった。
正気を失わず、生き残り、恐れずにこうして法廷で拷問の事実を証言している。

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追記;朝日の記事

<世界の独裁者、金総書記1位 中国主席10位 米誌番付>

【ワシントン=村山祐介】米外交専門誌「フォーリン・ポリシー」(7・8月号、電子版)は、世界の独裁者23人の番付をまとめ、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記を「世界最悪」の独裁者に選んだ。中国の胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席も10位に入った。

 同誌は、金総書記を「乏しい資源を核計画に費やしながら国民を窮乏させ、数十万人を収容所に送り込んだ」と講評。胡主席は「外国人投資家をほほ笑みと会釈でだます一方、反体制派を残忍に抑圧するカメレオンのような暴君」と評した。2位はジンバブエのムガベ大統領、3位はミャンマー(ビルマ)のタン・シュエ国家平和発展評議会議長。イランのアフマディネジャド大統領は8位だった。

 同誌によると、世界には少なくとも40人以上の独裁者がおり、ランク付けした23人の独裁者の下で19億人が暮らしているという。

朝日新聞 2010年6月23日
http://www.asahi.com/





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2009年12月02日

デリー、ヤムナ川の野鳥

Delhi Yamuna River今回はインドの首都デリーを流れるヤムナ川の野鳥を紹介します。

ダラムサラからデリーに夜行列車で行くと、朝早くオールド・デリー駅に列車が着く。
日本行きのフライトは夜9時半ということで時間が余る。
私はみんなが向かうオールド・デリー駅の正面ゲートとは反対側に向かって歩く。
正面に出るとタクシーやリキシャ・マンがドッと寄って来るので、それを避けるためと向かう先が近いからだ。
デリーで時間があるときにはいつもマジュヌ・カティーラと言うところにあるチベタン・キャンプに行く。

朝早いこともあり、駅裏はひっそりしていた。
タクシーもリキシャも見当たらない。
しばらく先に歩いているとリキシャが来たので止める。
「マジュヌ・カティーラまで幾ら?」と聞くと
「80ルピー」という。(1ルピー=2円)
これはかなり正直な運ちゃんだ。駅の正面に出るとリキシャでも150ルピーと言ってくる。
本当は50ルピーでも行かせることができるが、「ティゲ・ヘー(OK)」と乗り込む。
この時期、朝のデリーは寒い、だからタクシーにしようと思っていたのに、結局また風通しのよいリキシャに乗ってる。貧乏性とはこのことだ。

私はここで車中我慢していたたばこを一服吸おうとする。
しかし、たいていは風が強くてなかなか火をつけることが難しい。
こういうときはライターを持った手を腹の中に通し、服を風よけに顔を服の中に埋めて着火する。

Delhi Yamuna River昼間は大騒ぎのオールド・デリーも早朝は空っぽだ。
オールド・デリーにはかつてのムガール時代の城壁や宮殿が数多く残っており、空っぽ感が相まって何時も私はリキシャに乗りながら、ここでちょっとシュールな気持ちになる。
時代がぐっと数百年は遡ったように感じるのだ。

マジュヌ・カティーラについてはかつて少し解説した覚えがあるが、とにかくちょっと変わった場所だ。
ヤムナ川の河川敷を亡命チベット人たちが勝手に占拠して、というよりその辺の貧しいインド人に見習ってビニールのバラックを建て、住み始めたのだ。
20年前には見渡す限り、大きな黒いビニール小屋が立ち並び、タルチェンの幟ばかりが目立つ、れっきとしたスラムだった。
ほとんどの小屋はチベットの地酒「チャン」をリキシャ・マン中心に飲ませる酒場を兼ねていた。
おかげで、スラム中にこの漉けたチャンのにおいが充満し、敏感な人はすぐに吐き気を催すという場所だった。

Delhi Yamuna River3ところが、チャン屋が密造酒販売所としてインド警察の取り締まりを受け、壊滅した。
変わって今までチャンでこつこつとためた金をもとにホテルや食堂が建ち始めた。
もともとチベット人は移動が好きなところがあるし、ダライラマの法要もインド中で行われる。そのたびにデリーは通過宿泊地となるというので、これが成功し、今ではここには所狭しとホテルが建っている。
デリーにしては安くて(比較的)清潔なので、いつも私はここに来て泊ったり、休んだりする。
狭い路地に出れば必ず数人以上の知り合いに出会うものだ。

と、出会った一人の僧侶を思い出した。
彼は台湾人でまだまだ若い35歳ぐらい?
彼はダラムサラのツェンニー・ダツァン(論理学大学)のクラスメートだった。
もっとも私は中観学の途中までの約6年通っただけで途中脱落したものだ。
彼の近況を聞くと今は南のデブン僧院で勉強しており、もうすぐゲシェの試験を受けると言う。
もう一人クラスには台湾人がいたが彼は今法王の中国語通訳を行っている。
他の同級生も勉強のできたものが5,6人ゲシェになったかならないか位のところだ。

