万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

仏足石歌

#1753 沙浜に くされし如き 水流れ ・・・

【旧 六月三日 友引】大暑・桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)
 今年、夏の土用は7月19日から立秋前日の8月6日までの19日間。干支のめぐりは12日で一回りするので、この19日間のうちに丑の日が廻ってくるタイミングは最低1回、多いときには2回あってもおかしくありません。今年の場合は今日、7月25日と12日後の8月6日の2回が丑の日に当たります。最初は「一の丑」、二度目を「二の丑」と呼びます。鰻の和歌と言えば万葉集の大伴家持が吉田石麻呂を冷やかして詠んだ歌、あるいは蒲焼き大好きな斎藤茂吉の短歌が思い出されますが、いずれも掲載済みなので、今日は少し毛色の変わった鰻の歌をどうぞ。

170725_沙浜にくされし如き水流れ.jpg
Photo:シラスウナギの稚魚

沙浜に くされし如き 水流れ 
白き鰻の子 やや上流に 上れるもあり
  ~土屋文明 『六月風』

 昭和10年の「稲村が崎」と題された一連の作品から。鰻は淡水魚とされていますが、産卵・孵化は海で行い、その後淡水に遡ってくる「降河回遊」という生活形態をとっています。そんな鰻の稚魚が短歌の題材にされることはめったにありません。そのうえ、この短歌自体もめずらしい、5・7・5・7・7・7の仏足石歌体ですね。

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑

#1715 ひさかたの 月の光の きよければ ・・・他一首

【旧 五月廿三日 先負】芒種・梅子黄(うめのみきばむ)
 今から45年前、1972年6月17日午前2時。野党民主党本部があるワシントンD.C.、ウォーターゲートビルの警備員が、ガレージのドアに侵入者の形跡を発見して警察に通報しました。世紀の政治スキャンダル、ウォーターゲート事件の始まりです。この盗聴侵入事件がニクソン大統領の弾劾発議にまで発展したのは周知の通り。ウォーターゲートとはこのビルの名称なのですが、これ以降、政権を揺るがすスキャンダル事件には世界中で「・・ゲート」と名付けられるようになりました。で、今注目されているのが「ロシアゲート疑惑」。さて、トランプ大統領と、コミー前FBI長官。どちらの発言がウソかマコトか。現在は「疑惑」の段階ですが、成り行きによっては世界中に影響を及ぼす「事件」になるかもしれません。

170617_ひさかたの 月の光の きよければ.jpg
Photo:弾劾決議の前に、自ら辞任を発表したニクソン大統領(1974年8月8日)

ひさかたの 月の光の きよければ 
照らしぬきけり 唐《から》も大和も 
昔も今も うそもまことも
  ~良寛 『蓮の露』

お月さまの光というのは清らかなので 
すべてを照らし出すのですよ 外国でも日本でも昔も今も そして嘘も真も

 『蓮《はちす》の露』は良寛の愛弟子、貞心尼自筆の歌集で、良寛の略伝なども併せて記されたものです。この歌の面白いのは短歌でも長歌でもなく、5・7・5・7・7・7の仏足石歌体に、さらに7音の結句が付いた七句雑体歌という特殊な形になっていることでしょうか。さて、嘘と記憶違いとはまた別の次元の話になりますが、嘘も長年つき続けるといつの間にかご本人も嘘であることを忘れてしまうそうです。こうなると嘘発見器がどんなに進化しても見抜くことはできません。わたしにも、都合よく何が本当なのかわからなくなってしまった過去の出来事がたくさんあります。政治家にならなくてよかった。

今までに つきたる嘘の 半分は 
己れにつきて 騙されたふり
  ~林龍三 『塔』2017年4月号

170617_今までにつきたる嘘の半分は.jpg
Photo:ロシアゲート疑惑の主役たち。(左から)コミー前FBI長官、トランプ大統領、フリン前大統領補佐官

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑

#283 伊夜彦の 神の麓に 今日らもか ・・・

●たった一首の「仏足石歌体」の歌●

 昨日は最古の和歌をご紹介しましたが、その形式は5・7・5・7・7の「短歌」でした。和歌には、それ以外にも「長歌」や「旋頭歌」があることは、すで何首もとりあげてきましたので、ご承知のことと思います。ところがもう一つ、「仏足石歌《ぶっそくせきか》」と呼ばれる形式のものがあります。写真は足つぼを解説した図ではありません。仏足石と呼ばれるもので、仏さまの足跡を石に刻んで信仰の対象としたものです。わが国最古の仏足石は世界遺産の奈良薬師寺にあります。そしてその隣には仏の教えを刻んだ歌碑があり、その歌21首すべてが5・7・5・7・7・7という独特の形式で詠われています。これが仏足石歌体と呼ばれる歌体です。

sokuseki-41.jpg

伊夜彦《いやひこ》の 神の麓に 今日らもか
鹿の伏すらむ 皮服《かはごろも》着て 角つきながら

  ~作者未詳 『万葉集』 巻16-3884 雑歌

弥彦の 神山の麓に 今日もまた
鹿が畏まって、ひれ伏しているだろうか
毛皮の着物を身に付け、角を頭に戴きながら

 弥彦山は新潟県にある標高634mの山で、山全体が弥彦神社の祭神を祀った神域になっています。この歌は、神の使いとされる鹿のかぶりものをまとって踊る神事を歌った、当時の歌謡だと考えられています。薬師寺の歌碑にある歌ではありませんが、万葉集に仏足石歌体で詠まれた歌はこの一首だけなので、後にも先にもこのブログで取り上げる歌はありません。仏足石歌体は平安時代には衰亡してしまったので、大変貴重な一首になってしまいました。

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑
記事検索
🎼 I love music ♪

読んでくれたひと(感謝)
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

過去記事すべて見られます▼
📖私の著作です


  • ライブドアブログ