万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

広島

#4495 庭隅にゆふさり来れば眼のごとくボンタンの實ほのか光れり

令和7年1月24日(金) 【旧 一二月二五日 赤口】 大寒・款冬華(ふきのはなさく)

伊予柑に光沢与ふ燧灘
  ~高澤良一(1940-)『寒暑』

 燧灘《ひうちなだ》は瀬戸内海の中央部にあたる海域で愛媛県高縄半島と香川県の荘内半島の間の海域。具体的には今治、新居浜 四国中央、観音寺などの各市の沖合いの一帯の海。詳しくは存じませんがこの地区にも伊予柑の農家があるのでしょう。

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Photo:伊予柑 ~GIFYPAD

 「伊予柑」は春の季語ですが、一般に柑橘類は寒い時期に旬を迎えるものが多いようです。愛媛に伊予柑があれば高知には土佐文旦あり。九州地方ではボンタンとも呼ばれますが同じ果物を指します。伊予柑よりははるかにデカい。でかいうえに皮が分厚いので食べるのには少々時間がかかります。今年はカメムシの被害で蜜柑の値段が高騰していますが、これだけ皮の厚い文旦にはさすがのカメムシも歯が立たないでしょうね。

庭隅にゆふさり来れば眼のごとくボンタンの實ほのか光れり
  ~中村憲吉(1889-1934)

250124_庭隅にゆふさり来れば眼のごとく
Photo:土佐文旦 ~宮地さん家

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#4491 大寒の夜さり凍みたる土間の瓶今朝汲む酒に薄氷うかぶ

令和7年1月20日(月) 【旧 一二月二一日 友引】 大寒・款冬華(ふきのはなさく)

大寒の夜さり凍みたる土間の瓶今朝汲む酒に薄氷うかぶ
  ~中村憲吉(1889-1934)『しがらみ』

 今日は二十四節気24番目の「大寒」。「冷ゆることの至りて甚だしきときなれば也」と暦便覧に記されている通り、寒さが最も厳しくなる頃です。ところで、日本酒のアルコール度数は15℃くらいなので家庭用の冷凍庫であれば十分凍るようです。アルコール度数がこれより高ければ凍りにくく、低ければ凍りやすくなります。ウォッカなんて絶対凍らないのでしょうね。でも、憲吉の汲んだ日本酒ならば外気温次第では薄く氷が張ることもありえそうです。

250120_大寒の夜さり凍みたる土間の瓶
Photo:Yamarii

 しかし、天気予報では今日の大阪の最低気温は7℃、最高14℃。とてもそんな寒さにはならないようです。こんな俳句がありました。

春寒は大寒よりも情強し
  ~相生垣瓜人(1898-1985)『負暄』

 主季語は大寒ではなく「春寒」。大寒は寒いだろうという覚悟をしていたのだがそれほどでもなかったが、春になったはずなのに急に寒くなるとこちらのほうが体に応える。不意打ちの寒さのほうが身に応えるということのようです。

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#4453 太き骨は先生ならむそのそばに小さきあたまの骨あつまれり

令和6年12月13日(金) 【旧 一一月一三日 大安】 大雪・「熊蟄穴(くまあなにこもる)」

太き骨は先生ならむそのそばに小さきあたまの骨あつまれり
  ~正田篠枝 『さんげ』

241213_太き骨は先生ならむそのそばに
Photo:12月10日 ノーベル平和賞授賞式でスピーチする日本被団協の田中熙巳さん ~HUFFPOST

 正田篠枝さんの歌集『さんげ』は原爆投下からわずか2年後の1947年、原爆に関する出版が禁止されていた中、連合国軍総司令部(GHQ)による検閲を逃れる秘密出版で150部発行されました。厳罰を恐れて反対する声も多く、協力者もない中、広島刑務所の中で印刷したと言います。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)は戦後11年目の1956年に原爆被害者の全国組織として結成されました。そして今年、ノーベル平和賞を受賞。平和賞の受賞者に関しては、時としてなんでこの人が受賞するの、と賛否がある場合もありましたが被団協の受賞に疑問を呈する人はおそらくいないのではないでしょうか。

供華絶えぬ原爆慰霊碑に舞ふ小雪
  ~清水和子 『酸漿』

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#4429 たっぷりと血や臓物や悪心をしまひてくらし人間の胴

令和6年11月19日(火) 【旧 一〇月一九日 仏滅】 立冬・金盞香(きんせんかさく)

或る闇は蟲の形をして哭けり
  ~河原枇杷男(1930-)

 もともと政治家もマスコミも信じてはいなかったけれど、今年ほど醜いものを見せつけられた年はありませんでした。自民党の総裁選しかり、衆議院議員選しかり、そして極めつけは齋藤元彦兵庫県知事を失職に追い込んだ県議会です。今回の出直し選における齋藤前知事の勝因はSNSであると報じるマスコミはまだ何も反省していません。知事を追い落とした人々の不正で悪辣な手段こそが根本であり、SNSはそれを暴く役割を果たしただけ。まるで詐欺師が自分たちの悪事ではなく、バレて捕まったことを反省しているような印象です。

241119_たっぷりと血や臓物や悪心を
Photo:某マスコミは「イメージ」と称してこんな記事をばらまいていました。
 たしかにSNSの情報は玉石混交ですが聴視者はその中から真実らしきものを自ら選別する事ができます。しかしテレビ、新聞の報道は自分たちと利益を共有する者の不利な情報を一切報じませんでした。すなわちマスコミ報道の中からは真実を拾い出すことさえできなかったのです。知事の改革が性急すぎたのかもしれませんが、お抱えコメンテーターやその筋の専門家と称する人も自ら検証もせずに誤った個人攻撃に終止したことを大いに反省すべきでしょう。事態はまだまだ動きそうです。まずは正しい選択をした兵庫県民に幸あれ。

たっぷりと血や臓物や悪心をしまひてくらし人間の胴
  ~桑原正紀(1948-)『月下の譜』

241119_或る闇は蟲の形をして哭けり
Photo:日テレNEWSより

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#4426 洋梨にナイフを刺せば抱擁の名残りのように芯あたたかし

令和6年11月16日(土) 【旧 一〇月一六日 先勝】 立冬・地始凍(ちはじめてこおる)

洋梨にナイフを刺せば抱擁の名残りのように芯あたたかし
  ~東直子(1963-)『青卵』

241116_洋梨にナイフを刺せば抱擁の
Photo:ゴールドラフランス ~くだもの歳時記(山形 味の農園)

 和梨の旬は早いもので8月からおよそ10月頃。一方、ラ・フランスなどの洋梨は10月から12月。今が一番美味しい季節です。昔はあまり出回っておらず、どちらかというと西洋の果物を器に盛った静物画の題材としてよく見かけました。リンゴでもなし梨でもなし、いびつな形の果物がぶどうやザクロ、あるいはワインボトルなどと一緒に描かれているような油絵を思い出します。ところが、原産国のフランスやヨーロッパ各地は気候が不向きで20世紀初頭には栽培されなくなっていて、現在ラ・フランスを栽培しているのは日本だけ。特に雨が少なく冷涼な気候が適している山形県が全国の生産量の8割を占めています。

ラフランス裸婦ラフランス戴き頃
  ~富田敏子《とみたさとこ》

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