私は落ちこぼれた。習ったことも大方忘れた。
言い訳はいろいろあるが、時に後悔の種になったりする。

デリー 夕方までの部屋に入る。350ルピー。
夜行でたいして眠れなかったので眠ろうとするが、昼寝と車中寝が苦手の私はやはり眠れない。
暑くもないし、カメラを持ってオールド・デリーに写真でも撮りに出かけようか?と思ったこともない事を思う。
カメラを持って外に出ると、タクシーのいる方向ではなく、自然に公園の方に足が向かった。
マジュヌ・カティーラの北側には広大な公園風な森林地帯が広がっている。
ここに来た時に、よく散歩する場所だった。
きっと何か鳥がいるはずだと思ったのだ。
しかし、行って見るとそこは巨大な工事現場と化していた。
高速道路がここを通過するらしく、高架工事が行われたいた。

写真の白いハトは工事現場で見つけた、私としては新種だ。

仕方なく、今度はヤムナ川の方に向かった。
ヤムナ川はこの辺りで川幅500mほどある。
もっとも今は乾季で水はところどころにちょろちょろ程度に流れているだけだ。

デリー ヤムナ川その水は真っ黒でどぶ川の腐臭に満ちている。
湖面は黒光りしている。
河原に立って目を凝らすと、そんな大どぶ川にも沢山鳥がいることが判った。
大きな中州には牛が放牧され、その周りにサギやミーナ鳥が群れている。

もちろんここの主役はインド灰色カラス。
腐肉を野良犬と取り合いながら暮らす。

よくも、こんなどぶ川に漬かりながら病気にならないものだと感心するほど適応力のある野良犬たち。お互いしばしばいがみ合い、噛み合いの喧嘩をする。

喧嘩で追われた一匹のメス犬がどぶから上がってきた。
ほぼ全身真っ黒だ。しばらくすると子犬が沢山寄って来た。
真っ黒いオッパイに飛びつこうとしている。
母犬も子供にミルクを与えるために座り込んだ。
子供たちが病気に罹らずちゃんと育つことを祈る。

デリー ヤムナ川2川には鵜やサギもいたが、この川にまだ魚の類が生息しているとは到底思えなかった。
それほど、川は人々によって見事に汚染されていた。
しばらくいる間にかなり慣れるものだと気付いたが、それでも長くいると頭が痛くなるほどの悪臭だった。

河原にはシバ教徒の小さな祠があって、ここには数人のサドゥ・ババと呼ばれるヒンズー教の行者が暮らしている。
冬でも彼らは腰巻と上掛けの布1枚で暮らしていたりする。
持ち物は原則的に聖水桶のみで誠に無住、無所有の暮らしを楽しんでいる(ようにも見える)。
土間に泥で作られた竈をこしらえ、薪を集め火を焚く。
夕方などここは貧しい家のないリキシャ・マン達のたまり場になったりする。
みんなで金を出し合ってここで食事を作り一緒に食べ、おしゃべりをする。
みんな家族を故郷において出稼ぎに来たか、ただの一人ものだ。
夜はその辺りで布をかぶり眠る。

ヤムナ川昔、若いころ、インドで「サドゥ・ババごっこ」というのを数週間やったことがある。
これはつまり、なるべく物は持たず、腰巻一つで移動し、食堂にも入らず、宿に泊らず、河原などの屋外に眠るという遊びだ。金がなくなれば誰でも自然にやることではあるが、金がそんなにないわけでもないのにわざと好んでそうするので、「ごっこ」というわけだが、とにかくやたら楽しかったことだけは覚えている。
夕方食事ができるころになるとどこからともなく数人の浮浪者か、ババがすっとよってくて目の前に座ったりしていたものだ。

Delhi Yamuna River5ここで、このサドゥ・ババたちと祠を見るたびに私は急に時代感覚が狂うような気がする。
きっと辺りにまったく建物が見えないせいもあるのかもしてれない。
きっと2500年前のブッダの時代にもこの辺で似たような風景が見られたことであろう。
ブッダ・シャカムニもこのサドゥ・ババのように家を捨て、ボロ布を纏い、何も持たずに遊行したわけだから。

もっとも、その頃にはこのヤムナ川にはそのまま飲めるほどの清流がながれ、川魚がたくさんいて、それを餌にする大型の野鳥類が沢山飛び交っていたことであろう。
川辺りのジャングルにはそれはそれは様々な種類の色とりどりの野鳥がさえずり合い、リスやサルも沢山いたことだろう。

何と変わり果てたことか。
それもたったこの3、40年ほどの間にだ。
処理もしてない下水を川に流し始めたからだ。

Delhi Yamuna River7インドもひどいが、中国やアフリカも似たようなものだろう。世界中の川が下水どぶ川と化している。

このヤムナ川がいつか元のような清流に帰るとは到底思えない。

人は愚かだ。
日本に帰って特に感じるが、人々は本当に物ばかりを追いかけている。
物質的発展にしか興味がない。これは中国ばかりの話ではない。
日本人もとっくの昔に「心が大事」という仏教的考えを捨ててしまっている。
確かに、「まごころ」とか「心使い」とか中国よりは一般的だが、それも商業臭いところが特徴だ。

