万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

山口

#4747 国よりは党を重んじ党よりも身を重んずる人の群れ哉

令和7年10月4日(土) 【旧 8月13日 友引】 秋分・水始涸(みずはじめてかる)

戊申紀元節
憲政施行二十年
此間更見國光宣
死餘老骨傾杯酒
恩賜館中會衆賢

  ~伊藤博文(1841-1909)

【訓読】
憲政施行二十年
此の間更に見る、国光の宣《のた》ぶるを
死余の老骨、杯酒を傾け、
恩賜館中、衆賢に会す。

【通釈】
立憲政治が行われて二十年、
この間、わが国の威光が広まるのを目てきた。
今日のめでたい日、死を待つばかりの老骨も杯を傾けて酒を飲み、
ここ恩賜館に集まってくれた賢人たちに会って楽しもう。

 詩題の「戊辰紀元節」は明治41(1908)年に行われた紀元節(2月11日)の集い。時の総理大臣は第12代西園寺公望でした。初代首相はもちろん伊藤博文ですが、伊藤はその後も第5代、第7代、第10代と併せて4度にわたって総理に任じられています。この漢詩には憲政以後、我こそが我が国の隆盛を実現してきたのだという自負が垣間見えています。

251004_国よりは党を重んじ党よりも
Photo:NHKニュース(2025年9月21日)より

 それから117年。今日は自由民主党の総裁選の投開票が予定されています。少数与党に落ちぶれたとはいえ、今日選ばれる自民党総裁が、おそらくはそのまま第104代内閣総理大臣になるのでしょう。街頭インタビューで「誰がなってもいっしょでしょ」と答える無関心な人もいるようですが、それは大違い。党員は「改革」を言うだけの人と実行できる気概のある人をちゃんと見極めて一票を投じてほしいものです。

国よりは党を重んじ党よりも身を重んずる人の群れ哉
  ~尾崎行雄(1858-1954)

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑

#4733 音たてて茅がやなびける山のうへに秋の彼岸のひかり差し居り

令和7年9月20日(土) 【旧 7月29日 大安】 白露・玄鳥去(つばめさる)

秋彼岸近づく経をよみ習ふ 
  ~中川宋淵(1907-1984)

250920_秋彼岸近づく経をよみ習ふ
Photo:常泉寺(神奈川県大和市)の彼岸花 ~4travel.jp

 「暑さ寒さも彼岸まで」とも言いますね。彼岸とは雑節のひとつで、春分または秋分を中日として前後3日を合わせた7日間をいいます。俳句に詠まれる「彼岸」は春の季語なので、秋の場合は「秋彼岸」とするか、別に秋の季語を入れなければなりません。今年の秋のお彼岸は23日ですから今日20日が彼岸の入り。日蓮上人曰く、この期間は善行、悪行ともに過大な果報を生じるので、悪事は止め、善行に精進するようにと勧めています。7日間くらいのことですから悪事は企まないようにしばらくは我慢しましょう。

音たてて茅がやなびける山のうへに秋の彼岸のひかり差し居り
  ~斎藤茂吉(1882-1953)『ともしび』

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑

#4650 夕暮れのゼブラゾーンをビートルズみたいにあるくたった一人で

令和7年6月29日(日) 【旧 6月5日 仏滅】 夏至・「菖蒲華(あやめはなさく)」

夕暮れのゼブラゾーンをビートルズみたいにあるくたった一人で
  ~木下龍也(1988-)『つむじ風、ここにあります』

250629_夕暮れのゼブラゾーンをビートルズ
Photo:アルバム『ABBY ROAD』 のジャケット写真

 ビートルズを知らない世代の人も「アビー・ロード」のジャケット写真は見たことがあるでしょう。ビートルズといえば、もう一つ有名な報道写真を思い出します。ビートルズが初めて日本にやってきたのは1966年の今日6月29日のこと。ハッピ姿で手を振りながら、日航機のタラップから下りてくる報道写真です。この時の熱狂的なファンは私よりもう少し上の世代。中二だった当時の私にはあまり関心がありませんでした。

