令和元年5月21日(火) 【旧 四月十七日 友引】小満・蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)

小満の風を青しと遊びけり  ~草間時彦

 今日は二十四節気の8番目の「小満」。「万物 盈満《えいまん》すれば草木枝葉繁る」と『暦便覧』にあるように、万物が次第に成長し、植物の枝葉が茂ってくる時季です。期間としては次の「芒種」の前日までの半月間。そしてその初候5日間は七十二候の第22候、「蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)」。蚕がさかんに桑の葉を食べ始める時季です。時代が令和になって、皇室に関するいろいろな話題がメディアで報じられました。なかでも皇居内紅葉山御養蚕所で行われる皇后の「給桑《きゅうそう》」も、明治天皇の皇后美子さまから代々引き継がれ、今年は美智子さまから雅子さまへ引き継がれました。皇后の「ご給桑」は昨日行われた天皇陛下の「お田植え」とともに今や国民の「衣」と「食」を安んじる象徴的なお仕事となっています。今日は万葉集から蚕が詠み込まれている長歌と反歌。

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Photo:ANNニュース(2018年5月21日)より

あらたまの 年は来ゆきて
玉梓《たまづさ》の 使《つかひ》の来ねば
霞立つ 長き春日を
天地《あめつち》に 思ひ足らはし
たらちねの 母が飼ふ蚕《こ》の
繭隠《まよこも》り 息づきわたり
我が恋ふる 心のうちを
人に言ふ ものにしあらねば
松が根の 待つこと遠み
天《あま》伝ふ 日の暮れぬれば
白栲《しろたへ》の 我が衣手も 通りて濡れぬ
  ~作者未詳 『万葉集』 巻13-3258 相聞歌

また新しい年がやって来ては去ってゆき
それでも便りの使いが来ないので
霞立つ長い春の日を
天地に満ちるほどにあなたを思い
母が飼っている蚕が
繭にこもるように息をつまらせ、
私が恋する心の内を
人に言うこともならないし、
松の根ではないが、こんなに待ち遠しいので
大空をゆく太陽がくれてしまうと
白妙の私の袖も涙に濡れてしまうのです。

反歌
かくのみし相思はざらば天雲の外《よそ》にそ君はあるべくありける
  ~同 巻13-3259 相聞歌

その程度にしか私を思ってくださらないのなら、天雲のようにあなたは縁遠い人であったほうがよかったのです。

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