万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

京都

#4968 花鳥のあかぬわかれに春くれてけさよりむかふ夏山の色

令和8年5月5日(火) 【旧 3月19日 先負】 立夏・蛙始鳴

首夏の心をよみ侍りける
花鳥のあかぬわかれに春くれてけさよりむかふ夏山の色
  ~西園寺実兼(1249-1322)『玉葉和歌集』

花鳥との名残惜しい別れのうちに春が過ぎ、今朝から向き合うのは夏山の緑であるなあ。

 「首夏」は初夏と同義。旧暦4月1日に詠まれた歌のようです。年により5月4日や6日になることもありますが、多くの場合二十四節気7番目の「立夏」は、5月5日の「こどもの日」と重なります。

260505_花鳥のあかぬわかれに春くれて
Photo:JREメディア(JR東日本)

 「立夏」は「春分」と「夏至」のちょうど真ん中。『暦便覧』では「夏の立つがゆへ也」とされており、この日から「立秋」(今年は8月7日)の前日までが夏とされます。長い休みがある夏の季節が待ち遠しかった子どもの頃も今は昔。最近は夏の暑さも半端ないくらいで、今年には気温35℃の「猛暑日」の上に、40℃以上の日に「酷暑日」という名称が誕生するほど。その前に鬱陶しい「梅雨」も待っていますから、ますます体調に気をつけないといけない危険な季節の到来だと思えてしまいます。

夏が来ていなくなるひと戻るひとわたしの心は忙しくなる
  ~飯沼鮎子(1956-)

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#4967 夏草は茂りにけりなたまぼこの道行き人も結ぶばかりに

令和8年5月4日(月) 【旧 3月18日 友引】 穀雨・牡丹華

夏草は茂りにけりなたまぼこの道行き人も結ぶばかりに
  ~藤原元真(平安中期)『新古今和歌集』 巻3-0188 夏歌

夏草はよく茂ったものだ。道行く人のしるべに玉結びが出来るほどに。

 国民の祝日の一つ、「みどりの日」。昭和天皇が崩御された1989年に、天皇誕生日であった4月29日を「みどりの日」に変更して名称を変更したのが始まりです。

260504_夏草は茂りにけりなたまぼこの
hoto:那須御用邸を散策される昭和天皇御一家(昭和53年)~NEWSポストセブン

 ではなぜ「みどりの日」なのかというと、昭和天皇が植物に造詣が深く、自然をこよなく愛したことから『緑』にちなむ名がふさわしい」からだとか。その後、2007(平成19)年以降は現在の5月4日に移動し、4月29日は「昭和の日」に変更されました。祝日法に記された「みどりの日」の趣旨は「自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心を育む」とありますが、どうやら本当のねらいは国民がゆとりのある生活を営めるように、ゴールデンウイークの一角を崩さないことにあったようです。何の日か知らないがとりあえず休めればそれで良いというのも必ずしも間違いではなさそうです。

風すこし心にも入れみどりの日
  ~上井みどり

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#4961 時しあれは人の国なるけたものもけふ九重にみるがうれしさ

令和8年4月28日(火) 【旧 3月12日 友引】 穀雨・霜止出苗

時しあれは人の国なるけたものもけふ九重にみるがうれしさ
  ~中御門天皇(1702-1737)

時節も良いので、他所の国の獣を今日九重(宮中)で見ることができるとは嬉しいことである。

 今日は「象の日」。この歌は享保14(1729)年4月28日、中御門天皇が本物のアジアゾウを見て詠まれたものです。この象は徳川吉宗が清の商人に注文したもので、交趾国(現在のベトナム)からの献上品として中御門天皇と霊元上皇の御前で披露されました。面白いことに御所に入るためには「従四位広南白象」という官位を与える必要があったとか。

260428_古りし絵に象の哭きをる青あらし
Photo:歌川芳春『The Great Elephant from a Foreign Land(異国渡大象図)』1863年

 そもそも「象」という漢字はゾウの姿をかたどった古代中国の象形文字です。普賢菩薩像は白象に乗っている姿が定番であり、象牙は『日本書紀』に「象牙《きさのき》」という記述があって昔から装飾材料としてもよく用いられていました。しかしながら生きた象を見た人は殆どいませんでした。天皇はもちろん、道中で見物した庶民もさぞかし驚いたことでしょう。その後、享保15年にこの象は浜御殿(浜離宮)でしばらく飼われ、更に中野村の源助という男に下げ渡されて見世物になったそうです。

古りし絵に象の哭きをる青あらし
  ~上村占魚(1920-1996)

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#4958 早苗取る山田の懸樋もりにけり引くしめ縄に露ぞこぼるる

令和8年4月25日(土) 【旧 3月9日 大安】 穀雨・霜止出苗

早苗生る水に日射せば消ぬほどに
  ~及川貞(1899-1993)『榧の實』

 今日は七十二候の第17候「霜止出苗(しもやみてなえいづる)」。霜の降りる季節は終わり、稲の苗が生長する頃。二十四節気「穀雨」の次候にあたります。

260425_早苗生る水に日射せば消ぬほどに
Photo:micane

 晩春から初夏にかけての端境期。この時期としては今年は少し雨の日が多いようです。気温も暖かくなったり寒くなったりと不安定ですが、さすがにこの頃になると北国のほうでも霜が降りることはほとんどなくなってきます。そして種籾が芽吹き、苗がすくすくと育っていくのもこの頃です。ゴールデンウィークが始まりますが農家では田植えの準備で忙しくなりそうです。

早苗取る山田の懸樋もりにけり引くしめ縄に露ぞこぼるる
  ~源経信(1016-1097)『新古今和歌集』 巻3-0225 夏歌

早苗を取る山田の懸樋が漏れていたのだな。田に張ったしめ縄に露がこぼれているよ。

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#4957 茹であげしアスパラガスが蒼々と皿に盛られて朝餉は愉し

令和8年4月24日(金) 【旧 3月8日 仏滅】 穀雨・虹始見

籐籠にアスパラガスを摘みて来し
  ~長谷川かな女(1887-1969)

 アスパラガスの和名は「松葉独活《まつばうど》」。キジカクシ科の多年草で、ちょうど今、春から初夏にかけて旬を迎える野菜です。

260424_茹であげしアスパラガスが蒼々と
Photo:アスパラガス ~農家Web

 緑色のグリーンアスパラガスと、日光を遮って育てた白いホワイトアスパラガスがあり、後者は苦味が少なく上品な味わい。どちらも若い芽の部分を食用とし、やわらかくほのかな甘みと独特の香りが特徴です。神戸で家庭菜園をしている学生時代の友人が言うには、採ってすぐ生で食べると甘くて美味いとか。普通は塩茹でしたり、焼いたりなどさまざまなが調理法がありますが、私はベーコンといっしょに炒めたアスパラガスが好物です。

茹であげしアスパラガスが蒼々と皿に盛られて朝餉は愉し 
  ~木村草弥(1930-2023)『茶の四季』

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