万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

#4868 佐保川に凍りわたれる薄ら氷の薄き心を我が思はなくに

令和8年1月10日(土) 【旧 11月22日 友引】 小寒・水泉動

薄氷《うすらひ》に透けてゐる色生きてをり
  ~稲畑汀子(1931-2022)

260110_薄氷に透けてゐる色生きてをり
Photo:氷の下の魚を追うにゃんこ ~ねこナビ

 今日は七十二候の第68候「水泉動(しみずあたたかをふくむ)」。 地中で凍った泉が動き始める頃という意味で二十四節気「小寒」の次候に当たります。とは言え「小寒」のあとには、寒さがより厳しくなる「大寒」が控えており、氷が融けるどころではありません。それでも土の中ではもう春の兆しが芽生え始めているのだと信じたい古代人の思いではないでしょうか。

佐保川に凍りわたれる薄ら氷の薄き心を我が思はなくに
  ~大原櫻井真人《おほはらのさくらゐまさと》『万葉集』 巻20-4478

佐保川に張りつめた薄氷のような薄っぺらい心であなたを思っているのではないのです。

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑

#4786 戦争をまだ知らざりき凍土といふ語を教はりし童女のころは

令和7年11月12日(水) 【旧 9月23日 先勝】 立冬・地始凍(ちはじめてこおる)

凍土《いてつち》を踏みて淋しき人訪はむ
  ~小坂順子(1918-1993)

 二十四節気「立冬」の次候は七十二候の第56候「地始凍(ちはじめてこおる)」。日ごとに寒さが強まり、大地も凍り始める季節です。凍てついた大地を踏みしめるという経験は都会育ちの私にはあまり経験がありません。数年前に北海道の大雪山に行った時がたしか最後だったような気がします。

251112_凍土を踏みて淋しき人訪はむ
Photo:FREEP!K

 ところで凍土を訓読みで「いてつち」と読めば文学的香りがしますが、音読みで「とうど」と読めばイメージは一変します。特に先の大戦を直接経験された方や、満州での戦いやシベリア抑留の話をさんざん聞かされていた私のような戦後生まれの世代には、また違った響きを感じる言葉に変わってしまいます。岩手県出身の歌人大西民子は終戦の年、釜石高等女学校の教諭でした。

戦争をまだ知らざりき凍土《とうど》といふ語を教はりし童女のころは
  ~大西民子(1924-1994)

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑

#4711 あの夏と呼ぶべき夏が皆にあり喉うごかして氷みづ飲む

令和7年8月29日(金) 【旧 7月7日 先勝】 処暑・天地始粛(てんちはじめてさむし)

あの夏と呼ぶべき夏が皆にあり喉うごかして氷みづ飲む
  ~小島ゆかり(1956-)

250829_あの夏と呼ぶべき夏が皆にあり
Photo:トラベルボイス

 私が小中学生の頃は夏休みといえば7月20日前後から8月31日までの40日間と、大体決まっていたと記憶していますが、学研キッズネットによると今は自治体によって随分違うようです。北海道が30日間というのは気候の関係でわからないこともありません。大阪市もそうですが、およそ37日間で以前より早めに休み、8月の最終週にはすでに2学期が始まっています。でもお隣の兵庫(神戸市)は31日までの44日間だとか。大阪がいつも学習成績の下位に低迷しているからゆっくり休んでいる場合ではない。なんていう理由ではないでしょうけど。

絵日記に残りし頁夏休
  ~稲畑汀子(1931-2022)

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑

#4695 サクサクト削レル氷粉ヲナシテビードロ皿ニ雪ツッモリケリ

令和7年8月13日(水) 【旧 閏6月20日 先勝】 立秋・寒蝉鳴(ひぐらしなく)

サクサクト削レル氷粉ヲナシテビードロ皿ニ雪ツッモリケリ
  ~正岡子規(1867-1902)『竹乃里歌』

 豪雨のせいで一時気温も下がっていましたが、今日からまた暑さがぶり返します。雨後の湿度も加わるとますます食べたくなるのはアイスクリーム? それともかき氷?

250813_サクサクト削レル氷粉ヲナシテ
Photo:@S アットエス

 アイスクリームは家に持ち帰って食べられますが、かき氷をお家でできるご家庭は少ないかもしれません。そのうえ最近ではかき氷の範疇を遥かに超えたスイーツ系の「フラッペ」と呼ぶべき?デラックスかき氷が主流になってきているようです。あわてて完食すると絶対に突発性片頭痛に襲われること間違いなし。この歳になると、やっぱり昔ながらのシンプルないちごミルクや宇治金時が食べたくなります。

これ以上大き字は無し「かき氷」
  ~林翔(1914-2009)

250813_これ以上大き字は無し「かき氷」
Photo:photoAC(rinne_yuyuさん)

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑

#4609 アラビアに雪降らぬゆえただ一語 ثلج と呼ばれる雪も氷も

令和7年5月19日(月) 【旧 4月22日 先勝】 立夏・「竹笋生(たけのこしょうず)」

アラビアに雪降らぬゆえただ一語 ثلج 《サルジュ》と呼ばれる雪も氷も
  ~千種創一(1988-)『砂丘律』

 ثلج 《サルジュ》は雪を表すアラビア語。作者の千種創一氏は東京外国語大学アラビア語学科在学中に三井修氏の授業「短歌創作論」の受講生らと「外大短歌会」創立されています。

250519_このストールを巻くたびに遭うかなしみの
Photo:Thomas Edward Lawrence(1888-1935)

 さて、ちょうど90年前の今日、一人のイギリス軍人がバイクの転倒事故で亡くなっています。デヴィッド・リーン監督の映画『アラビアのロレンス』の主人公にもなったトーマス・エドワード・ロレンス中佐。映画ではピーター・オトゥールが演じていました。現在の中東情勢を複雑化させた当時の英国の外交姿勢も垣間見える作品で、制作年は1962年。SFXのない実写でこれだけの映画が作られたことに驚嘆します。音楽はモーリス・ジャール。映像は今見ても何ら古さを感じさせません。途中に休憩を挟む207分の超大作ですが映画ファンなら必見の名作です。

このストールを巻くたびに遭うかなしみの砂漠へ放つ、一羽の鷹を
  ~同


Youtube:『アラビアのロレンス』序曲

追伸:
 現在開催中の「2025 大阪・関西万博」のヨルダンパビリオンにはロケ地となった砂漠地帯の保護区「ワディ・ラム」の赤い砂およそ22トンが敷き詰められてちょっぴり現地の気分を味わえます。

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑
記事検索
🎼 I love music ♪

読んでくれたひと(感謝)
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

過去記事すべて見られます▼
📖私の著作です


  • ライブドアブログ