万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

大分

#3983 ながらえて甲斐ある命今日はしも しこの御楯と我なりましを

令和5年9月2日(土) 【旧 七月一八日 赤口】・処暑・天地始粛(てんちはじめてさむし)

ながらえて甲斐ある命今日はしも しこの御楯と我なりましを
  ~重光葵(1887-1957)

 「しこ(醜)」は「役立たず」の意味で『万葉集』の時代から使われている言葉です。

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Photo:ミズーリ艦上で降伏文書に署名する重光葵外務大臣(昭和20年9月2日)

 我が国が1945年8月15日終戦の日としているのに対して、連合国各国は同9月2日を「対日戦争勝利の日(VJ day)」としています。東京湾に乗り入れた米戦艦ミズーリ号上、日本を代表して外務大臣重光葵《しげみつまもる》が降伏文書に署名したのはよく知られていますが、同じ日にミクロネシアのパラオやトラック諸島、マリアナ諸島のパガン島、北マリアナ諸島のロタ島、フィリピンビサヤ諸島のパナイ島など、各地の戦場で現地の司令官が米艦上や飛行場などで降伏文書に署名していたことはご存知でしょうか。率いていた多くの将兵が戦死した暁に降伏文書に署名する指揮官の思いは如何ばかりだったでしょう。

願わくば御国の末の栄え行きわが名さげすむ人の多きを
  ~同

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#3727 思ひ出づる時はすべなみ豊国の由布山雪の消ぬべく思ほゆ

令和4年12月20日(火) 【旧 一一月二七日 先勝】・大雪・鮭魚群(さけのうおむらがる)

思ひ出づる時はすべなみ豊国の由布山雪の消ぬべく思ほゆ
  ~作者未詳 『万葉集』 巻10-2341 相聞歌

恋しい人を思う時はどうしようもなく、豊後国の由布岳の雪のように消え入りそうに切なくなってしまいます。

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Photo:にちりん83号と由布岳(大分県別府市)~鉄道原色風景(2013年12月22日)

 昨日は日本海側の各地で記録的な大雪がありましたが、今週後半には太平洋側でも雪が降ることが予想されています。私が子供の頃なら大阪でも雪が降ったり水たまりが凍っていたりということがよくあったのですが、近年は12月にそんな光景を見ることはほとんどありませんでした。人間の責任なのか、地球の自然周期なのか、原因は存じませんが温暖化は確かに進んでいるように思えます。それと関係があるのかないのか、昨日のような記録的な大雪が12月に降るのは珍しいことです。この寒波はしばらく続きそうなので、特に北国や日本海側の皆さんに大きな被害が出ないようにお祈りしています。

ゆく先は雪の吹雪に閉じ込めて雲に分けいる滋賀の山越え
  ~京極為兼 『風雅和歌集』 巻8-0822 冬歌

ゆく先の道は雪の吹雪に遮られて、まるで雲の中に分け入るような滋賀の山越えだよ。

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#3485 ともに陥つる睡りの中の花みずき……他一首

令和4年4月22日(木) 【旧 三月二二日 赤口】・穀雨・葭始生(あしはじめてしょうず)

ともに陥つる睡りの中の花みずききみ問わばわれはやさしさをこそ
  ~永田和宏(1947-)『無限軌道』

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Photo:ハナミズキ ~ウェザーニュース

 ハナミズキの原産地は北米。日本にやって来たのは1912年ですから、まだ110年しか経っていません。1912(大正元)年に尾崎行雄がワシントンDCに寄贈したポトマック川の桜の返礼として贈られたのが日本に初めて入ったハナミズキ。これが1915(大正4)年ですから意外に日本での歴史は浅い樹木です。別名はアメリカヤマボウシ。ちょうどソメイヨシノが散ってしまった後に咲き始めます。我が家の近くの環濠の歩道には堀沿いに桜並木、車道側にハナミズキの並木を植えてあって、この時季は季節に合わせて上手にバトンタッチしてくれています。

