【旧 九月三日 大安】寒露・蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)
 プロ野球クライマックスシリーズのファイナルシリーズが文字通りのクライマックスに差し掛かってきました。私は阪神ファンですが、尊敬する人物として名前をあげている方は元広島東洋カープの鉄人衣笠祥雄さんです。彼が引退したのは今からちょうど30年前の1987年10月22日。通算2215試合連続出場の記録は今もって破られていない日本記録で、世界でも第2位の偉大な記録を残しての引退です(ちなみにフルイニング連続出場も阪神の金本、三宅に次ぐ歴代3位)。「鉄人」と呼ばれるのはこの間に受けた死球で、肋骨に2回、肩甲骨、左手親指、右手首と、5回の骨折があったこと。でも私が尊敬に値すると思ったのはそのことだけではありません。

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衣笠が 仁王の如く 守りたる 
三塁ベースに 蛾のとまりおり
  ~林龍三 『塔』 2018年8月号

 これは私が広島市民球場のナイトゲームで見た光景です。当時、広島に出張した時、たまたま阪神戦が行われているとよく市民球場に足を運んだものでした。ファウルゾーンも甲子園に比べると狭い球場でしたからビジター側の応援席からは掛布や衣笠といった三塁手の守備位置が目の前です。
 さて話を戻しますと、5度の骨折のうち最も酷かったのは1979年8月1日の巨人戦で西本投手から受けた左肩甲骨にヒビが入る死球でした。当然彼の記録もこれで途切れると思われ、西本投手への風当たりは相当のものでした。ところが翌日、彼は代打で登場。とりあえず打席に立って記録を続けるだけかと思えばさにあらず。三振を喫しはしましたが、江川の速球に3球ともフルスイングでした。痛みを押して彼にバットを振らせたのは、コントロールミスで死球を与えた西本投手への慮りであったといいます。

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 衣笠祥雄の記録は連続出場だけでなく、通算安打や通算本塁打、ゴールデングラブ賞などいろいろなタイトルを持っているのですが、不思議なのは引退後カープの監督にという話がなかったこと。フロントとの関係がよくないからとか、本人が固辞し続けたからとか、いろいろな説がささやかれていて実際のところはわかりません。彼の優しさと言うか、選手への思いやりの深さが野球解説からも滲み出ていますが、監督ともなれば非情な選手交代やファーム落ち、あるいは放出までできるかどうか。その辺のことがご自身でもわかっておられるのではないかと思うのですが。ということで、尊敬するということは自分が持ち合わせていないものを持っているからでしょうね。根性とか思いやりとか、どちらも自慢できないですからね、わたし。

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