万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

動物

#4816 熊の住む苔の岩山おそろしみむべなりけりな人も通はぬ

令和7年12月12日(金) 【旧 10月23日 友引】 大雪・熊蟄穴(くまあなにこもる)
 
熊撃ちも湯治の客も夜の炉端
  ~石井とし夫(1923-2011)

 今日は二十四節気「大雪」の次候「熊蟄穴(くまあなにこもる)」。七十二候の第62候です。そして今日、京都の清水寺において「今年の漢字」が発表されますが、毎年私の予想が当たったことがありません。けど、今年は「熊」か「米」以外に思いつく漢字がないので「熊」のほうに一票を投じてみました。答えはすぐ出ますけど結果はどうでしょうか。

251212_熊撃ちも湯治の客も夜の炉端
Photo:盛岡市の市街地に出没したクマ ~読売新聞オンライン

 12月に入っても熊による人身被害が発生したのは今年が初めてだとか。本来なら草や小動物、魚などを食べている熊が、秋になるとより栄養価の高いドングリやヤマブドウをたっぷりと食べて皮下脂肪を蓄え、穴にこもって春を待ちます。体力温存のために穴の中で動かないだけなので、冬眠というよりも「冬ごもり」というべきかもしれません。しかし人里に降りてくればいつでも食料を調達できることを覚えた熊には冬ごもりも不要です。作物が荒らされるのはもちろん困りますが、家の中で熊に襲われて亡くなる事件もあっては駆除せざるを得ません。猟友会だけでなく警察、自衛隊の出動もやむなしですね。

熊の住む苔の岩山おそろしみむべなりけりな人も通はぬ
  ~西行(1118-1190) 『山家集』166

熊が棲んでいる苔むした岩山は恐ろしいので無理もないのかなあ、人も通ってこないのは。

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑

#4779 神無月伊藤哈爾濱に狙撃さるこの電報の聞きのよろしき

令和7年11月5日(水) 【旧 9月16日 赤口】 霜降・楓蔦黄(もみじつだきばむ)

神無月伊藤哈爾濱《ハルピン》に狙撃さるこの電報の聞きのよろしき
  ~与謝野鉄幹(1873-1935)『相聞《あいきこへ》』

 伊藤博文がハルピンの駅頭で韓国人過激派活動家安重根《アン・ジュングン》に暗殺されたのは明治42年10月26日のこと。この凶報は電報によって瞬く間に日本に伝わりました。「聞きのよろしき」とあるのはこれを聞いて喜んでいるわけではなく鉄幹は政治家としてまことに見事な最期であると考えたかったようです。

251105_神無月伊藤哈爾濱に狙撃さる
Photo:電報配達 ~文化遺産オンライン

 ということで今日11月5日は「電報の日」。電報を申込む電話番号115によるものですが、最近は「電報」という通信手段を使うことなどほとんどなくなりました。文字による通信としてはファクシミリ、電子メール、さらにはLINEなどのメッセンジャーアプリに進化し、今では結婚式や葬儀の際にしか電報に接することはありません。しかしそんなものがなかった明治時代の文人たちが俳句をそのまま電文にしてやり取りしていました。さて次の電文は誰に送られたものかわかりますか。

センセイノネコガシ二タルヨサムカナ
  ~松根東洋城(1878-1964)

 これは明治41年、夏目漱石に送られた弔慰電文です。松根東洋城は漱石の門下生でした。もちろん『吾輩は猫である』で有名な名前のない猫の死を悼んだもの。もう一人、正岡子規の門下生であった高浜虚子からの電報もありました。

ワガハイノカイミヨウモナキススキカナ
  ~高浜虚子(1874-1959)

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑

#4767 あぢはひを何にたとへん形さへ濃き紅の玉の如き柿

令和7年10月21日(火) 【旧 9月1日 先負】 寒露・蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)

柿落ちて犬吠ゆる奈良の横町かな
  ~正岡子規(1867-1902)

