万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

【芸術・文化】

#4881 氷下魚釣る小屋は灯りて氷鳴る根室の港まだ明けきらず

令和8年2月14日(土) 【旧 12月27日 友引】 立春・魚上氷

氷下魚《こまい》釣る小屋は灯りて氷鳴る根室の港まだ明けきらず
  ~佐藤清(昭和42年歌会始)

 コマイはタラ科の魚。アイヌ語で「小さな音のなる魚」の意味ですが、「氷下魚」という漢字が当てられ、あるいは別名カンカイ(寒海)とも呼ばれます。ともに、厳冬期に氷を割って氷下網漁をしたことからこの名があります。

260214_氷下魚釣る小屋は灯りて氷鳴る
Photo:氷下魚《コマイ》~北海道ぎょれん

 さて今日は七十二候の第3候「魚上氷(うおこおりをいずる)」。凍った川や湖が春の兆しに解け始め、割れた氷の間から魚たちが飛び跳ねるのが見えるころ。二十四節気「立春」の末候に当たります。ミラノ・コルティナ冬季オリンピックも早8日目。氷上・雪上の戦いもいよいよ熱を帯びてきました。飛び跳ねる日本選手の活躍を期待しましょう。

スケートの紐むすぶ間も逸りつつ
  ~山口誓子(1901-1994)『凍港』

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#4874 風越によすが残れる聖火台思へば懐かしふたつの五輪

令和8年2月7日(土) 【旧 12月20日 先勝】 立春・東風解凍

アイスホッケー恋を奪り合うごとくかな
  ~黛まどか(1962-)『くちづけ』

 昨日に続いてオリンピックの話題。ただし、この句はミラノ・コルティナではなく、1998年長野オリンピック冬季大会での選手の活躍を詠まれています。1998年のこの日に開会式が行われたことに由来して、2月7日は「長野オリンピックメモリアル・デー」。

260207_風越によすが残れる聖火台
Photo:軽井沢アイスパークのカーリング競技場 ~軽井沢風越公園

 この長野大会から正式種目に採用されたカーリング競技の会場は軽井沢町でした。そしてもう一つ、軽井沢は1964年の東京オリンピックでも総合馬術競技が開催された地でもあります。東京から近く、気候と地質の良さから選ばれたそうで、夏と冬両方のオリンピック競技が行われたのは日本で唯一ここだけ。その軽井沢、風越《かざこし》公園には夏冬二つの大会で使われた聖火台など4つのモニュメントが残されています。

風越によすが残れる聖火台思へば懐かしふたつの五輪
  ~片岡守之「軽井沢で短歌と写真と・・・

260207_思へば懐かしふたつの五輪
Photo:風越公園のオリンピック記念碑 ~「軽井沢で短歌と写真と・・・

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#4863 竹林のおくに斑雪の銀閣寺庭しづやかに山にむかへる

令和8年1月27日(火) 【旧 12月9日 友引】 大寒・水沢腹堅

竹林のおくに斑雪《はだれ》の銀閣寺庭しづやかに山にむかへる
  ~中村憲吉(1889-1934)

 銀閣寺を創建した室町幕府第7代将軍足利義政が亡くなったのは1490年1月27日(延徳2年1月7日)のこと。3代将軍義満の手になる豪壮華麗な鹿苑寺金閣に比べて慈照寺銀閣の佇まいの静かさ、幽玄さに心を奪われる外国人は少ないかもしれません。しかしこの建物は私たち日本人の心の奥にある侘び寂びを理解するヒントになりそうです。

260127_竹林のおくに斑雪の銀閣寺
Photo:慈照寺銀閣の雪景色 ~4travel.jp

 日本文学者であった故ドナルド・キーン博士は日本人の美意識は足利義政の東山時代にそのエッセンスが確立されたと、著書「日本人の美意識」の中で述べています。この時代以降の建築や日本庭園、茶の湯や連歌能楽、絵画など、義政の趣味が昂じて育て上げた東山文化がなければ、今の日本文化は違っていたかもしれません。コテコテの大阪文化の中で育った私が言っても説得力はなさそうですが。

