万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

北海道

#4885 忘れ来し煙草を思ふ ゆけどゆけど 山なほ遠き雪の野の汽車

令和8年2月18日(水) 【旧 1月2日 友引】 立春・魚上氷

忘れ来し煙草を思ふ
ゆけどゆけど
山なほ遠き雪の野の汽車

  ~石川啄木(1886-1912)

 石川啄木が北海道にいた頃の作。煙草を忘れ、手持ち無沙汰になった啄木が窓越しの雪景色を眺めている様子が伝わります。そもそも日本に煙草が渡来したのは16~17世紀とされていて、江戸時代には歌舞伎や落語の中で煙草を吸うシーンは必ずと言っていいくらいに登場し、川柳にも多く取り上げられました。以来、成人した男性が煙草を吸うのは当たり前の時代が続きます。

260218_ぷんぷんと煙草は匂い銭はなし
Photo:SMOKINGSITE

ぷんぷんと煙草は匂い銭はなし
  ~江戸川柳

 現在のタバコの値段は500円超。私が吸っていた頃は確か200円くらい。もっと昔の値段は存じませんが、石川啄木も江戸の庶民も経済的に苦しくても煙草は手放せなかったようです。ところが20世紀に入ると煙草の有害性(中毒性・発がん性・心臓病リスク等)が取り上げられるようになり、日本では1978年2月18日には東京の四谷で「嫌煙権確立をめざす人々の会」が設立されました。これにちなんで、今日2月18日は「嫌煙運動の日」。今では喫煙者がすっかり減って、街の景色も目に見えて変わってきました。海外からの観光客も吸い殻が落ちていない街の風景に驚く人もいて結構なことです。

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#4881 氷下魚釣る小屋は灯りて氷鳴る根室の港まだ明けきらず

令和8年2月14日(土) 【旧 12月27日 友引】 立春・魚上氷

氷下魚《こまい》釣る小屋は灯りて氷鳴る根室の港まだ明けきらず
  ~佐藤清(昭和42年歌会始)

 コマイはタラ科の魚。アイヌ語で「小さな音のなる魚」の意味ですが、「氷下魚」という漢字が当てられ、あるいは別名カンカイ(寒海)とも呼ばれます。ともに、厳冬期に氷を割って氷下網漁をしたことからこの名があります。

260214_氷下魚釣る小屋は灯りて氷鳴る
Photo:氷下魚《コマイ》~北海道ぎょれん

 さて今日は七十二候の第3候「魚上氷(うおこおりをいずる)」。凍った川や湖が春の兆しに解け始め、割れた氷の間から魚たちが飛び跳ねるのが見えるころ。二十四節気「立春」の末候に当たります。ミラノ・コルティナ冬季オリンピックも早8日目。氷上・雪上の戦いもいよいよ熱を帯びてきました。飛び跳ねる日本選手の活躍を期待しましょう。

スケートの紐むすぶ間も逸りつつ
  ~山口誓子(1901-1994)『凍港』

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#4873 ジャンプ台を幾度飛び降り傷つきし猪谷六合雄かも我は尊ぶ

令和8年2月6日(金) 【旧 12月19日 赤口】 立春・東風解凍

ジャンプ台を幾度飛び降り傷つきし猪谷六合雄《いがやくにお》かも我は尊ぶ
  ~猪谷千春(1931-)

 今日から22日までイタリアのミラノとコルティナ・ダンペッツォにおいて第25回オリンピック冬季大会が開催されます。この地での冬季五輪は2度目です。1956年の第7回コルチナ・ダンペッツォ大会のアルペンでは圧倒的な強さで3冠に輝いたオーストリアのトニー・ザイラーがいました。そんな中、日本代表の猪谷千春はアルペン男子回転でザイラーに4秒遅れたものの銀メダルを獲得。冬のオリンピック史上初めて表彰台に日の丸が上がった記念すべき大会だったのです。

260206_ジャンプ台を幾度飛び降り傷つきし
Photo:猪谷千春と父・六合雄(1950年8月) ~Wikipedia

 千春氏が尊敬してやまない父・猪谷六合雄(1890-1986)は日本のスキー指導者であり、現在の明仁上皇陛下の皇太子時代から皇室のスキー指導をされていました。千春氏は今年95歳。まだまだご健勝で、想い出深い今回のミラノ・コルティナオリンピックも現地で観戦される予定です。ちなみに同じ北海道出身で歌手の松山千春は出生当時の猪谷千春の活躍にあやかって「千春」と名付けられたそうです。

人生も大回転のスキーヤー
  ~高橋将夫(1945-)

260206_猪谷六合雄《いがやくにお》かも我は尊ぶ
Photo:読売新聞 編集委員室

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#4835 何となき世の人事に紛れきて暮れはててこそ年は惜しけれ

令和7年12月31日(水) 【旧 11月12日 仏滅】 冬至・雪下出麦(ゆきわたりてむぎいづる)

麦の芽をもう踏みたくてたまらない
  ~櫂未知子(1960-)『貴族』

 二十四節気「冬至」の末候は七十二候の第66候「雪下出麦(ゆきわたりてむぎいづる)」。積もった雪の下で人知れず麦が芽を出す頃。せっかく芽吹いた麦を踏むとは櫂先生も酷い事をする、などと言うなかれ。「麦踏み」は霜柱による土壌の浮きを防いで根張りを良くすることと、麦の穂の伸び過ぎを抑えるために行う日本独特の風習なのです。

251231_麦の芽をもう踏みたくてたまらない
Photo:踏まれても踏まれても強くなる ~スクールブログ

 今日は大晦日。あっという間に過ぎていった一年だと思う人もいれば、長い長い一年だったと考える人もいるでしょう。長く生きていればそれぞれの年にそれぞれの思い出がありますが、辛いときも楽しいときも二度と戻ることはありません。来年も良い年になりますように。

何となき世の人事に紛れきて暮れはててこそ年は惜しけれ
  ~藤原公雄(鎌倉時代)『新後拾遺和歌集』 巻6-0572 冬歌

何となく世の人事にまぎれて忙しなく過ごしてしまった惜しい一年であったよ。

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#4822 丈高くポインセチアはありにしを声もあげずに枯れてしまひぬ

令和7年12月18日(木) 【旧 10月29日 友引】 大雪・鱖魚群(さけのうおむらがる)

猩々木挿して近づくクリスマス
  ~阿部みどり女(1886-1980)

 猩々木《しょうじょうぼく》はポインセチアの和名です。花ではなく、苞葉が猩猩(大酒飲みで猿に似た架空の動物)の顔のように真っ赤に染まったあの植物。

251218_丈高くポインセチアはありにしを
Photo:須磨離宮公園のポインセチア ~KOBE Journal

 ポインセチアの鮮やかな赤がキリストの血の色を彷彿させるためにクリスマスフラワーとも呼ばれ、この時期になるとお花屋さんのみならず、いろんなお店のショーウインドウを飾ります。しかしメキシコ原産の植物なので本当は寒さには強くありません。霜の降りるような日に外に出しておくと枯れてしまうので要注意です。今では赤だけではなく白や黄緑、ピンクや斑入りのものが楽しめるようになりました。

丈高くポインセチアはありにしを声もあげずに枯れてしまひぬ
  ~大西民子(1924-1994)『風の曼荼羅』

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