万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

三重

#4508 黄梅を窗に置きたり川べりの古自轉車を商ふ家居

令和7年2月6日(木) 【旧 1月9日 先負】 立春・東風解凍(はるかぜこおりをとく)

黄梅を窗《まど》に置きたり
川べりの
古自轉車を
商ふ家居《いへゐ》

  ~三好達治(1900-1964)『日まはり』

250206_唐国の咲いて黄梅四日かな
Photo:オウバイ ~暦生活

 早春に咲いている梅に似た黄色い花といえばまず蝋梅《ロウバイ》を思い起こしますが、黄梅《オウバイ》もそのひとつ。ロウバイはロウバイ科ロウバイ属の落葉低木であるのに対し、オウバイはモクセイ科ジャスミン属の半つる性落葉低木。ロウバイのような透明感はありません。英語では「ウインター・ジャスミン」と呼ばれ、こちらも中国が原産です。漢名を「迎春花」というように早春、中国でお正月を祝う春節の頃に咲き始めます。

唐国の咲いて黄梅四日かな
  ~岡井省二(1925-2001)『鹿野』

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#4502 駅前で眠る老人すぐ横にマクドナルドの温かいごみ

令和7年1月31日(金) 【旧 一月三日 先負】 大寒・鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)

駅前で眠る老人すぐ横にマクドナルドの温かいごみ
  ~鳥居 『キリンの子-鳥居歌集』

 ソ連末期の1990年1月31日、ペレストロイカの波の中で米ハンバーガーチェーン「マクドナルド」がモスクワに第1号店を出店しました。35年前の今日のことでした。ご存知の通り、ウクライナ侵攻を機に2022年6月にマクドナルドはロシアから全面撤退しています。

250131_駅前で眠る老人すぐ横に
Photo:撤退が決まって混雑するマクドナルドモスクワ店。

 マクドナルドの撤退から約1ヶ月後に同じ場所オープンしたのは「フクースナ・イ・トーチカ」というロシアブランドのハンバーガーチェーンでした。店名はロシア語で「美味しい。ただそれだけ」という意味だとか。マクドナルド時代に使っていた厨房の設備をそのまま使っていて、レシピもそのままだから、きっとお味はそんなに変わらないのかもしれません。

ハンバーガー食べて氷河の神に会う
  ~伊丹公子(1925-2014)『アーギライト』

250131_ハンバーガー食べて氷河の神に会う
Photo:マクドナルド撤退後の新店舗。看板のロシア語は「名前が変わっても、愛はそのまま」。

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#4493 蝋梅は夢のごとくに花咲けり任那日本府ここにほろびし

令和7年1月22日(水) 【旧 一二月二三日 仏滅】 大寒・款冬華(ふきのはなさく)

蝋梅は夢のごとくに花咲けり任那日本府ここにほろびし
  ~岡野弘彦 『異類界消息』

250122_蝋梅は夢のごとくに花咲けり
Photo:ロウバイ ~いこーよとりっぷ

 任那日本府《みまなにほんふ》は古代朝鮮半島にあった倭国の出先統治機関でしたが、西暦564年、百済が新羅に滅ぼされた際に消滅してしまいました。第二次世界大戦後、韓国ではその存在自体も抹殺してしまったようで、岡野氏の短歌の「ここにほろびし」はどちらの意味で使われているのでしょうか。ともあれ、「蝋梅《ろうばい》」の黄色い花は今が盛り。梅に似たこの植物も早々と次に来る春の訪れを教えてくれています。日本には江戸時代、後水尾天皇の御代に朝鮮から渡ってきたといい、「唐梅《からうめ》」とも呼ばれています。

息そそとはしり唐梅きぞの雨
  ~吉弘恭子

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#4470 新しき年の光にむかふかなしはすの月のあり明の空

令和6年12月30日(月) 【旧 一一月三〇日 仏滅】 冬至・「麋角解(さわしかのつのおつる)」

新しき年の光にむかふかなしはすの月のあり明の空
  ~三条西実隆(1455-1537)『雪玉集』

241230_三十日月なし千年の杉を抱あらし
Photo:三十日月《みそかづき》(月齢28.39)~天体写真ギャラリー

 今日12月30日はたまたま太陰暦においても11月の30日。新月を前にした晦日の月は出ているかどうかわからないほど真っ暗な状態です。ちなみに今夜の月齢は28.9。そして「有明の月」とは夜が明けてもまだ沈みきっていない月のこと。室町時代後期の内大臣三条西実隆の歌はそんな有るか無きかの三十日月《みそかづき》を見て、これから新しい年に向かって少しずつ世情が明るくなっていくことの予兆であると見ているようです。2024年は能登の地震に始まり、世界の情勢も混迷したまま暮れていきます。新しい年がきっと明るい兆しに満ちているように祈らずにはいられません。

三十日月なし千年《ちとせ》の杉を抱《だく》あらし
  ~松尾芭蕉(1644-1694)『野ざらし紀行』

 芭蕉が伊勢神宮外宮の大杉の威容を見て詠んだ句です。

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#4466 このころの朝明に聞けばあしひきの山呼び響めさを鹿鳴くも

令和6年12月26日(木) 【旧 一一月二六日 赤口】 冬至・「麋角解(さわしかのつのおつる)」

鹿の角先《まづ》一節《ひとふし》のわかれかな
  ~松尾芭蕉(1644-1694)

 鹿の角が一節目に二股に別れていく事をもって、奈良で出会った弟子たちとの別れの言葉とした芭蕉の句です。

241226_鹿の角先一節のわかれかな
Photo:私の角立派でしょ! ~photoAC(りくそらZ5さん)

 昨日までサンタのそりを曳いて大活躍のトナカイさんでした。今日は故郷フィンランドに帰ってゆっくり休んでもらいましょう。また来年お逢いできますように。ということで、今日から12月30日までの5日間は七十二候の第65候「麋角解(おおしかのつのおつる)」。二十四節気「冬至」の次候にあたります。「麋」は見慣れない漢字ですが、大型の鹿の一種であるヘラジカまたはオオジカのことを指すといわれています。万葉集にも鹿の歌はたくさん詠まれていますが、ほとんどは秋の歌。俳句でも鹿は秋の季語になっています。

このころの朝明《あさけ》に聞けばあしひきの山呼び響《とよ》めさを鹿鳴くも
  ~大伴家持(718-785)『万葉集』 巻8-1603 雑歌

この頃は夜明けに耳をすませると山にこだまする男鹿の鳴き声が聞こえるよ。

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