250629_Yesterday is history.
Photo:ビートルズがやってきた1966年6月29日(羽田空港)~GIZMODO

 私自身がビートルズにハマりだしたのはもっとあと、大学生になってからでした。今では彼らのアルバムすべてを持っているほど聴き倒したものです。時により一番推しの曲はころころと変わりましたが、やっぱり最後にたどり着いたのは「イエスタディ」です。ビートルズの歌詞とは関係ありませんが、こんな言葉をインターネットで見つけてメモしていたので書いておきます。昨日の思い出は大切だけど、今日と明日をもっと大切にするために。

Yesterday is history. 
Tomorrow is mystery. 
Today is a gift. 
That’s why it is called the present.
  ~Alice Morse Earle (1851-1911)

昨日は歴史。
明日は神秘。
今日は天からの贈り物。
だから今日は「プレゼント」と呼ばれているのです。
  ~アリス・モース・アール

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑

#4573 痛ましき原の古城に来て見れば一もと咲ける白百合の花

令和7年4月12日(土) 【旧 3月15日 大安】 清明・「鴻雁北(こうがんかえる)」

痛ましき原の古城に来て見れば一もと咲ける白百合の花
  ~新村出(1876-1942)『重山集』

250412_痛ましき原の古城に来て見れば
Photo:「島原の乱図屏風」を再現したジオラマ(天草四郎ミュージアム

 「原の古城」とは寛永15年の「島原の乱」で一揆軍が立て籠もった原城のこと。一揆軍の盟主となった天草四郎時貞が戦死した1621年の今日4月12日(寛永15年2月28日)に終結しました。キリシタンの弾圧が勃発の要因とされていますが、「島原・天草一揆」とも呼ばれるように、実は島原藩主松倉勝家による過酷な年貢取り立てから発生した農民の反乱でもありました。原城の一揆軍3万7千人は全滅しましたが幕府軍も8千人以上の死傷者を出しています。幕府はこれを重く見て島原藩は改易、松倉勝家は切腹を許されず斬首となっています。

潮に映る十字架の前に浮ぶ鳰
  ~水原秋櫻子(1892-1981)

 ※鳰《にお》は水鳥カイツブリのこと。

250412_潮に映る十字架の前に浮ぶ鳰
Photo:原城跡の海を見つめる石像 ~原城の宿 城

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑

#4529 如月に雪の隙なく降ることはたまたま来ます君遣らじとか

令和7年2月27日(木) 【旧 1月30日 赤口】 雨水・霞始靆(かすみはじめてただよう)

如月に雪の隙《ひま》なく降ることはたまたま来ます君遣《や》らじとか
  ~良寛(1758-1831)

二月なのに雪が絶え間なく降るということは、たまたま来てくれるあなたを帰らせないためでしょうか。

250227_如月に雪の隙なく降ることは
Photo:雪の五合庵(良寛さんの庵)~日々是好日

 もともとの「如月《きさらぎ》」は言うまでもなく旧暦の二月のことを指していました。従って良寛さんの歌は今で言う3月頃ということになります。明治になって現在のグレゴリオ暦が採用されてからは、もちろんそのまま新暦2月を指しても差し支えありません。ということで明日2月28日は旧暦の如月朔日《ついたち》でもあり新暦如月の晦日《みそか》でもあるという正真正銘の如月の日。次の福田蓼汀《りょうてい》の俳句は新暦の如月ですが、こちらも雪の句です。ひどい寒波は一旦通り過ぎましたが、やはり2月・3月の早春に雪はつきもののようですね。

きさらぎや深雪に沈む林檎園
  ~福田蓼汀(1905-1988)『山火』

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑
記事検索
🎼 I love music ♪

読んでくれたひと(感謝)
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

過去記事すべて見られます▼
📖私の著書です
【電子書籍・紙書籍】


  • ライブドアブログ