万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

【自然・季節】

#4876 鹿脊の山木立を繁み朝去らず来鳴きとよもすうぐひすの声

令和8年2月9日(月) 【旧 12月22日 先負】 立春・黄鶯睍睆

鹿脊《かせ》の山木立を繁み朝去らず来鳴きとよもすうぐひすの声
  ~田辺福麻呂《たなべのさきまろ》『万葉集』 巻6-1057 雑歌

鹿背の山の木立ちが繁っているので毎朝やって来ては鳴き声をひびかせる鶯の声よ。

 鹿脊の山とは現在の京都府木津川市の鹿背山。かつての恭仁京はこの山の西側を通る道によって左京と右京に分かれていました。

260209_鶯のけはひ興りて鳴きにけり
Photo:ウグイス ~tenki.jp

 今日は七十二候の第2候「黄鶯睍睆(うぐいすなく)」。 鶯が山里で鳴き始める頃。二十四節気立春の「次候」に当たります。万葉集に鶯が詠まれている歌は約50首。さえずる季節と重なって梅の花との取り合わせが多いようなので、今日はあえて梅が詠まれていない歌を選びました。逆に俳句に鶯と梅との取り合わせが少ないのは両方入れるといわゆる季重なりに陥っていまうからですね。

鶯のけはひ興りて鳴きにけり
  ~中村草田男(1901-1983)

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#4875 春のそらそれとも見えぬ太陽のかげのほとりのうす雲のむれ

令和8年2月8日(日) 【旧 12月21日 友引】 立春・東風解凍
 
春寒し夜されば疼く脳の芯
  ~石塚友二(1906-1986)

 石塚友二は新潟県に生まれ、上京の後横光利一に師事。多くの文人と交流を深めた俳人・小説家です。1986年2月8日に心不全で亡くなりました。今日は没後ちょうど40年に当たります。

260208_春寒し夜されば疼く脳の芯
Photo:石塚友二と四季おりおり快適生活

 「春寒し」と詠まれたとおり、少しづつ暖かくなってきたかと思えばまた寒さがぶり返すという、当分はこの繰り返しが続きそう。ところでこういうお天気の表現は他にもあります。例えば「春寒」は寒が明けた後の凍えるような寒さ。「余寒」は立春を過ぎてもなお寒さが残っていること。「花冷え」は桜の咲く季節に冷え込むこと。「寒の戻り」は晩春に一時的に寒さがぶり返すこと。逆に「三寒四温」は冬季に寒い日が3日ほど続いたあとに4日ほど暖かい日が続き、また寒さが戻ること。でも最近は春先に使われることもあるようなので必ずしも間違いではないそうです。日本語は難しい。

春のそらそれとも見えぬ太陽のかげのほとりのうす雲のむれ
  ~若山牧水(1885-1928)『別離』 下巻

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#4872 霞立つ春の山べはとほけれど吹きくる風は花の香ぞする

令和8年2月5日(木) 【旧 12月18日 大安】 立春・東風解凍

水神の裾吹く風に氷解く
  ~原裕(1960-1999)『青垣』

 二十四節気「立春」の初候5日間(2月4日~8日)は七十二候の第1候「東風解凍(はるかぜこおりをとく)」。春風が厚い氷を解かし始める頃。一時の寒波は少し和らいで、昼間の気温は少しずつ上昇気味です。とは言え北国の雪はまだまだ止まず、厚い氷を解かしてくれるような春風が吹くのはもう少し先のようです。

260205_水神の裾吹く風に氷解く
Photo:Eat Act Tokyo

 中国の陰陽五行の思想によると春は東を司るものとされているめ、その名残りが七十二候に反映されました。したがって、春風は必ずしも東の風ではありません。ただし、「東風」とかいて「こち」と訓むようになった由来についてはここでは書ききれないほどの説があって、今もって謎のようです。まあ、どちらから吹いても結構ですが、暖かい風が待たれる今日このごろです。

霞立つ春の山べはとほけれど吹きくる風は花の香ぞする
  ~在原元方(平安前期)『古今和歌集』 巻1-0103 春歌二

霞が立ち込める春の山々は遠くてよく見えないが、吹き下ろす風は花の香りがするではないか。

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#4871 春きてぞ人もとひける山里は花こそ宿のあるじなりけれ

令和8年2月4日(水) 【旧 12月17日 仏滅】 立春・東風解凍

春きてぞ人もとひける山里は花こそ宿のあるじなりけれ
  ~藤原公任(966-1041)『拾遺和歌集』 巻16-1015 雑春

春が来て、人がたくさん訪れたこの山里の家の主人は私ではなく桜の花であったか。

 藤原公任《きんとう》の山荘は北白川(京都市左京区)にありました。比叡山から流れる鴨川流域白川の地は桜の名所。貴族の別荘もたくさんあったようです。

260204_春きてぞ人もとひける山里は
Photo:藤原公任(町田啓太)~2024年NHK大河ドラマ『光る君へ』より

 季節が変わって今日から春。二十四節気の第1「立春」に戻りました。桜の季節にはまだ早いですが、暦の上とは言え、春になったと聞くと何となく浮き立つ気分になるものです。もう少し静かに春の到来を迎えたかったところですが、衆議院選挙を前にして町中は候補者の叫び声で騒がしくなっています。1041年の今日2月4日(長久2年1月1日)に亡くなった藤原公任の和歌からもう一首。同じく白川にあった藤原道兼の山荘で詠んだ歌で、公任も道兼もやはり静かな山里がお気に入りだったようです。

うき世をば峰の霞やへだつらむなほ山里は住みよかりけり
  ~同 『千載和歌集』 巻16-1059 雑歌中

峰の霞がこの憂き世から隔ててくれるのでありましょうか。やはりこの山里は住みよいところでありますなあ

260204_うき世をば峰の霞やへだつらむ
Photo:藤原道兼(玉置玲央)~2024年NHK大河ドラマ『光る君へ』より

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#4870 月夜にはそれとも見えず梅の花香をたづねてぞ知るべかりける

令和8年2月3日(火) 【旧 12月16日 先負】 大寒・鶏始乳

月夜にはそれとも見えず梅の花香をたづねてぞ知るべかりける
  ~凡河内躬恒(859?-925)『古今和歌集』 巻1-0040 春歌

月夜の梅は光に紛れて見えづらいが香りを頼りにすればよかったのだ。

 この梅とは雪に覆われた白梅。月の光に照らされて雪に紛れたというのですが、ちょっと大げさな感が否めません。旧暦12月16日は月齢15.3の満月ですから、こんな日に詠まれた歌かもしれません。

260203_冬の月かこみ輝き星数多
Photo:2月の満月「スノームーン」 ~ECナビ

 和歌や俳句で中秋の名月が詠まれる一つの理由が空気が澄んでいるからとも言われますが、その理由に限ると冬のほうがよほど空気が済んでいます。月は冬こそ美しいと考えれば、今日は冬と春との季節を分ける「節分」。冬の満月が観られる最後の日ですね。ちなみに2月の満月は別名「スノームーン」とも呼ばれます。

冬の月かこみ輝き星数多
  ~高木晴子(1915-2000)『晴居』

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