万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

山梨

#4964 メーデーを抜け来しならむこの沼に老ひたる母が映されてゐる

令和8年5月1日(金) 【旧 3月15日 大安】 穀雨・牡丹華

メーデーを抜け来しならむこの沼に老ひたる母が映されてゐる
  ~寺山修司(1935-1983)
 注:文法的には「老ひる」は誤りで「老いる」が正しいのですが、原文のとおり掲載しています。

260501_メーデーを抜け来しならむこの沼に
Photo:米国のメーデー ~Oggi.jp


 メーデーは1886年5月1日、アメリカの労働者団体がシカゴを中心に「8時間労働制」の要求のために統一ストライキを行ったのが起源だとか。昭和の大阪に育った私には「メーデー」と聞けば、中之島や扇町公園に多数の労働組合員が集結して大きな幟や旗、プラカードを掲げてデモ行進という、なんだか子供の目には異様な光景だったことが思い出されます。当時は賃上げ要求のストライキで国鉄や私鉄がストップする事も度々あったものです。今ではメーデーの集会もずいぶん穏やかになって昔の面影はありません。労働者を搾取する資本家に抗議するというよりも、政治的主張を行う集会に変わってきたような気がします。

メーデーや中国略字坐り悪し
  ~奈良文夫(1936-2018)
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#4933 宵闇に底ごもる鈍き音のして春雷と気づくにかなり間ありき

令和8年3月31日(火) 【旧 2月13日 友引】 春分・雷乃発声

春の雷虹より出でしこゑならむ
  ~飯田龍太(1920-2007)


260331_春の雷虹より出でしこゑならむ
Photo:
スーパーJチャンネル/天気チーム(テレビ朝日) 

 「春分」の末候は七十二候の第12候「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)」。遠くで雷の音がし始める頃。3月始めの「啓蟄」の頃に鳴る雷は、冬眠していた虫たちがその音に驚いて土から出てくるというので、「虫出雷《むしだしかみなり》」と呼ばれます。それに対し「春分」以降、寒冷前線の通過に伴って鳴る雷を「春雷」と呼びます。夏の雷雨とは違い、一発二発轟いて止んでしまうことが多いようです。

宵闇に底ごもる鈍き音のして春雷と気づくにかなり間ありき
  ~悟桐学 「あおぎり」

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#4799 草むらにまろべる胡桃の黒き実を一人の青年が跨ぎてゆけり

令和7年11月25日(火) 【旧 10月6日 先負】 小雪・虹蔵不見(にじかくれてみえず)

草むらにまろべる胡桃の黒き実を一人の青年が跨ぎてゆけり
  ~山崎方代(1914-1985)『方代』

251125_胡桃踏んでしばし足裏いきいきす
Photo:認知症予防コラム

 クルミの花は5月から6月頃にかけて開花し、食材としてのクルミが採れるのは10月から12月。日本では縄文時代の遺跡にもクルミの実が発見されていることから、相当古い時代から食材に利用されていたことが確認されています。また平城京から出土した木簡にクルミが献上されていることが記されています。そして、クルミには認知機能の低下を予防するオメガ3脂肪酸、ポリフェノール、メラトニンなどの抗酸化物質などの栄養素が豊富に含まれているとか。殻を割って食べるのが面倒な人には健康に良いこんな利用方法もありました。認知症の予防になるかどうかは存じませんが。

胡桃踏んでしばし足裏いきいきす
  ~加藤秋邨(1905-1993)

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#4781 湖つ風あたる障子のすきま貼り籠りてあらむ冬は来にけり

令和7年11月7日(金) 【旧 9月18日 友引】 立冬・山茶始開(つばきはじめてひらく)

湖つ風あたる障子のすきま貼り籠りてあらむ冬は来にけり
  ~島木赤彦(1876-1926)『太虚集』

251107_湖つ風あたる障子のすきま貼り
Photo:諏訪湖の冬景色 ~LAKEHOOD OKAYA

 二十四節気「立冬」。暦の上では今日から冬に入ります。『暦便覧』では「冬の気立ち始めて、いよいよ冷ゆれば也」とあるので、正確には冬の気配が漂う頃という表現のようです。ともあれ、この日から2月4日の「立春」の前日までが冬とされています。日本気象協会による今年12月から来年2月までの予想では、温かい秋から一転し真冬の寒さが到来し、日本海側を中心に局地的な大雪リスクがあるが、後半には春めく日もあるとのこと。

凪ぎわたる地はうす眼して冬に入る
  ~飯田蛇笏(1885-1962)

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#4731 尻ふりて出できたらずやつばくらめ老いよろぼひし塔のかげより

令和7年9月18日(木) 【旧 7月28日 先負】 白露・玄鳥去(つばめさる)

ゆく雲にしばらくひそむ帰燕かな
  ~飯田蛇笏(1885-1962)

250918_ゆく雲にしばらくひそむ帰燕かな
Photo:七十二候だより

 燕は春になると東南アジアやオーストラリアからやってくるので当然季語としては春。しかし渡り鳥である限り再び南に帰っていく季節もやってきます。それまでに産卵し、生まれた子ツバメが一緒に帰れるほどに飛べるように育てなければなりません。今日は七十二候の第45候「玄鳥去(つばめさる)」。二十四節気「白露」の末候にあたり、俳句では帰燕・秋燕・残る燕などが秋の季語とされています。

尻ふりて出できたらずやつばくらめ老いよろぼひし塔のかげより
  ~与謝野晶子(1878-1942)

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