この人類の人口爆発と物質主義と利己主義のお陰で地球はこんなにも汚され、もう取り返しのつかない状態になろうとしている。

Delhi Yamuna River4法王はオーストラリアでも、「国々はいやでもグローバルに考えないといけないので、そういう意味でも環境について考えることは良いことだ」とおっしゃっています。
「We」の世界を説かれる法王にとっては、国境を超える環境問題は絶好の入り口ともなるのです。

私は正直、このままインドと中国が物質的発展を当然のように追うとすれば、地球環境がこの先まともに維持できるとは到底思えません。























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2009年10月24日

ギャワ・カルマパのチベット環境講座

24.10.09 ダラムサラ、ニマロプタ、カルマパ2今日はギャワ・カルマパがダラムサラの街中にあるTCVニマ・ロプタ分校のホールにお出ましになり、環境についての講義を1時間半ほどされました。

今日は世界的に「環境行動デー」ということでCO2濃度を350ppm以内に抑えるために具体的な行動を取るという日だったのです。














24.10.09 ダラムサラ、ニマロプタ、カルマパ1ちなみに現在は387ppmだそうです。
正直、350ppmは法王が最低国連総長にでもならないと不可能そうに見えますが、チベット人はこの環境問題には関心が高いのです。
これも、身の回りというより、チベット本土の環境についてですが。
「中国じゃなくて自分たちが管理していたらどんなに環境に優しかったろうに!」との思いがふつふつと湧いてくるからでしょう。

24.10.09 ダラムサラ、ニマロプタ、カルマパ3カルマパはスライドを使いながら、最初は宇宙の話から始め、銀河、惑星、地球、チベットと順序よく仏教的でなく科学的宇宙観に基づいて説明されました。








24.10.09 ダラムサラ、ニマロプタ、カルマパ環境講座9銀河系の中における太陽の位置を示す。
須弥山・マンダラ仏教宇宙観しか頭にないラマとは一味違います。
(しかし、見方によればちゃんと須弥山宇宙に似てないこともない)








24.10.09 ダラムサラ、ニマロプタ、カルマパ環境講座10惑星の図。
このチベット語も我々のいう「水金地火木土天海(冥はなし)」と同じ意味です。
これって中国から来たのかね?

カルマパは地球を指しながら、「地球は暑すぎず、寒すぎずで丁度いい具合に収まってるという。もっともこっちが環境に適応しただけともいえるが」と冷静です。


24.10.09 ダラムサラ、ニマロプタ、カルマパ環境講座1チベットは地球の第三の極」










24.10.09 ダラムサラ、ニマロプタ、カルマパ環境講座2気候温暖化の影響でチベットの雪山が禿げになっていく。










24.10.09 ダラムサラ、ニマロプタ、カルマパ環境講座6もちろん森は人為的に金のために禿げにされる。









24.10.09 ダラムサラ、ニマロプタ、カルマパ環境講座3永久凍土の凍解に従い、地表からの二酸化炭素排出量は増加する。










24.10.09 ダラムサラ、ニマロプタ、カルマパ環境講座4永久凍土の凍解に従い地表は砂漠化する。











24.10.09 ダラムサラ、ニマロプタ、カルマパ環境講座5広大なチベットの草原をヤーなどの家畜の力により自然に従い守り続けてきた遊牧民を中国政府は牧草地から追放し集団アパートに強制移住させている。








24.10.09 ダラムサラ、ニマロプタ、カルマパ環境講座8中国が計画中と言われている、「ヤルツァンポ川の水を黄河に引く」計画概念図。

ヤルツァンポ川はチベットのカイラス山の麓に発し、下流域においてはインドとバングラデッシュの耕地を潤し、人々の飲料水ともなっている。
それをつまり盗もうという大がかりな計画だ。




24.10.09 ダラムサラ、ニマロプタ、カルマパ5カルマパはチベット全土の環境保護の守護神と見なされつつあります。

お忙しい法王に代わって、環境プロモーターのシンボル役を買って出ておられる訳です。
















24.10.09 ダラムサラ、ニマロプタ、カルマパ4今日はまるでカルマパは(中学の)科学の先生のようでした。

最後にちゃんと、プラスチックを使うな、燃やすな、環境を常に清潔にせよ。
外国ではウンチを流すのに多量の水を使うが、これは如何なものか?
水も最低の量にせよ。
歯を磨くときは蛇口を閉めろ。
電気も節約するように。
といろいろ細かい生活上の注意点についても優しく説かれていました。

「仏教ではすべての現象は依存していると説く。空の話が解らなくともこのことは解るだろう。だから仏教徒にとって環境を大事にすることは当たり前のことだ」と話されました。





24.10.09 ダラムサラ、ニマロプタ、カルマパ環境講11ホールにあふれて外で聞く町の人々。

今日はTCVの本校で「運動会」が開かれているので若者の参加者は少ないようでした。




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