令和3年3月10日(水) 【旧 一月二十七日 先負】・啓蟄・桃始笑(ももはじめてさく)
●屏風のおはなし●
御屏風に桃の花がありける所をよめる
御屏風に桃の花がありける所をよめる
あかざらば千代までかざせ桃の花花も変わらじ春も絶えねば
~清原元輔 『後拾遺和歌集』 巻2-0129 春歌下
飽きぬならばいつまででも挿頭《かざし》にしよう桃の花を。花も変わらないのだよ、春が終わらないのだから。
梅の季節が終わるとまもなく桜の季節です。が、その間に咲くのが桃の花。今日は七十二候の第8候、「桃始笑(ももはじめてさく)」。二十四節気「啓蟄」の次候にあたります。桃の開花期はおよそ3月上旬から4月上旬くらい。清原元輔が春が終わらないから花も変わらないと言っているのは詞書にあるように、屏風絵の桃の花を見て詠んだからです。平安時代には「屏風歌」と言って、屏風絵に添えて歌が書かれる様になりました。また、逆にいにしえの名歌を題材にして屏風絵が描かれたりもします。こんな屏風が江戸時代に作られました。


Photo:狩野永岳画 『三十六歌仙歌意図屏風』(六曲一双 右隻)
ところで、屏風の数え方をご存知でしょうか。上の屏風は美術館などで展示される時は「六曲一双(右隻)」と説明されています。「曲」は折れ曲がらせて繋いだ絵の数です。そのパーツ1枚の面を「扇《せん》」と呼びます。右から順に第一扇、第二扇と数えて一番左が第六扇。で、この複数の扇がつながった屏風が一隻《せき》です。ところが二隻でワンセットに作られている屏風も多く、その場合は二隻一組を合わせて一双《そう》と呼びます。上の屏風は「六曲一双」なのでペアになる六曲の屏風がもう一隻があります。それが下の絵。それぞれの置かれるべき位置を示してそれぞれ右隻、左隻と呼びます。美術館でホンモノの屏風絵を見たくなってきませんか。


Photo:狩野永岳画 『三十六歌仙歌意図屏風』(六曲一双 左隻)


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