万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

【悲哀・寂寥】

#4864 チャレンジャーの飛行士たちはその朝の七十二秒をそらへ昇りき

令和8年1月28日(水) 【旧 12月10日 先負】 大寒・水沢腹堅

チャレンジャーの飛行士たちはその朝の七十二秒をそらへ昇りき
  ~都築直子(1955-)『淡緑湖』

 アメリカのスペースシャトルは1981年から2011年までに135回の打ち上げを行っています。10回目の打ち上げとなる「チャレンジャー・スペースシャトル・オービタ」には日系3世のエリソン・オニヅカが民間人宇宙飛行士として初めて抜擢されました。

260128_チャレンジャーの飛行士たちはその朝の
Photo:Change Agent News & Column

 チャレンジャーの打ち上げは1986年1月28日。しかし発射から70数秒後に空中で爆発。クルー7人全員が帰らぬ人となったのです。ちょうど40年前の今日の出来事でした。ロサンゼルスのリトルトーキョーに「オニヅカストリート」があると書いたことがありますが、他にも小惑星や月のクレーター、故郷ハワイの空港(エリソン・オニヅカ・コナ国際空港)など、彼の名は様々な地名や物語の中に残されています。

宇宙さまよう死ありコンピューター吃る
  ~隈治人(1915-1990)『現代歳時記』

260128_宇宙さまよう死ありコンピューター吃る
Photo:スペースシャトル・チャレンジャーの事故で亡くなった7人のクルー

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#4863 竹林のおくに斑雪の銀閣寺庭しづやかに山にむかへる

令和8年1月27日(火) 【旧 12月9日 友引】 大寒・水沢腹堅

竹林のおくに斑雪《はだれ》の銀閣寺庭しづやかに山にむかへる
  ~中村憲吉(1889-1934)

 銀閣寺を創建した室町幕府第7代将軍足利義政が亡くなったのは1490年1月27日(延徳2年1月7日)のこと。3代将軍義満の手になる豪壮華麗な鹿苑寺金閣に比べて慈照寺銀閣の佇まいの静かさ、幽玄さに心を奪われる外国人は少ないかもしれません。しかしこの建物は私たち日本人の心の奥にある侘び寂びを理解するヒントになりそうです。

260127_竹林のおくに斑雪の銀閣寺
Photo:慈照寺銀閣の雪景色 ~4travel.jp

 日本文学者であった故ドナルド・キーン博士は日本人の美意識は足利義政の東山時代にそのエッセンスが確立されたと、著書「日本人の美意識」の中で述べています。この時代以降の建築や日本庭園、茶の湯や連歌能楽、絵画など、義政の趣味が昂じて育て上げた東山文化がなければ、今の日本文化は違っていたかもしれません。コテコテの大阪文化の中で育った私が言っても説得力はなさそうですが。

述懐
わが思ひ神さぶるまでつつみこしそのかひなくて老いにけるかな
  ~足利義政(1436-1490)『慈照院集』

我が思いが年月を経て趣き深く古びてゆくまで抱いてきたが、その甲斐もなくただ老いてしまったことだ。

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#4860 過ぎ去った命を想うとき人はきっと静かな顔をしている

令和8年1月24日(土) 【旧 12月6日 大安】 大寒・款冬華

過ぎ去った命を想うとき人はきっと静かな顔をしている
  ~星野真里(1981-)

 女優の星野真里さんが台湾の九份に向かう途中に偶然立ち寄った金瓜石《きんかせき》鉱山跡地での体験を短歌に綴ったもの。1893年に金鉱が発見され一躍ゴールドラッシュの様相を呈したそうです。

260124_金山坑出て現世名残り月
Photo:MONEY PLUS

 今日1月24日は「金の日(ゴールドラッシュデー)」。1848年のこの日、カリフォルニア州で金の粒が発見され、一攫千金を夢見て大勢の人々が集まったとによります。歴史的にはアメリカを含めた世界各地で金鉱に人々が集まる現象が既にありましたが、「ゴールドラッシュ」という言葉が現れたのはカリフォルニアから。今ではほとんどの金鉱山は廃坑となり、新たこな金が採掘されることは少なくなりました。昔は南アフリカ共和国が世界の産出量3分の2を占めていましたが、減少の一途を辿り、現在は13%のシェアを占める中国がトップだそうです。

金山坑出て現世名残り月
  ~堀内律子(1934-)

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#4851 高円の尾上のきぎすあさなあさな妻に恋ひつつ鳴く音かなしも

令和8年1月15日(木) 【旧 11月27日 先勝】 小寒・雉始雊

雉子の声死後にも似たる朝景色
  ~右城暮石(1899-1995)

 朝の田園の澄み切った空気をつんざくような雉の声。「死後にも似たる」というのはその音と景色が生み出す鋭い透明感からの印象なのでしょう。

260115_高円の尾上のきぎすあさなあさな
Photo:キジの求愛 ~ぶらり自然散歩

 二十四節気「小寒」の末候は七十二候の第69候「雉始雊(きじはじめてなく)」。冬の寒さが深まった頃、雄の雉が雌を求めて鳴き始めます。雉がなく時は翼をバタバタを母衣打ちしながら「ケーンケーン」と甲高い声で鳴いて雌にプロポーズします。それに対する雌の行動はまさしく人間と同じ、受け入れれば「よろしくお願いします」、気に入らなければ「ごめんなさい」。それならまだいいほうですが、バカにするように「ホロロ」と鳴いてとっとと去っていくことも。「けんもほろろ」は雉さんのプロポーズが語源だったんですね。

高円の尾上のきぎすあさなあさな妻に恋ひつつ鳴く音かなしも
  ~源実朝(1192-1219)

高円の丘の上で雉が毎朝のように妻を求めて鳴く声が、なんとも物哀しい事だ。

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#4811 雪のみや降りぬとは思ふ山里にわれも多くの年ぞ積もれる

令和7年12月7日(日) 【旧 10月18日 先負】 大雪・閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)

雪のみや降りぬとは思ふ山里にわれも多くの年ぞ積もれる
  ~紀貫之(872-945)『新古今和歌集』 巻6-0676 冬歌

雪だけが降ったと思っていたが、山里に埋もれた私も多くの年を積もらせてきたものだ。

251207_雪のみや降りぬとは思ふ山里に
Photo:Adobe Stock

 二十四節気の21番目は「大雪《たいせつ》」。雪が激しく降り始める頃で、『暦便覧』では「雪いよいよ降り重ねる折からなれば也」と説明しています。また、期間としての大雪は次の「冬至」までの半月間でそれを三等分した最初の5日間は七十二候の第61候「閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)」。天地の気が塞がって本格的に冬になり、今年も残すところあと僅かと実感し始める頃ですね。

ヴィヴァルディ「四季」の大トリ雪荒ぶ
  ~林龍三(1952-)


Youtube:ヴィヴァルディ協奏曲集『四季』から冬の第3楽章(3’19”)

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