万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

新潟

#5050 残塁の数を数えて甲子園ため息ふかく生ビール呑む

令和8年7月26日(日) 【旧 6月13日 赤口】 大暑・桐始結花

夏雲の上に夏雲投手戦
  ~八木忠栄(1941-)

 プロ野球ペナントレースは今日の試合をもって一旦休憩。オールスターゲームを挟んで後半戦に突入です。パ・リーグはソフトバンクがリード、セ・リーグは阪神vs巨人の首位争いで折り返します。ここで我が阪神タイガースに関するとんでもないプロ野球記録をご紹介。私もまだ生まれていない今から80年前、1946年の今日7月26日に西宮球場で行われた大阪タイガースvsパシフィック戦は何と試合時間がたったの55分。タイガースの先発渡邉誠太郎とパシフィック先発の湯浅芳彰のテンポの好投と両打線の早打ちもあって1:0でタイガースの勝利でした。

260726_残塁の数を数えて甲子園
Photo:1992年9月11日 プロ野球最長試合 ゲームセットの瞬間 ~サンスポ

 逆にプロ野球史上最長試合も、阪神タイガースvsヤクルトスワローズの6時間26分。こちらは1992年9月11日なので、私もテレビ観戦をしていました。阪神八木裕の打球がホームランかエンタイトルツーベースかを巡って阪神中村監督とヤクルト野村監督の猛抗議合戦。長い中断を経て結局延長15回引き分けとなっています。試合終了は日付が変わった午前0時26分。タイガースは今も昔も球界のお騒がせ球団であり続けています。

残塁の数を数えて甲子園ため息ふかく生ビール呑む
  ~池松舞 『野球短歌』

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#4998 虎耳草ほのぼの白き円錐の花むらに澄む残り生あれよ

令和8年6月4日(木) 【旧 4月19日 仏滅】 小満・麦秋至

雪の下名のらで寒し花の色
  ~越智越人(1656-?)

260604_雪の下名のらで寒し花の色
Photo:ユキノシタ ~高知県立牧野植物園

 初夏5月から7月にかけて咲くのに名前は「雪ノ下《ユキノシタ》」。名前の由来は諸説あって、常緑の多年草ゆえに雪に埋もれても緑の葉があることや、花を雪虫に見立てたことなどがあります。「雪の舌」と書かれる場合もあって、これは長く垂れ下がった花弁を舌に見立てたことから(二枚舌?)。他に鴨の足に見立てて「鴨足草」とも書かれますがこれも「ユキノシタ」と訓みます。葉は生薬として利用されていて、炙るとやけどや腫れ物に、絞り汁は中耳炎に、煎じると痔に効くと言われています。生薬として扱う場合は主に中国名の「虎耳草」と書かれます。

虎耳草《ゆきのした》ほのぼの白き円錐の花むらに澄む残り生あれよ
  ~只野幸雄(1911-1997)

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#4985 金鱗の魚ひるがへる水の闇われやみがたき愛の火はなつ

令和8年5月22日(金) 【旧 4月6日 先負】 小満・蚕起食桑

金鱗の魚ひるがへる水の闇われやみがたき愛の火はなつ
  ~塚本邦雄(1920-2005)『されど遊星』

 「金鱗《きんりん》の魚」とは、恐らくは庭園の池を及ぶ錦鯉のことでしょう。薄暗い池の底に広がる暗闇と、生命のきらめきを思わせるような錦鯉の作る波とのコントラストには、はっとするような既視感を覚えます。結句に「愛の火」とあるので、鯉と恋をかけているのかもしれません。

260522_金鱗の魚ひるがへる水の闇
Photo:綾 Koi FARM

 さて今日は「国際生物多様性の日」という国連の定めた国際デーです。生物の多様性が失われつつあること、また、それに纏わる諸問題に対する人々の認知を広めるために制定されました。近年の研究では2100年までに1.4℃-5.8℃の上昇が見込まれており、このことが生態分布の変化、種の絶滅率の上昇、生殖の周期の変化、植物の成長期間の長さの変化など様々な形で、生物に影響を与えることが予想されています。国連ではこの日、森林破壊解消のために植樹を呼びかけて、各国では一斉に機を植える「グリーンウェイブ」と呼ばれる植樹イベントが行われます。

苗木植う山を昔に返すべく
  ~いのうえかつこ(1943-)

260522_われやみがたき愛の火はなつ
Photo:日本自然保護協会

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#4875 春のそらそれとも見えぬ太陽のかげのほとりのうす雲のむれ

令和8年2月8日(日) 【旧 12月21日 友引】 立春・東風解凍
 
春寒し夜されば疼く脳の芯
  ~石塚友二(1906-1986)

 石塚友二は新潟県に生まれ、上京の後横光利一に師事。多くの文人と交流を深めた俳人・小説家です。1986年2月8日に心不全で亡くなりました。今日は没後ちょうど40年に当たります。

260208_春寒し夜されば疼く脳の芯
Photo:石塚友二と四季おりおり快適生活

 「春寒し」と詠まれたとおり、少しづつ暖かくなってきたかと思えばまた寒さがぶり返すという、当分はこの繰り返しが続きそう。ところでこういうお天気の表現は他にもあります。例えば「春寒」は寒が明けた後の凍えるような寒さ。「余寒」は立春を過ぎてもなお寒さが残っていること。「花冷え」は桜の咲く季節に冷え込むこと。「寒の戻り」は晩春に一時的に寒さがぶり返すこと。逆に「三寒四温」は冬季に寒い日が3日ほど続いたあとに4日ほど暖かい日が続き、また寒さが戻ること。でも最近は春先に使われることもあるようなので必ずしも間違いではないそうです。日本語は難しい。

春のそらそれとも見えぬ太陽のかげのほとりのうす雲のむれ
  ~若山牧水(1885-1928)『別離』 下巻

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#4839 白き餅われは呑み込む愛染も私ならずと今しおもはむ

令和8年1月4日(日) 【旧 11月16日 友引】 冬至・雪下出麦

白き餅《もちひ》われは呑み込む愛染も私ならずと今しおもはむ
  ~斎藤茂吉(1882-1953)

260104_餅網も焦げて四日となりにけり
Photo:cookpad news

 縁起でもないお話ですが、お正月ならではの不幸な事故の一つがお餅を喉に詰めての窒息死。主に高齢者ですが、稀に幼児が亡くなるる場合もあります。私もお餅は大好き。お醤油をつけて海苔で巻いた磯辺焼きも良し、きなこをまぶすのもよし、はたまたぜんざいも結構。斎藤茂吉もお餅が好物だったようですが、呑み込むように食べるのは絶対にいけません。ちなみに「愛染」とは執着心のこと。餅を貪るように食べている今は他の物に何の執着心も持たないと茂吉先生はおっしゃいますが、危険ですよね。

餅網も焦げて四日となりにけり
  ~石塚友二(1906-1986)

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