万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

富山

#4516 世の中に恋といふ色はなけれどもふかく身にしむものにぞありける

令和7年2月14日(金) 【旧 1月17日 大安】 立春・魚上氷(うおこおりをいずる)

バレンタイン・デー暖炉に薔微の木を焚けり
  ~角川春樹(1942-)

250214_世の中に恋といふ色はなけれども
Photo:聖ヴァレンティヌス ~Whats-Your-Sign.com

 そもそも本当の「バレンタインデー」ってなんだろうと思って調べてみました。西暦3年のローマ帝国時代、時の皇帝クラウディウス・ゴティクスは妻を残して出征する兵士の士気が下がる事を理由に、兵士の婚姻を一切禁止しました。そんな兵士たちを憐れんで密かに結婚式を行ったのがヴァレンティヌスというキリスト教の司祭でした。これを知った皇帝は直ちにやめるように命令したのですが、ヴァレンティヌスは毅然として屈しなかったため、とうとう処刑されてしまいます。彼の殉教が西暦269年2月14日。確かにエピソードは恋愛や結婚とは通じるものの、女性からの愛の告白とかチョコレートとかは関係なかったようですね。

世の中に恋といふ色はなけれどもふかく身にしむものにぞありける
  ~和泉式部(978?-1030?)『後拾遺和歌集』 巻14-0790 恋歌4

世の中に恋という色はないけれども、深く身に染みるものではあるのよ。

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#4395 ショパンより後に生まれし仕合に嬰ハ短調作品64番の2

令和6年10月17日(木) 【旧 九月一五日 大安】寒露・菊花開(きくのはなひらく)

ショパンより後に生まれし仕合《しあはせ》に嬰ハ短調作品64番の2
  ~宮英子(1917-2015)『幕間(アントラクト)』

241017_ショパンより後に生まれし仕合に
Photo:2010年、ショパン生誕200年に発行された20ズロチ紙幣 ~AFP News

 今日はピアノの詩人、フレデリック・ショパン(1810-1849)の没後175年目にあたります。ポーランドの有名人といったらこの人の名しか思い浮かばないといえばポーランドの人に大変失礼ですが、同国最大の空港の名前はワルシャワ・ショパン空港ですし、紙幣にも彼の肖像が採用されていましたから、ポーランドが誇る偉人の一人であることは間違いないでしょう。ショパンは4歳からピアノを習い始めると、わずか7歳でモーツァルトやベートーヴェンと比較されるほどの演奏を披露しただけでなく、2つのポロネーズを作曲し出版されるなどの神童ぶりを発揮しています。この年齢で比較するならモーツァルトを上回る才能だったと言えそうです。

はて今日はシヨパンの忌かな尾花散る
  ~藤沢樹村(1924-)

Youtube:ショパン ワルツ第7番 嬰ハ短調 作品64-2


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#4358 月草のうつろひやすく思へかも我が思ふ人の言も告げ来ぬ

令和6年9月10日(火) 【旧 八月八日 先負】白露・草露白(くさのつゆしろし)

月草のうつろひやすく思へかも我が思ふ人の言《こと》も告げ来ぬ
  ~大伴坂上大嬢 『万葉集』 巻4-0583 相聞歌

露草のように移り気だからですか。私が想う人は言葉もかけてくれないのは。

240910_月草のうつろひやすく思へかも
Photo:ツユクサ ~季節の歩き方

 大伴坂上大嬢《おおとものさかのうえのだいじょう》は家持の従妹にあたり、都が恭仁京に遷った天平12年頃に家持の妻になったと考えられています。この歌に詠まれた「月草」とは今で言う一年生草本のツユクサのこと。月草が転じてツユクサになったという説と、朝咲いた花が昼間にはしぼむ儚さを朝露を連想させて露草と呼ばれるようになったという説があります。他に蛍草とも呼ばれ、花言葉は「恋の心変わり」。秋の季語です。

螢草きそひ摘む子や今朝の秋
  ~佐野青陽人(1894-1963)『天の川』

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#4348 二百十日の雨瀧のごとくにおちたれば海のただなかに島は濡れゐる

令和6年8月31日(土) 【旧 七月二八日 仏滅】・処暑 「天地始粛」(てんちはじめてさむし)

二百十日の雨瀧のごとくにおちたれば海のただなかに島は濡れゐる
  ~橋本徳壽(1894-1989)『竹院集』

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Photo:越中富山の伝統行事「おわら風の盆」(2023年9月1日) ~毎日新聞デジタル

 「二百十日」は雑節の一つで、立春から数えて210日目の日を指します。例年なら9月1日になることが多いのですが、今年は閏年なので、今日8月31日が二百十日にあたります。昔から暴風雨や台風の災害が多い厄日として農家の人達が警戒すべき日とされていました。台風10号はそのお約束どおり西日本の各地を蹂躙しながら進んでいますが、なぜか台風の中心から離れた関東が大雨という変則台風です。さて、二百十日や二百二十日の頃には「風の盆」や「風鎮祭」と呼ばれる風祭りが伝統的に行われてきました。有名な越中八尾の「おわら風の盆」の開催は明日9月1日から3日まで。無事に行われることを祈ります。

風の盆三日三晩の後豪雨
  ~福田蓼汀(1905-1988)『秋風挽歌』

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#4334 妹が袖我れ枕かむ川の瀬に霧立ちわたれさ夜更けぬとに

令和6年8月17日(土) 【旧 七月一四日 友引】・立秋 「蒙霧升降」(ふかききりまとう)

妹が袖我れ枕かむ川の瀬に霧立ちわたれさ夜更けぬとに
  ~大伴家持(718-785)『万葉集』 巻19-4163

妻の衣の袖を枕にしよう。川の瀬に霧よ立ちわたっておくれ、夜の更けない内に。

240817_妹が袖我れ枕かむ川の瀬に
Photo:三更の朝 ~PHOTOHITO By シモフリ

 今日は七十二候の第39候「蒙霧升降」(ふかききりまとう)。二十四節気「立秋」の末候にあたります。冒頭の歌は大伴家持が織姫を迎える牽牛の立場で詠んだ七夕の歌です。濃い霧が天の川をわたってくる織姫を包み隠してくれるようにというメルヘンです。旧暦7月はすでに秋。七夕も秋の行事でした。そして「霧」も俳句では秋の季語。残暑厳しい日が続きますが、視界が遮られるような霧が立ち込めるようになればもう秋ですね。

舟べりの霧しづかなる水面かな
  ~飯田蛇笏(1885-1962)『山廬集』

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