万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

和歌山

#4633 ゴルバチョフをののしる会話とぎれなくシベリア鉄道の車内にききたり

令和7年6月12日(木) 【旧 5月17日 先負】 芒種・「腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)」

ゴルバチョフをののしる会話とぎれなくシベリア鉄道の車内にききたり
  ~鑓水青子(1976-)「真冬ロシア」

250612_この雪が融けきるころは白夜ならむ
Photo:サンクトペテルブルクの白夜 ~RUSSIA BEYOND

 今日は「ロシアの日」。エリツィン大統領によって1998年に改称されたロシアの祝日ですが元々は1990年のこの日にロシア・ソビエト連邦社会主義共和国で国家主権宣言が採択されたことを記念し、「主権宣言採択の日」になっていたものです。冒頭の短歌は鑓水《やりみず》さんがロシアで暮らしていた2006(平成18)年の歌。時代はエリツィンを経て既にプーチンが大統領になって6年が経過していました。ペレストロイカからソ連邦の崩壊につなげたゴルバチョフの政治姿勢に対する国民の評価が様々であったことがわかります。

ソビエトの名の残りたる地球儀の国後辺りの 破線をなぞる
  ~林龍三 日本歌人クラブ 『風』2018年 January

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#4569 胸は少女、腰は母とも人は言ふ〈ミロのヴィーナス〉の完璧なる美

令和7年4月8日(火) 【旧 3月11日 先勝】 清明・「玄鳥至(つばめきたる)」

胸は少女、腰は母とも人は言ふ〈ミロのヴィーナス〉の完璧なる美
  ~悟桐学《ごとうまなぶ》

 ヘレニズムの彫刻「ミロのヴィーナス」はギリシャ神話の女神アプロディーテの像といわれ、作者は紀元前2世紀頃の彫刻家アンティオキアのアレクサンドロスであろうと考えられています。

250408_胸は少女、腰は母とも人は言ふ
Photo:ミロのヴィーナス(ルーヴル美術館) ~くるりの風景画

 この大理石像が発見されたのは1820年の今日4月8日のことでした。エーゲ海にあるミロス島の小作農が発見したことから「ミロのヴィーナス」と呼ばれています。発見後しばらくは隠されていましたが、トルコの役人に発見されて没収されました。その後フランスが買い取って、現在はルーヴル美術館で管理されています。この像がルーヴルを出たのはたった一回だけ。1964年に東京国立西洋美術館と京都市美術館で行われた特別展示のみでした。小説家の佐藤春夫が東京でこれを見た時に詠んだ俳句が残されています。

影ふかくすみれ色なるおへそかな
  ~佐藤春夫(1892-1964)

250408_影ふかくすみれ色なるおへそかな
Photo:実用数学技能検定「数検」

 この「おへそ」には重要な意味が隠されているのをご存知でしょうか。驚くべきことに、この像の足元からおへそまでと頭頂部までの長さ、それにおへそから首までと頭頂部までの長さ、どちらの比率も、1対1.618となっていて見事な黄金比になっているのです。冒頭に掲げた悟桐学の短歌にある「完璧なる美」もそのことを指しているのは明らかです。
 ちなみに佐藤春夫がこの像を鑑賞したのは1964年5月6日。夕刻、書斎で「一週間自叙伝」というラジオ番組を録音中に心筋梗塞を起こして帰らぬ人となりました。享年72歳。テープに残された最後の言葉は「私は幸いにして…」でした。

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#4505 あふさかの関をや春もこえつらむ音羽の山のけさはかすめる

令和7年2月3日(月) 【旧 1月6日 赤口】 立春・東風解凍(はるかぜこおりをとく)

あふさかの関をや春もこえつらむ音羽の山のけさはかすめる
  ~橘俊綱(1028-1094)『後拾遺和歌集』 巻1-0004 春歌上

逢坂の関を春は越えてやってきたようだ。音羽の山にも今朝は春霞がかかっている。

 昨日の節分をもって季節は一区切り。明けて今日は「立春」。二十四節気も一廻りして振り出しに戻りました。「立春」は別名「正月節」とも呼ばれ、『暦便覧』には「春の気立つを以って也」と記されています。暦の上ではこの日から「立夏」の前日までが春です。ただし、南岸低気圧の発生は立春から後に多くなり、寒さや荒れた天気が続くので安心はできません。記録的な大雪災害もここからあとに発生する例が多いので要注意です。もちろん梅がほころび始めるなど明るい春の兆しが見え始めるのもこの時季です。

250203_あふさかの関をや春もこえつらむ
Photo:春霞(早春の琵琶湖) ~新治の風景ギャラリー

 橘俊綱は機内との境である逢坂の関を越えて春がやってきたと言っていますが、長く奈良に住んでいた俳人の右城暮石《うしろぼせき》(出身は高知県)は和歌山県の空と海から春が来たと詠んでいます。

和歌山県天から海から春来るよ
  ~右城暮石(1899-1995)『上下』

Youtube:メンデルスゾーン「春の歌」(無言歌集 第5巻-6)


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#4490 雲を出でて我にともなふ冬の月風や身にしむ雪やつめたき

令和7年1月19日(日) 【旧 一二月二〇日 先勝】 小寒・雉始鳴(きじはじめてなく)

雲を出でて我にともなふ冬の月風や身にしむ雪やつめたき
  ~明恵(1173-1232)『玉葉和歌集』 巻6-0996 冬歌

雲を出て、私について来る冬の月よ。風が身にしみ、雪が冷たいではないか。

 紀伊国有田郡石垣庄出身で、華厳宗中興の祖・明惠上人が寛喜4(1232)年1月19日に遷化したことから、今日は「明恵上人改開山忌」とされ明恵上人が開いた高山寺で上人を偲ぶ法要が営まれます。

250119_雲を出でて我にともなふ冬の月
Photo:国宝 明恵上人樹上坐禅像(部分)高山寺藏

 また明恵上人は臨済宗の開祖である栄西(1141-1215)からお茶の種子を栂尾や宇治・五ケ庄大和田の里に蒔き、茶の普及のきっかけを作ったことでも知られています。歌人としても多くの和歌を残していますが、月を題材にしたものが目立ちます。中でも明恵の代表作と言うか、最もよく知られているのは、次の歌。月の光が眩しいくらいに明るかったのでしょうね。

あかあかやあかあかあかやあかあかやあかあかあかやあかあかや月
  ~明恵上人(1173-1232)『上人集』

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#4459 白菜に春菊が入り魚が入り大血縁となりゆける鍋

令和6年12月19日(木) 【旧 一一月一九日 大安】 大雪・「鮭魚群(さけのうおむらがる)」

春菊の湯をとほしたる香りかな
  ~染谷秀雄(1943-)

241219_白菜に春菊が入り魚が入り
Photo:春菊 ~シンクヘルスブログ

 春菊はキク科シュンギク属の植物で、葉の形や香りが菊にそっくりなのに黄色い花が咲くのは春。したがって俳句でも春の季語として扱われます。原産地は地中海沿岸。欧米では観賞用植物として栽培されていますが、中国や韓国など東アジアでは若い茎葉が食用にされています。日本には室町時代に渡来したとされ、今では鍋料理に欠かせない冬野菜となっています。花より団子的発想で言うと冬の季語にしてもらいたいくらいです。ちなみに関西では「菊菜」と呼ぶことのほうが多いようです。

白菜に春菊が入り魚が入り大血縁となりゆける鍋
  ~池田はるみ(1948-)『ガーゼ』

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