万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

#4440 衣手にあらしの吹きて寒き夜を君来まさずはひとりかも寝む

令和6年11月30日(土) 【旧 一〇月三〇日 先負】 小雪・「朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)」

衣手にあらしの吹きて寒き夜を君来まさずはひとりかも寝む
  ~作者未詳 『万葉集』 巻13-3282 相聞歌

衣の袖に嵐の風が吹きこむような寒い夜を、貴方がおいでにならないのでわたし一人で寝ることになるのですね。

241130_衣手にあらしの吹きて寒き夜を
Photo:1990年 台風28号の進路 ~WeatherNews

 一昨日から特に日本海側では雪や雷雨を伴う荒れた天気が続きました。もちろん台風ではありませんが、記録には1951年の統計開始以降最も遅く日本列島に上陸した台風として1990(平成2)年11月30日、紀伊半島に上陸した台風28号がありました。沖縄や伊豆・小笠原諸島でもこの時期に接近することはほとんどないというこの時期には珍しい「季節外れ台風」で、あと10時間遅れていたら「師走台風か」という新聞の見出しが踊ったとか。被害は死者・行方不明4人、負傷12人、損壊・浸水家屋1706棟でした。さらに公式の統計以前には1894(明治27)年12月10日に台風が上陸したという記録があるのですが、上陸地点が九州南部か房総半島か、あるいは両方なのかはっきりしていません。油断大敵ですね。

蒼天の一刷の雲冬嵐
  ~飯田蛇笏(1885-1962)

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#4435 散るをいとふ世にも人にもさきがけて散るこそ花と吹く小夜嵐

令和6年11月25日(月) 【旧 一〇月二五日 仏滅】 小雪・虹蟄不見(にじかくれてみえず)

散るをいとふ世にも人にもさきがけて散るこそ花と吹く小夜嵐
  ~三島由紀夫(1925-1970)辞世

 今日は三島由紀夫を追悼する「憂国忌」。1970(昭和45)年の今日、東京市ヶ谷の自衛隊駐屯地に「楯の会」のメンバー5人が訪れ、益田兼利東部方面総監を拘束しました。世にいう三島事件です。

241125_散るをいとふ世にも人にもさきがけて
Photo:自衛官の前で演説する三島由紀夫

 三島の目的は自衛隊員らに対して、憲法改正に向けて立ち上がれと言う趣意の演説を行うこと。現行憲法の下でその存在を否定されている自衛隊員たちにまずは訴えるべきことだと考えたのでしょう。ところが、意に反して隊員たちの野次と怒号によって三島の声はかき消されました。この訴えをするのなら自衛官ではなく、せめて会期中の国会議事堂前で行うべきではなかったろうかと残念でなりません。更に演説の後の割腹自殺という行為が右翼、あるいは改憲論者イコール暴力的というイメージを社会に与えるという逆効果を生んだことも否めません。三島が残した辞世は二首ありました。もう一首です。

益荒男《ますらを》がたばさむ太刀の鞘鳴りに幾とせ耐へて今日の初霜
  ~同

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#4434 世の中に嵐の風の吹きながら実をば残せる柿のもみぢ葉

令和6年11月24日(日) 【旧 一〇月二四日 先負】 小雪・虹蟄不見(にじかくれてみえず)

世の中に嵐の風の吹きながら実をば残せる柿のもみぢ葉
  ~源仲正(生没年不詳・平安後期)

241124_世の中に嵐の風の吹きながら
Photo:秋の柿 ~photoAC(anopi)

 日本一生産量が多い柿といえば「富有柿」。噛んだときの食感も良くて糖度が高いことから「甘柿の王様」とも呼ばれています。古歌に食用としての柿の実が詠まれた例を見つけられないということは、昔は渋柿しかなかったか、あるいは渋柿を甘くする方法を知らなかったのかもしれません。しかし、和歌にあるように柿の葉の紅葉は楓の赤とも銀杏の黄色とも違う本当の柿色です。またその木材はゴルフのヘッドに使われるくらいに固くて丈夫。日本の柿は世界に広まり、果物としての柿はパーシモンではなく「Kaki」と呼ばれています。

柿の木より柿をもぎつつ皮ながら一つ食みたりその甘柿を
  ~小泉千樫(1886-1927)

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#4348 二百十日の雨瀧のごとくにおちたれば海のただなかに島は濡れゐる

令和6年8月31日(土) 【旧 七月二八日 仏滅】・処暑 「天地始粛」(てんちはじめてさむし)

二百十日の雨瀧のごとくにおちたれば海のただなかに島は濡れゐる
  ~橋本徳壽(1894-1989)『竹院集』

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Photo:越中富山の伝統行事「おわら風の盆」(2023年9月1日) ~毎日新聞デジタル

 「二百十日」は雑節の一つで、立春から数えて210日目の日を指します。例年なら9月1日になることが多いのですが、今年は閏年なので、今日8月31日が二百十日にあたります。昔から暴風雨や台風の災害が多い厄日として農家の人達が警戒すべき日とされていました。台風10号はそのお約束どおり西日本の各地を蹂躙しながら進んでいますが、なぜか台風の中心から離れた関東が大雨という変則台風です。さて、二百十日や二百二十日の頃には「風の盆」や「風鎮祭」と呼ばれる風祭りが伝統的に行われてきました。有名な越中八尾の「おわら風の盆」の開催は明日9月1日から3日まで。無事に行われることを祈ります。

風の盆三日三晩の後豪雨
  ~福田蓼汀(1905-1988)『秋風挽歌』

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#4344 絶間なきものの響やわれひとり野分だつ庭にいできたりける

令和6年8月27日(火) 【旧 七月二四日 赤口】・処暑 「綿柎開」(綿のはなしべ開く)

台風が生れ天気図活気づく
  ~右城暮石(1899-1995)『上下』

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Photo:tenki.jp(2024年8月26日 21:00)

 1951年~2023年の統計によると台風が日本列島に最も多く上陸する月は8月だそうです。今年もすでに台風5号が東北地方を横断しました。ちなみに「上陸」とは九州・四国・本州・北海道の海岸線に達した場合を指し、小さな島や半島を短時間で横切った場合は「通過」。したがって、上陸しなくても大きな被害をもたらす場合があるのは周知の通りですが、台風情報は日々刻々と変化しています。どうやら10号は発生時点の情報よりも少し遅れて九州の何処かに「上陸」する可能性大で。その後の進路情報を見ると西日本を縦断していきそうです。西日本にとっては今年の初台風。無事に通り過ぎるとほんとの秋がやって来るのでしょうか。

絶間なきものの響やわれひとり野分だつ庭にいできたりける
  ~斎藤茂吉(1882-1953)『あらたま』

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