万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

【恋情・友情】

#4852 忍ぶれど色にいでにけりわが恋は物や思ふと人のとふまで

令和8年1月16日(金) 【旧 11月28日 友引】 小寒・水泉動

忍ぶれど色にいでにけりわが恋は物や思ふと人のとふまで
  ~平兼盛(?-991)『拾遺和歌集』 巻11-0622 恋歌一

知られまいと秘め隠していたが、顔色に出てしまったのだなあ、私の恋心は。思い悩んでいるのかと、人から尋ねられるまでに。

 小倉百人一首の40番にも採られているこの歌の作者、平兼盛の生年は不明ですが、没したのは正暦元年12月28日。西暦では991年の今日1月16日とされています。

260116_忍ぶれど色にいでにけりわが恋は
Photo:百人一首かるたの世界 ~大津市歴史博物館

 この歌は天徳4(960)年の3月、村上天皇の内裏で行われた歌合で詠まれたもので、対戦相手は壬生忠見でした。その歌もこれに劣らぬほど有名で、もちろん小倉百人一首にも採られています。

恋すてふわが名はまだき立ちにけり人しれずこそ思ひそめしか
  ~壬生忠見(生没年不詳)『拾遺和歌集』 巻11-0621 恋歌一

恋をしているという私の評判は、早くも立ってしまった。人知れず、ひそかに思い始めたのに。

 勝敗を決める判者の藤原実頼も補佐役の源高明にも優劣を決めかねるほどの見事な歌でしたが、天皇が「しのぶれど……」と口遊んだのが聞こえたため右方兼盛の勝ちとしたという逸話があります。今年も伝統に則り競技かるたの名人位・クイーン位決定戦が11日に近江神宮で行われました。我が家にも百人一首のセットがありますが、最後に家族で楽しんだのはいつのことでしょうか。お正月にかるたや坊主めくり、すごろくをしたのはもう遠い昔のこととなってしまいました。

260116_恋すてふわが名はまだき立ちにけり
Photo:壬生忠見(左)と平兼盛(右)~嵯峨嵐山文華館

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#4849 吾妹子をはやみ濱風大和なる吾を待つ椿吹かざるなゆめ

令和8年1月13日(火) 【旧 11月25日 大安】 小寒・水泉動

玉椿落て浮けり水の上
  ~槐本諷竹(1659?-1708?)

 江戸中期の俳人槐本諷竹《えのもとふうちく》の通称は伏見屋久右衛門、別号に東湖・之道・蟻門亭等。薬種商を営み、また大坂芭蕉門の有力者でした。


 玉椿というのは椿の美称であって品種ではありません。そして「椿」自体は春の季語ですが、品種によって秋に咲く早咲き種から春の訪れと共に咲く遅咲き種まであるため、冬椿・寒椿という冬の季語、夏椿という夏の季語、椿の実という秋の季語など他にもたくさんの小季語があります。万葉集にも詠まれており、昔から愛されてきた植物です。

吾妹子《わぎもこ》をはやみ濱風大和なる吾《わ》を待つ椿吹かざるなゆめ
  ~長皇子《ながのみこ》 『万葉集』 巻1-0073 雑歌

わが妻を早く見たいと思うので、早見の浜を吹く風よ、大和で私を待っている松や椿、そして妻の所まで必ず吹いて思いを伝えておくれ。

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#4848 たけばぬれたかねば長き妹が髪このころ見ぬに掻き入れつらむか

令和8年1月12日(月) 【旧 11月24日 仏滅】 小寒・水泉動

袴着や子の草履とる親ごゝろ
  ~小西来山(1654-1716)

 男子が成長して初めて袴を履く通過儀礼である「袴着《はかまぎ》」は、成人になった証として平安時代から行われてきました。後に武家の間にも広がり、更には庶民の間でも行われるようになりました。

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Photo:ひめみこ裳着の儀 ~国際文化理容美容専門学校

 今日は「成人の日」。1999年までは1月15日に固定されていましたが、これは昔、元服の儀が小正月に行われていた名残だったようです。2000年から後はハッピーマンデー制度により1月の第2月曜日に変更され、更に2022年からは成人対象者が18歳に変更されました。成人を祝う儀式は古代から行われていましたが、もちろん男子の袴着だけではありません。女子の場合は初潮を迎えた女子に裳を着せる「裳着《もぎ》」や童女が垂らしていた髪を結い上げる「髪上げ」の儀式があり、これは「竹取物語」や「万葉集」にもその記述が残されています。

たけばぬれたかねば長き妹が髪このころ見ぬに掻き入れつらむか
   ~三方沙彌 『万葉集』 巻2-0123 相聞歌

束ねると解け、束ねないと長すぎる君の髪をこのごろ見られないが、もう誰かに結い上げてもらったのかなあ。

人は皆今は長しとたけと言へど君が見し髪乱れたりとも
   ~園臣生羽の女 『万葉集』 巻2-0124 相聞歌

人は皆、髪が長くなったとか束ねなさいとか言うけれど、あなたと会った時の髪だから乱れていてもいいのです。

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#4868 佐保川に凍りわたれる薄ら氷の薄き心を我が思はなくに

令和8年1月10日(土) 【旧 11月22日 友引】 小寒・水泉動

薄氷《うすらひ》に透けてゐる色生きてをり
  ~稲畑汀子(1931-2022)

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Photo:氷の下の魚を追うにゃんこ ~ねこナビ

 今日は七十二候の第68候「水泉動(しみずあたたかをふくむ)」。 地中で凍った泉が動き始める頃という意味で二十四節気「小寒」の次候に当たります。とは言え「小寒」のあとには、寒さがより厳しくなる「大寒」が控えており、氷が融けるどころではありません。それでも土の中ではもう春の兆しが芽生え始めているのだと信じたい古代人の思いではないでしょうか。

佐保川に凍りわたれる薄ら氷の薄き心を我が思はなくに
  ~大原櫻井真人《おほはらのさくらゐまさと》『万葉集』 巻20-4478

佐保川に張りつめた薄氷のような薄っぺらい心であなたを思っているのではないのです。

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#4840 小竹が葉のさやく霜夜に七重かる衣に益せる子ろが膚はも

令和8年1月5日(月) 【旧 11月17日 先負】 小寒・芹乃栄

黒松の幹の粗さや寒に入る
  ~森澄雄(1919-2010)

260105_黒松の幹の粗さや寒に入る
Photo:兼六園の雪吊り ~aini

 二十四節気の23番目は「小寒」。新年を迎えて、これからが本格的に寒さが厳しくなっていきます。この半月を過ぎると次は「大寒」。小寒と大寒の期間を「寒中」と言い、その入口にあたる今日は「寒の入り」とも呼ばれます。寒さには少しずつ慣れてきた頃ですが去年から引き続いてインフルエンザの患者数も増え続けています。油断しないように気をつけましょう。

小竹《ささ》が葉のさやく霜夜に七重《ななへ》かる衣に益せる子ろが膚はも
  ~作者未詳 『万葉集』 巻20-4431

笹の葉がそよぐ霜の降る夜には衣を幾重に重ね着しても及ばない彼女の肌には。

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