令和5年3月24日(金) 【旧 閏二月三日 友引】・春分・雀始巣(すずめはじめてすくう)

妹がくむてらゐの上のかたかしの花咲くほどに春ぞなりぬる
  ~衣笠家良(1192-1264)『新撰和歌六帖』

少女が水を汲んでいる寺の井戸のほとりにカタクリの花が咲くほどに暖かい春になりました。

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Photo:カタクリ(片栗)の花 ~山しるべ

 鎌倉初期の内大臣、衣笠家良(藤原家良)は大納言藤原忠良の次男。兄の基良も大納言になっています。歌人としては藤原定家の門弟として後鳥羽院や順徳天皇の内裏歌壇を牽引していました。さてこの歌の「かたかし」とはちょうど今、見頃になっているカタクリの花のこと。万葉集に詳しい方はこれに似た歌があったのを思い出すのではないでしょうか。大伴家持が詠んだ有名なカタクリの歌の本歌取りですね。冒頭の「妹《いも》」は妻とも彼女とも読み取れるのですが、家持の本歌では「少女《をとめ》」となっているので通釈もそれに従いました。ここではカタクリは堅香子《かたかご》と呼んでいました。

物部《もののふ》の八十少女《やそをとめ》らが汲みまがふ寺井の上の堅香子《かたかご》の花
  ~大伴家持 『万葉集』 巻19-4143

たくさんの少女が寺の井戸のほとりで水を汲んでいる。その井戸のほとりに咲いている堅香子の花のなんと可隣なことか。

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