万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

島根

#4769 とこしへに奈良は汚さんものぞ無き雨さへ沙に沁みて消ゆれば

令和7年10月26日(日) 【旧 9月6日 友引】 霜降・霜始降(しもはじめてふる)

国宝の楼門見上ぐ雲は秋
  ~吉野濃菊

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Photo:般若寺楼門 ~旅するTZRの文化財撮影記

 国宝の楼門といえば、おそらくは奈良般若寺の楼門のことだと思います。般若寺の名は飛鳥時代、聖武天皇が鬼門守護のために「大般若経」を埋めたことが由来です。聖武天皇といえば昨日から第77回「正倉院展」が開幕しました。開期は11月10日まで。奈良恒例の展示会で、今回はあの香木「蘭奢待《らんじゃたい》」を含め67件の宝物が展示されます。ここでクイズを一問。さて、約9000点もある正倉院の宝物の中で国宝に指定されている物はいくつあるでしょうか。

251026_とこしへに奈良は汚さんものぞ無き
Photo:正倉院正倉

 答えはゼロ。実は正倉院に収蔵されている宝物は皇室の所有物として宮内庁管理下の「御物」であるため、文化財保護法に基づく「国宝」には指定されていません。例外的に正倉院(正倉)の建物だけは国宝に指定されています。これは「古都奈良の文化財」が世界遺産に登録される要件の中に「構成資産が文化財保護法等で保護されている必要がある」為の特例措置によるものでした。

正倉院
とこしへに奈良は汚さんものぞ無き雨さへ沙に沁みて消ゆれば
  ~森鴎外(1862-1922)『奈良五十首』

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#4754 望遠鏡ごしのウインク恋人がアンドロメダに浮気している

令和7年10月11日(土) 【旧 8月20日 先負】 寒露・鴻雁来(こうがんきたる)

望遠鏡ごしのウインク恋人がアンドロメダに浮気している
  ~麻倉遥

 10月10日の「目の愛護デー」はよく知られています。数字の10・10を左右の眉と目に見立てたのが由来ですが、今日10月11日は10・11ということで片目を瞑った「ウインクの日(オクトーバーウインク)」だそうです。この日の朝、起きてすぐに好きな人の名前の数だけウィンクすると、その人に想いが届くというおまじないが女子中学生の間で流行ったのが始まりで、特に日本記念日協会に登録されているわけではありません。

251011_くはれもす八雲旧居の秋の蚊に
Photo:ヘブン(トミー・バストウ)とトキ(髙石あかり)~NHK連続テレビ小説『ばけばけ』

 現在放送中のNHKの朝ドラ『ばけばけ』はラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の妻が主人公となっていますが、その小泉八雲は16歳のときに弾けた遊具が左目に当たって失明。ウインクどころか、それ以来片目での生活を余儀なくされています。彼が顔の左側を写した写真を撮らせなかったのはそのせいですね。ところでハーンが日本国籍を取得して改名した「八雲」は出雲にかかる枕詞「八雲立つ」から名付けられたもので、妻の祖父稲垣万右衛門が名付けたそうです。ドラマでは小日向文世が演じる松野勘右衛門に当たる人でしょうか。

くはれもす八雲旧居の秋の蚊に
  ~高浜虚子(1874-1959)

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#4692 我が背子とふたり見ませばいくばくかこの降る雪の嬉しくあらまし

令和7年8月10日(日) 【旧 閏6月17日 仏滅】 立秋・涼風至(すづかぜいたる)

我が背子とふたり見ませばいくばくかこの降る雪の嬉しくあらまし
  ~光明皇后(701-760) 『万葉集』 巻8-1658 相聞歌

あなたと二人で見られたなら、どれだけこの降る雪を嬉しく思えることでしょう。

 奈良の都に初雪が降る日、光明皇后が行幸に出かけている聖武天皇を思って詠んだ歌です。光明皇后の夫への愛は聖武天皇の死後、東大寺に収めた遺品の数々、すなわち正倉院御物として1300年を経た現代に伝わります。

250810_夢の國燃ゆべきものの燃えぬ國

 現在、大阪歴史博物館で開催中の「正倉院 THE SHOW」に行ってきました。実物を展示していないこの展覧会にはあまり期待していませんでしたが、行ってみればさにあらず。実物が作られた当時の技法を現在の職工の技で見事に復元したレプリカは、逆に実物では失われた美しさが蘇っているのです。大画面で映し出される数々の宝物も私が実際の「正倉院展」で観たことのある物が新品だったときの姿。そして、かの香木「蘭奢待《らんじゃたい》」を化学分析して再現した香りを体感することもできました。これはぜひおすすめしたい展覧会です。大阪展は8月24日まで、東京展は上野の森美術館で9月20日から11月9日まで開催されます。

夢の國燃ゆべきものの燃えぬ國木の校倉《あぜくら》のとはに立つ國
  ~森鴎外(1862-1922)『奈良五十首』

追伸:ご自分のスマホとイヤホンを持っていけば展示の解説も聞けますよ。

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#4642 夏の夜はまだ宵ながらあけぬるを雲のいづこに月やどるらむ

令和7年6月21日(土) 【旧 5月26日 赤口】 夏至・「乃東枯(なつかれくさかるる)」

夏至の日の幽かに聴こゆ馬の鈴
  ~原石鼎(1886-1951)

250621_夏至の日の幽かに聴こゆ馬の鈴
Photo:夏の昼下がり ~白秋の黄昏

 今日は二十四節気の10番目「夏至」。『暦便覧』には「陽熱至極しまた、日の長きのいたりなるを以てなり」と記されています。一年で昼の長さが最も長くなる日。ということはこの日を境に夜明けはだんだん遅くなり、日没が早くなっていきます。少しづつなのでほとんど気づきませんが、ある日突然日が短くなったことに気づいたりします。もちろんオーストラリアやニュージーランドなど南半球ではちょうど逆の現象ですね。

夏の夜はまだ宵ながらあけぬるを雲のいづこに月やどるらむ
  ~清原深養父(平安中期)『古今和歌集』 巻3-0166 夏歌

夏の夜はまだ宵のうちと思っている間に明けてしまったが、今宵の月は雲のどこに宿を借りているのだろうか。

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#4477 奥利根の雪解の水の肌をさすこの冷さに生ひし田の芹

令和7年1月6日(月) 【旧 一二月七日 赤口】 小寒・「芹乃栄(せりすなわちさかう)」

奥利根の雪解の水の肌をさすこの冷さに生ひし田の芹
  ~馬場あき子(1928-)

250106_芹つんで暮れて戻りし子供哉
Photo:芹《セリ》 ~植木図鑑 植木ペディア

 二十四節気「小寒」の初日を「寒の入り」と呼び、そこから次の「大寒」の終わりまでの約一ヶ月を合わせて「寒中」と呼びます。「小寒」の初候5日間(1月5日-9日)は七十二候の第67候「芹乃栄(せりすなわちさかう)。若葉の成長が競り合うように背丈を伸ばし群生して見えることから「競り」と名付けられたとか。芹はアジアだけではなく北半球一帯とオーストラリアに広く分布しており、中国では少なくとも2000年前にはすでに食用にされていたことがわかっています。なぜか西洋ではこれを食べる習慣はないようです。まあ、特においしい植物ではないですけどね。

芹つんで暮れて戻りし子供哉
  ~原石鼎(1886-1951)

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