 正岡子規が無類の柿好きであると聞けば、ご存知なかった人でも容易に想像できるでしょう。何と言っても法隆寺の鐘の音を聞きながら柿を食べているというあの俳句を知らない人はいないでしょうから。それ以外にも柿にまつわる俳句がたくさん詠まれています。冒頭の俳句も奈良で詠まれているので同じ時期の俳句だと思われます。何と言っても奈良は全国一の柿の名産地ですからね。

251021_柿落ちて犬吠ゆる奈良の横町かな
Photo:奈良タウン情報ぱーぶる

 ところで、柿の木は古くから日本で栽培されてきた植物なのですが『万葉集』には詠まれていません。でも柿本人麻呂のように人名に柿が入っているのに不思議なことですね。今ではアジアやヨーロッパでも "Kaki" という日本名そのままで流通しています。そうそう、柿が大好きな正岡子規は短歌でも柿の歌を残しています。こちらはよほど好物だったことがよく分かる歌です。

あぢはひを何にたとへん形さへ濃き紅の玉の如き柿
  ~同

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑

#4750(再掲)ストックホルム、グランド・ホテルの夜を深み馬蹄ひびきて消えて静けき

令和7年10月7日(火) 【旧 8月16日 大安】 秋分・水始涸(みずはじめてかる)
ストックホルム、グランド・ホテルの夜を深み馬蹄ひびきて消えて静けき
  ~湯川秀樹(1907-1981)
251007_囀りの今朝は高きにガラス拭き
Photo:2025年ノーベル生理学・医学賞の受賞が決定した坂口志文博士 ~朝日新聞
 私が小学生の頃、学校で「ノーベル賞」を教わった時点での日本人の受賞者は湯川秀樹博士ただ一人だけ。湯川博士がノーベル賞の代名詞と言ってもよかったのですが、その後朝永振一郎、川端康成と続々と受賞者が増え、昨年の被団協を含めて昨日の坂口志文博士で実に30回目。特に自然科学部門では日本は米国に続く世界2位の受賞者数となっています。あと、まだ受賞歴が無いのは経済学賞と女性の受賞者なので、これもそのうちに誰かが受賞してくれることを楽しみにしています。ノーベル賞の持つ権威主義が大嫌いという人もいらっしゃいますが、ここは素直に喜びたいものですね。

囀りの今朝は高きにガラス拭き
  ~川端康成(1899-1972)

追伸(10月8日):
 更に今日、京都大学特別教授の北川進博士がノーベル科学賞を受賞というニュースが入りました。これで個人では30人目、団体(日本被団協)を含めて31例目の受賞となりました。

251008_囀りの今朝は高きにガラス拭き
Photo:ノーベル科学賞の受賞が決定した北川進博士 ~京都大学アイセムス

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑

#4750 ストックホルム、グランド・ホテルの夜を深み馬蹄ひびきて消えて静けき

令和7年10月7日(火) 【旧 8月16日 大安】 秋分・水始涸(みずはじめてかる)
ストックホルム、グランド・ホテルの夜を深み馬蹄ひびきて消えて静けき
  ~湯川秀樹(1907-1981)

251007_囀りの今朝は高きにガラス拭き
Photo:2025年ノーベル生理学・医学賞の受賞が決定した坂口志文氏 ~
朝日新聞

 私が小学生の頃、学校で「ノーベル賞」を教わった時点での日本人の受賞者は湯川秀樹博士ただ一人だけ。湯川博士がノーベル賞の代名詞と言ってもよかったのですが、その後朝永振一郎、川端康成と続々と受賞者が増え、昨年の被団協を含めて昨日の坂口志文博士で実に31回目。特に自然科学部門では日本は米国に続く世界2位の受賞者数となっています。あと、まだ受賞歴が無いのは経済学賞と女性の受賞者なので、これもそのうちに誰かが受賞してくれることを楽しみにしています。ノーベル賞の持つ権威主義が大嫌いという人もいらっしゃいますが、ここは素直に喜びたいものですね。

囀りの今朝は高きにガラス拭き
  ~川端康成(1899-1972)

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑
記事検索
🎼 I love music ♪

読んでくれたひと(感謝)
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

過去記事すべて見られます▼
📖私の著書です
【電子書籍・紙書籍】


  • ライブドアブログ