述懐
わが思ひ神さぶるまでつつみこしそのかひなくて老いにけるかな
  ~足利義政(1436-1490)『慈照院集』

我が思いが年月を経て趣き深く古びてゆくまで抱いてきたが、その甲斐もなくただ老いてしまったことだ。

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#4862 斑鳩の因可の池のよろしくも君を言はねば思ひぞ我がする

令和8年1月26日(月) 【旧 12月8日 先勝】 大寒・水沢腹堅

斑鳩の因可《よるか》の池のよろしくも君を言はねば思ひぞ我《あ》がする
  ~作者未詳 『万葉集』巻12-3020 寄物陳思

斑鳩のよるかの池は良い池ということのようですが、あなたには良い噂もないので私もどう考えればよいのでしょう。

 今月14日、韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領が高市総理とともに日韓交流史ゆかりの地である奈良斑鳩の法隆寺を訪れました。所蔵する国宝、百済観音像はもちろん、法隆寺の建物にも百済の技術がふんだんに用いられており、現存する世界最古の木造建築として世界遺産にも登録されています。

260126_斑鳩の因可《よるか》の池のよろしくも
Photo:TVN 奈良テレビ放送(2026年1月14日)

 特に金堂の壁画に関しては李大統領も韓国の教科書で見たことがあると大変興味を示されたようですが、法隆寺金堂は昭和24年1月26日に失火炎上し、12面すべての壁画も焼損しています。幸いにも火災の前に詳細な写真撮影が行われていたため、その後当時の画家たちによって精巧に復元模写されました。二度とこのような事を起こさないようにと、法隆寺火災の翌年、昭和25年には1月26日を「文化財防災デー」と定め、全国で文化財の防火運動が行われるようになっています。

かの館の壁画の火事を怖れけり
  ~山口甲村(1924-)

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#4852 忍ぶれど色にいでにけりわが恋は物や思ふと人のとふまで

令和8年1月16日(金) 【旧 11月28日 友引】 小寒・水泉動

忍ぶれど色にいでにけりわが恋は物や思ふと人のとふまで
  ~平兼盛(?-991)『拾遺和歌集』 巻11-0622 恋歌一

知られまいと秘め隠していたが、顔色に出てしまったのだなあ、私の恋心は。思い悩んでいるのかと、人から尋ねられるまでに。

 小倉百人一首の40番にも採られているこの歌の作者、平兼盛の生年は不明ですが、没したのは正暦元年12月28日。西暦では991年の今日1月16日とされています。

260116_忍ぶれど色にいでにけりわが恋は
Photo:百人一首かるたの世界 ~大津市歴史博物館

 この歌は天徳4(960)年の3月、村上天皇の内裏で行われた歌合で詠まれたもので、対戦相手は壬生忠見でした。その歌もこれに劣らぬほど有名で、もちろん小倉百人一首にも採られています。

恋すてふわが名はまだき立ちにけり人しれずこそ思ひそめしか
  ~壬生忠見(生没年不詳)『拾遺和歌集』 巻11-0621 恋歌一

恋をしているという私の評判は、早くも立ってしまった。人知れず、ひそかに思い始めたのに。

 勝敗を決める判者の藤原実頼も補佐役の源高明にも優劣を決めかねるほどの見事な歌でしたが、天皇が「しのぶれど……」と口遊んだのが聞こえたため右方兼盛の勝ちとしたという逸話があります。今年も伝統に則り競技かるたの名人位・クイーン位決定戦が11日に近江神宮で行われました。我が家にも百人一首のセットがありますが、最後に家族で楽しんだのはいつのことでしょうか。お正月にかるたや坊主めくり、すごろくをしたのはもう遠い昔のこととなってしまいました。

260116_恋すてふわが名はまだき立ちにけり
Photo:壬生忠見(左)と平兼盛(右)~嵯峨嵐山文華館

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