万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

北海道

#4481 あらたまの年の若水くむ今朝はそぞろにものの嬉しかりけり

令和7年1月10日(金) 【旧 一二月一一日 仏滅】 小寒・水泉動(しみずあたたかをふくむ)」

あらたまの年の若水くむ今朝はそぞろにものの嬉しかりけり
  ~樋口一葉(1872-1896)

250110_あらたまの年の若水くむ今朝は
Photo:光明の滝(仙台市泉区) ~泉西部

 今日は七十二候の第68候「水泉動(しみずあたたかをふくむ)。土の奥深く凍っていた泉が動き始める頃。二十四節気「小寒」の次候に当たります。実際の気候から言うと「小寒」が過ぎれば「大寒」。いよいよ寒さが厳しくなって、これから地中の水が凍り始める時期なのですが、今日のように寒さの底にいると少しでも春に近づきたい気持ちにはなりますよね。

凍土掘り父情の温み身をのぼる
  ~北光星(1923-2001)

追伸:
 このお正月はチェコ、オーストリア、スロバキア、ハンガリーを周遊して昨日のお昼にヘルシンキ経由で帰ってきたところです。フィンランドは日本から一番早く行けるヨーロッパと言われ、関西⇔ヘルシンキは通常9時間半で行ける航路でしたが、今はロシア上空を回避するために13時間ほどかかります。お陰でアゼルバイジャン航空の旅客機みたいに撃墜されずに無事帰国できましたが、正直言って日本のほうがよほど暖かいと思っていたけど大違い。こちらも負けないくらいの寒さでありました。旅先の紀行は明日からこのブログで。

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#4456 くれてゆく年の道さへみゆるかとおもふてばかりにてる月夜かな

令和6年12月16日(月) 【旧 一一月一六日 友引】 大雪・「鮭魚群(さけのうおむらがる)」

くれてゆく年の道さへみゆるかとおもふてばかりにてる月夜かな
  ~樋口一葉(1872-1896)

 今夜、お天気が良ければ今年最後の満月が見られる日。空気が済んでいれば月齢14.9のほぼまんまるのお月さまが昇ってくれるはずです。

241216_月光に死にゆく鮭の背びれ見つ
Photo:尻別川の鮭の遡上 ~羊蹄山とニセコ アンビシャス

 一方、七十二候では第63候「鮭魚群(さけのうおむらがる)」。二十四節気「大雪」の末候にあたります。鮭は産卵のために群れをなして生まれた川に帰ってきます。激流を上るために海の栄養をたっぷりと補給しているので、熊やオオワシ、それに人間にとっては絶好の獲物になります。それを無事くぐり抜けて産卵を終えると脂がぬけて白っぽくなりここで一生を終えます。その死骸は狐や鳥、昆虫の餌になるという無駄のない食物連鎖が行われているとか。

月光に死にゆく鮭の背びれ見つ
  ~竹内弘子 『あを』

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#4422 凍土に花の咲かずと嘆く歳はおのれが花である外はなし

令和6年11月12日(火) 【旧 一〇月一二日 先負】立冬・地始凍(ちはじめてこおる)

凍土《いてつち》に花の咲かずと嘆く歳はおのれが花である外はなし
  ~中城ふみ子(1922-1954)『花の原型』

241112_この道もやがて凍てんと歩きゆく
Photo:Weather News

 今日は七十二候の第56候「地始凍(ちはじめてこおる)」。寒気によって大地も凍り始めるといった意味。二十四節気「立冬」の次候にあたります。空気中の水分が氷の結晶となると霜が降りますが、地中の水分が凍ると霜柱ができます。いずれも土の表面に起こる現象で、朝起きて張り詰めた空気の中で霜柱を見ると、いよいよ冬がやってきたという、季節のたよりを聞くような爽やかささえ感じます。

この道もやがて凍てんと歩きゆく
  ~星野立子(1903-1984)

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#4390 酒のめば水遁火遁忍術をなすといひしがついにせぬなり

令和6年10月12日(土) 【旧 九月一〇日 赤口】寒露・鴻雁来(こうがんきたる)

旅に病んで夢は枯野をかけ廻る
  ~松尾芭蕉(1644-1694)辞世

 俳聖松尾芭蕉が亡くなったのは元禄7年10月12日。今日は330年目の「芭蕉忌」です。桃青忌・時雨忌・翁忌などと呼ばれることもあります。終焉の地は大阪御堂筋の花屋仁左衛門の屋敷(大阪市中央区久太郎町)でした。生まれは伊賀国(三重県伊賀市)であり、かの『奥の細道』の旅程450里(1768km)を踏破したという脚力から、この人は東北諸藩の動向を探る幕府隠密であるという説もありました。そういえばこんな句もありましたね。

秋深き隣は何をする人ぞ
  ~同

 なるほど、どこに忍び込んだのかと思わぬこともない。けれど、これは病床の芭蕉が亡くなる2週間前に詠んだ句でした。

241012_旅に病んで夢は枯野をかけ廻る
Photo:松尾芭蕉 ~琵琶湖大津歴史百科より

 10月12日といえば、ちょうど100年前の今日、アナトール・フランス(1844-1924)というフランスの詩人で小説家が亡くなっています。彼は批評家でもあり彼の残した数々の名言が言いえて妙の名作ばかり。その中の一つにこんな言葉がありました。

「嘘のない歴史書ほど退屈なものはない」

 確かに謎と嘘(勝手な推測?)がまったくない歴史書はおもしろくない。芭蕉忍者説も証拠がないから全否定というのもつまらないですね。

酒のめば水遁火遁忍術をなすといひしがついにせぬなり
  ~小熊秀雄(1901-1940)『小熊秀雄全集』

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#4352 妹がため貝を拾ふと茅渟の海に濡れにし袖は干せど乾かず

令和6年9月4日(水) 【旧 八月二日 先負】処暑・禾乃登(こくものすなわちみのる)

妹がため貝を拾《ひり》ふと茅渟《ちぬ》の海に濡れにし袖は干せど乾かず
  ~作者未詳 『万葉集』 巻7-1145 雑歌

妻のために貝を拾おうと茅渟の海岸で濡らした袖は、いくら干しても 乾かないよ。

240904_妹がため貝を拾ふと茅渟の海に
Photo:関西国際空港 ~泉佐野市HP

 「茅渟の海」とは現在の大阪湾の古称。もう少し範囲を狭めていうと、大阪府堺市から南、泉大津市・岸和田市・泉佐野市・泉南市の沖合で、古くから多くの魚介類が穫れる好漁場でした。特に冬場によく釣れるからか、今でもクロダイのことを「チヌ」と呼んでいます。万葉歌にあるように、昔は美しい貝が拾えるような海岸が続く風光明媚な場所だったようです。1994年9月4日、この海の沖に世界で初めての完全人口島からなる海上空港、関西国際空港(KIX)が開港しました。今日は開港30周年に当たります。今年は利用客がコロナ禍前の数字を上回るまでに回復したというニュースがあって喜ばしい限りですが、日本人より海外の利用客のほうが伸びているのはやはり円安のせいでしょうか。

異国語もまじる空港秋暑し
  ~後藤軒太郎(1919-2008)

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