万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

岡山

#4847 目の前に鏡が置かれ水分の切れたるごときわが顔映る

令和8年1月11日(日) 【旧 11月23日 先負】 小寒・水泉動

傍観す女手に鏡餅割るを
  ~西東三鬼(1900-1962)

 1月11日、日本では「鏡開き」、あるいは「鏡割り」と言って正月に神仏に供えた鏡餅を下げて食べるという年中行事が行われていました。元々武家が具足に供えた具足餅を雑煮にしていたことから発祥したもので、徳川時代にこの日に決められたそうです。ただし地方によっては4日や15日など行われる日にちも違います。ちなみに餅を「切る」のは切腹に通ずるので、槌で「割る」のですが、これも縁起が悪い言葉なので「開く」にしたとか。

260111_傍観す女手に鏡餅割るを
Photo:ウェザーニュース

 ともあれ、今は一般の家庭で本物の鏡餅を供えているところは少なく、昔のようにヒビが入ってカチカチになった鏡餅を切る手間は無くなりました。鏡餅に似せたプラスチック容器からたくさんの小餅が出てくるというのも縁起がいいのかもしれません。もう一つ、女性がこの日に鏡台に供えた鏡餅を開くことを「初顔を祝う」とも言い、これも武家社会の風習でした。

目の前に鏡が置かれ水分の切れたるごときわが顔映る
  ~大西民子(1924-1994)

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#4806 街をゆき子供の傍を通るとき蜜柑の香せり冬がまた来る

令和7年12月2日(火) 【旧 10月13日 仏滅】 小雪・橘始黄(たちばなはじめてきばむ)

やぶさめや橘青き実をつけて
  ~細見綾子(1907-1997)『曼荼羅』

 今日は七十二候の第60候「橘始黄(たちばなはじめてきばむ」。橘の青い実が黄色くなる頃。二十四節気「小雪」の末候5日間にあたります。


 和歌や俳句の中で橘が取り上げられる場合は夏の季語でもある「花橘」、すなわち実より花のほうを詠まれることが圧倒的に多いようです。橘とは柑橘類の総称として使われており、黄金に輝く橘の実は不老不死の理想郷を指す「常世」の象徴と考えられていました。いまの蜜柑のように秋から冬にかけて食することのできる果物という一般の生活に近しい存在ではなかったのかもしれません。

街をゆき子供の傍を通るとき蜜柑の香せり冬がまた来る
  ~木下利玄(1886-1925)『紅玉』

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#4795 小春日和紅葉の染めし庭はたゞ小鳥来てゐる囀りばかり

令和7年11月21日(金) 【旧 10月2日 大安】 立冬・金盞香(きんせんかさく)

小春日和紅葉の染めし庭はたゞ小鳥来てゐる囀りばかり
  ~木下利玄(1886-1925)『みかんの木』
 
 「小春日和」とは晩秋から初冬にかけて現れる春のように穏やかな日和。一般に11月に使われますが、正確には旧暦の10月に使う言葉です。要するに、「小春(こはる・しょうしゅん)」は陰暦の十月の別名なのです。米国でも中秋頃の季節外れの温かいお天気を "Indian Summer"と言うそうです。

251121_小春日和紅葉の染めし庭はたゞ
Photo:ウェザーニュース

 今週はよく晴れたお天気が続いていますが、気温のほうは12月初旬から中旬なみという寒さなので小春日とは呼べませんね。そして、俳句における「小春日」は秋ではなく冬の季語だそうです。

すきとほりたる小春日の夕づきぬ
  ~篠原梵(1910-1975)『雨』

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#4761 我のみやあはれと思はむきりぎりす鳴く夕かげのやまとなでしこ

令和7年10月18日(土) 【旧 8月27日 仏滅】 寒露・蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)

きりぎりす雨に打たるる松があり
  ~岸本尚毅(1961-)『鶏頭』

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Photo:キリギリス ~生物モラトリアム

 今日は七十二候の第51候『蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)』。二十四節気「寒露」の末候に当たります。キリギリスがなく頃と言いたいところですが「蟋蟀」という漢字はキリギリスではなく、今ではコオロギと訓みます。しかし万葉の昔からこれをキリギリスと訓んでいたようで、どうやらコオロギのこと、あるいは秋に鳴く虫全般を指していたと考えられています。いずれにしても虫の声が聞こえ始めるともう秋も半ばを過ぎて季節は冬に向かいます。

我のみやあはれと思はむきりぎりす鳴く夕かげのやまとなでしこ
  ~素性法師(平安前期~中期)『古今和歌集』 巻4-0244 秋歌上

私だけが美しいと思うのだろうか。コオロギが鳴く夕日に照らされて咲いているやまとなでしこを。

 ※ヤマトナデシコはナデシコ科の植物カワラナデシコの別名です。

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#4709 アイスクリーム食べながらなんで君なのか考えて食べるアイスクリーム

令和7年8月27日(水) 【旧 7月5日 大安】 処暑・綿柎開(わたのはなしべひらく)

アイスクリーム食べながらなんで君なのか考えて食べるアイスクリーム
  ~長谷川麟(1995-)『延長戦』

 オードリー・ヘップバーン演じるアン王女がスペイン広場の階段に腰掛けてアイスクリームをなめなめしていたあの映画、『ローマの休日』が公開されたのは1953年の今日。これに由来して8月27日は「ジェラートの日」だとか。ただしこれは日本ジェラート協会が制定したもので日本限定です。それだけ日本ではこの映画の人気も高かったのでしょう。

250827_アイスクリーム食べながらなんで君なのか
Photo:映画『ローマの休日』(1953)のオードリー・ヘップバーンとグレゴリー・ペック

 私がローマのスペイン広場を訪れたのはちょうど10年前の12月。ここでアイスクリームを食べようかと思うような気温ではありませんでした。そのうえ、肝心の「聖地」たる石段は修復工事中の養生ネットに覆われて立入禁止。残念ながらオードリーの腰掛けた石に触れることはできず、トレビの泉に10円玉を放り込んで帰ってきました。

アイスクリームローマの旅の終りけり
  ~中道愛子 「槐」

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