万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

埼玉

#4658 蚊帳に一つほたる放ちてほの青き夢見る子ども小暑の頃か

令和7年7月7日(月) 【旧 6月13日 赤口】 小暑・「温風至(あつかぜいたる)」

蚊帳に一つほたる放ちてほの青き夢見る子ども小暑の頃か
  ~喜夛隆子

 今日は二十四節気11番目の「小暑」。通常であれば「梅雨明けが近づき暑さが本格的になる頃」と説明してもいいのですが、東海以西では既に記録的な早さで梅雨が明け、すでに本格的な真夏に突入しています。

250707_夜歩きの小暑の堤隅田川
Photo:AllAbout 暮らし歳時記

 もっと異例な気候現象として、「梅雨入りなし」という年もあるのです。これは小暑に入って2日経っても梅雨入り判定ができない時と定義されていて、1963年の四国・近畿地方がこれに当てはまります。ただしこの年に梅雨がなかったのではなく、4月下旬から雨の日が続いていたために気象庁が梅雨入りの日を特定できなかったからだそうです。

夜歩きの小暑の堤隅田川
  ~網野月を(1960-)

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#4595 新聞の兜を父は折らんとす今度五十の息子のために

令和7年5月5日(月) 【旧 4月8日 大安】 立夏・「蛙始鳴(かわずはじめてなく)」

新聞の兜を父は折らんとす今度五十の息子のために
  ~藤島秀憲(1960-)

 発達障害の息子のためにお父さんが兜を折ろうとしているのかと思ったが、その逆でした。もうすぐ50歳になる息子とは作者の藤島秀憲氏。そして新聞紙で兜を折っているのは認知症の父。なんとも複雑な「こどもの日」の情景です。

250505_新聞の兜を父は折らんとす
Photo:兜飾り ~人形工房ひととえ

 さて、今日は二十四節気の第7「立夏」。『暦便覧』には「夏の立つがゆへ也」と記されています。日本の夏の平均気温はこの100年で約1.5℃上昇しているといいますが、肌感覚ではそんなに生易しい上昇ではありません。特に35℃以上の猛暑日の年間日数については1800年~1899年までの大阪では10日以上あった年は一度もありませんでしたが、1900年からの100年間には10回ありました。更に2000年からはたった24年間のうち20回に達しています。残念ながら今年も熱中症で倒れる人の数は増えるはず。自分がその中に入らないように気をつけないといけません。

底知れぬ井戸をのぞけり夏立つ日
  ~桂信子(1914-2004)『草影』

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#4546 枕あげてわが見たる時フリージヤのすがしき花は光りけるかも

令和7年3月16日(日) 【旧 2月17日 赤口】 啓蟄・「菜虫化蝶(なむしちょうとなる)」

うまさうなコップの水にフリージヤ
  ~京極杞陽《きよう》(1908-1981)

250316_うまさうなコップの水にフリージヤ
Photo:フリージア ~花毎《はなごと》

 フリージアはアヤメ科フリージア属の球根植物。菖蒲にも、水仙にも似ているところから「菖蒲水仙」とも呼ばれます。他にも花の色から「浅黄水仙」、甘い香りから「香雪蘭」など様々な和名をつけられています。「フリージア」の名は南アフリカで最初に発見したエクロンという植物学者がフレーゼという親友の名を付けたことにあるようです。一昨年の朝ドラ「らんまん」でも、第一発見者に命名権があると言っていましたね。開花期は2月から6月くらい。短歌、俳句を探してみると、何故かこの花は病床の枕元に飾られている例がたくさんありました。

枕あげてわが見たる時フリージヤのすがしき花は光りけるかも
  ~三ヶ島葭子《みかじまよしこ》(1886-1927)

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#4541 常よりも父はやさしくふるまいて子等らと過ごしぬ空襲前夜

令和7年3月11日(火) 【旧 2月12日 先勝】 啓蟄・「桃始笑(ももはじめてさく)」

三月十日も十一日も鳥帰る
  ~金子兜太 「海程」2011年10月号

 金子兜太の句にある「三月十一日」とは2011年3月11日、三陸沖に発生した地震と津波による東日本大震災のことを指しています。これはまだまだ私達の記憶に新しいのですぐにピンとくる日付ですね。では「三月十日」とは何でしょう。

250311_三月十日も十一日も鳥帰る
Photo:空襲で焼け野原になった東京 ~YAHOO! Japan ニュース

 ちょうど80年前の1945年3月10日、東京下町地区を目標にB29からおよそ1,700トンもの焼夷弾が投下された「東京大空襲」の日。ちなみに東日本大震災による死者15,723人(震災関連死を含めず)に対して東京都心部への無差別爆撃はこの日を含めて計106回行われており、遺体が確認された数だけでも10万5400人。もちろん東京以外の地方都市にも大規模な空襲がありましたが、今はそれを知る人も少なくなってしまいました。これも日本人の記憶としては忘れてはならない悲しみの一つです。

常よりも父はやさしくふるまいて子等らと過ごしぬ空襲前夜
  ~赤音崎爽 『昭和二十年大阪大空襲~我が祖母の6ヶ月間の記憶』より

250311_子等らと過ごしぬ空襲前夜
Photo:第2次大阪大空襲後の大阪築港 ~常夏通信

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#4531 われ寂し青き李の花に似て弥生の空のもとに悩める

令和7年3月1日(土) 【旧 2月2日 先負】 雨水・草木萌動(そうもくめばえいずる)

われ寂し青き李の花に似て弥生の空のもとに悩める
  ~三ケ島葭子(1886-1927)

 三ケ島葭子《みかじまよしこ》は明治から大正にかけて生きた埼玉県出身の女流歌人。与謝野晶子に師事して生涯に6000首余りの短歌を残しています。

250301_われ寂し青き季の花に似て
Photo:李《すもも》の花と蕾 ~きまぐれプラネタリウム

 もとは旧暦三月の別名でもあった「弥生」の語源は「草木弥生月《くさきいやおいつき》」を略したもの。「弥《いや》」は「いよいよ」という意味なので、草木がいよいよ生い茂る月だという意味です。なんとなく春らしくうきうきした気分にさせられますが、人事異動や退職、卒業の季節でもあります。冒頭の短歌はどちらかと言うとそんな寂しさを詠んだものですね。明るい方の弥生の俳句も一句。

愛は地に満てり弥生の軒すゞめ
  ~石塚友二(1906-1986)

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