はなみづき恋のつづきの家族にて咲き盛る白が痛くてならぬ
  ~川野里子(1959-)『青鯨の日』

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#2917 すみのぼる心や空をはらふらむ ・・・他一首と俳句

令和2年10月1日(木) 【旧 八月十五日 仏滅】秋分・蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)

美しき雨ふりいでし雨月かな  ~倉田紘文(1940-2014)

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 今日から10月。ですが旧暦(陰暦)でいうと八月十五日、いわゆる十五夜です。さて今夜のお天気はどうでしょうか。幸いほとんどの地区では好天に恵まれそうですが、怪しいところもあるかも知れません。しかし、万一雨に祟られても俳句には「雨月《うげつ》」と言う季語があります。大分出身の俳人、倉田紘文《くらたこうぶん》の句のように、雨ならば雨なりに静かに降る秋雨を愛でる余裕がほしいところ。

八月十五夜明月の心をよめる
すみのぼる心や空をはらふらむ雲のちりゐぬ秋の夜の月
  ~源俊頼 『金葉和歌集』(二度本)巻3-0188 秋歌

澄み昇る心が空を払うのだろうか。雲の塵もない秋の夜の月よ。

 この歌のようにくっきりと雲ひとつなく拝めるお月さまはもちろん結構ですが、それでは開けっぴろげすぎるかなと思わないでもありません。ほんとうは薄いベールのような雲に見え隠れするくらいがありがたくてちょうどいいような気がします(個人のわがままな感想です)。

めぐりあひて見しやそれともわかぬまに雲隠れにし夜半の月かげ
  ~紫式部 『新古今和歌集』 巻16-1499 雑歌上

久々にめぐり合ったのに、その人とはっきり気づかぬうちに、夜半の月が雲に隠れるように去っていった人よ。

 小倉百人一首の57番では結句が「夜半の月かな」とされています。

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#2623 荒熊のすみける谷をとなりにて ・・・他一首

令和元年12月12日(木) 【旧 十一月十六日 友引】大雪・熊蟄穴(くまあなにこもる)

荒熊のすみける谷をとなりにて都にとほき柴の庵かな
  ~藤原良経 『秋篠月清集』 十題百首

荒々しい熊が住むような谷のそばにある、都とはほど遠い柴葺きの庵だよ。

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Photo:ツキノワグマ

 今日は七十二候の第62候「熊蟄穴(くまあなにこもる)」。森のくまさんもそろそろ冬眠の準備を始めなければならない厳しい季節が始まります。最近はドングリなどの食べ物が無くなったからか、あるいは楽に食料を調達できる方法を覚えてしまったからなのか、野生の熊が人里に出てきては悪さをする事件も増えています。もちろん「悪さ」というのは人様の視点で言っているのですが、とにかく冬眠前の熊は大量の食物を摂取する必要があるので危険には違いありません。冒頭の和歌を読んでみると思うのですが、もともと熊が里に出てきたのではなくて、人間のほうが熊の縄張りを侵して住みはじめたというのが正解なのでしょうね。

春の星座になりそこなった白熊が眠るよ春の星座の下で
  ~ひぐらしひなつ 『きりんのうた。』

 おおぐま座とかこぐま座はありますが、シロクマ座という星座はありません。現代短歌にしか登場しない白熊の正式名はホッキョクグマ。ヒグマやツキノワグマと同じクマ科クマ属です。こちらは人里に現れることがないとお思いでしょうが、ロシアでは近年、数十匹のホッキョクグマが市街地に出没して非常事態宣言が出されることがあるそうです。やはり気候変動のせいなのでしょう。クマは雑食系動物ですが、ホッキョクグマはほとんど肉食オンリーなので危険度はツキノワグマの比ではないようです。

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Photo:ロシアの工業都市ノリリスク郊外の路上を歩き回るホッキョクグマ(2019年6月17日)

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