万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

狂歌

#4455 年暮れて我が世ふけゆく風のおとに心のうちのすさまじきかな

令和6年12月15日(日) 【旧 一一月一五日 先勝】 大雪・「熊蟄穴(くまあなにこもる)」

年暮れて我が世ふけゆく風のおとに心のうちのすさまじきかな
  ~紫式部 『玉葉和歌集』 巻6-1036 冬歌

年が暮れて、私もまた年を取るのだと思いつつ、夜更けの風の音を聞いていると、心の中のなんと荒んでいることでしょうか。

241215_年暮れて我が世ふけゆく風のおとに
Photo:2024年 NHK大河ドラマ『光る君へ』より 

 NHK大河ドラマ『光る君へ』が今日最終回を迎えます。平安時代中期を舞台にして、視聴率は大丈夫かという声もありましたが、NHKは視聴率を気にしすぎてはいけません。内容は近頃の大河の中では秀逸の出来だったと思います。合戦らしきシーンは最終盤の「刀伊の入寇」だけでしたがアクションがなくても脚本次第で十分面白くできるものです。というのも戦国時代などは既に描かれすぎているし、誰が死ぬか生きるかはみんな知っています。で、なんとか違う角度からという奇をてらった脚本を書こうとして「直虎」「麒麟」「家康」みたいにつまらなくなるのです。次回の『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』もあまり描かれない太平の江戸時代を生きた蔦屋重三郎が主人公なので、逆にいいドラマが期待できそうです。

きぬぎぬは瀬田の長橋長びきて四つのたもとぞはなれかねける
  ~蔦唐丸《つたのからまる》

後朝の別れは瀬田の長橋のように長引いて、四つの袂が離れられないのだよ。

 「蔦唐丸」は蔦屋重三郎の狂歌名。「瀬田の長橋」は琵琶湖にかかる瀬田の唐橋。「四つの袂」は二人の袂を合わせて四つという意味と時刻の四つ時(午後10時頃)をかけています。

241215_きぬぎぬは瀬田の長橋長びきて
Photo:2025年NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』から

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#4195 八百の嘘を上手にならべても誠一つにかなはざりけり

令和6年4月1日(月) 【旧 二月二三日 赤口】・春分 雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)

八百の嘘を上手にならべても誠一つにかなはざりけり
  ~拙堂和尚(江戸中期)『格言警句集』

240401_春雨の傘の中にて嘘を言ふ
Photo:映画『嘘八百』(2018年)予告編より

 4月1日には罪のない嘘が許されるというエイプリルフール。日本語では「四月馬鹿」と呼ばれますが、この「馬鹿」は騙したほうなのか、騙されたほうなのかどちらでしょうか。昔は世界中の新聞やラジオでジョークニュースを流すような企画が行われ、それを本気にする人が騒動を起こしてしまうということもあったようです。しかし最近では生成AIで作り出した偽画像・偽動画をネットに流す悪質な馬鹿が跋扈しています。それをまた無批判に信じて拡散する馬鹿もいるから厄介です。信じがたいニュースほど人に言いたくなるのはわかりますけど、真偽を確かめてからにしましょうね。

春雨の傘の中にて嘘を言ふ
  ~長谷川智弥子(1943-?)

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#4167 正月や冥途の旅の一里塚めでたくもありめでたくもなし

令和6年3月4日(月) 【旧 一月二四日 赤口】・雨水 草木萠動(そうもくめばえいずる)

正月や冥途の旅の一里塚めでたくもありめでたくもなし
  ~一休宗純(1394-1481)

正月は冥土に向かう旅の一里塚のようなものだ。めでたくもあるが、めでたくもない。

240304_正月や冥途の旅の一里塚
Photo:東海道笠寺の一里塚(名古屋市南区) ~名古屋市HP

 「一里塚」といえばまっさきに思い浮かぶのがこの歌。人生を一里塚に例えて、年明けごとに年を重ねて長寿を喜びながらも残りの人生も少しずつ少なくなる寂しさを詠んでいます。その「一里塚」は平安時代末期に奥州藤原氏が白河の関から陸奥湾までの道に里程標を立てたのが最初となっていますが、一休さんがいた室町時代にはどの街道にもあるものではなかったようです。本格的に整備されたのは江戸時代に入ってから、日本橋を起点として東海道・東山道・北陸道など主要な街道添いの1里(約3.927km)ごとに土を盛り榎や松を植えて設えたそうです。これが1604年3月4日(慶長9年2月4日)。420年前の今日のお話でした。

みちをしへとんで妻籠の一里塚
  ~大橋敦子(1924-2014)

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#3749 商人の欲に心や乱るらん戎参りの笹かたけゆく

令和5年1月11日(水) 【旧 一二月二〇日 先勝】・小寒・水泉動(しみずあたたかをふくむ)

商人《あきんど》の欲に心や乱るらん戎参りの笹かたけゆく
  ~鯛屋貞柳(1654-1734)『家づと』

商人は欲に心が乱されているのであろう。戎参りの福笹を担いでゆく。

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Photo:今宮戎、十日戎の最終日「残り福」 ~産経ニュース(2020年1月11日)

 鯛屋貞柳は江戸時代中期、大坂御堂前の菓子店「鯛屋」に生まれた狂歌師です。和歌が貴族や文人の嗜みとして詠まれていたのに対し、狂歌は社会風刺や皮肉を込めて詠まれるという違いがあるのですが、和歌や短歌にもそんな要素が入る歌がありますのでその境界線は必ずしもはっきりとはしません。鯛屋貞柳は狂歌師なのでこれは間違いなく狂歌です。何を風刺しているのかといえば大坂の商人の欲深さ。1月10日は「十日戎」の祭礼が行われ、恵比寿神に祈るのは商売繁盛です。その10日を挟んで9日が「宵えびす」、今日11日は「残り福」。せめて残り福には我が身の金儲けばかりではなく、この国の繁栄を祈ってみるというのはいかがでしょう。そちらのほうがかえって欲深い願いなのかもしれませんが。

残り福いただき戻り風邪ごゝち
  ~岸風三楼《きし ふうさんろう》(1910-1982)

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#3636 永代橋はしづめの樹に文鳥の……他一首

令和4年9月20日(火) 【旧 八月二五日 友引】・白露・玄鳥去(つばめさる)

永代橋はしづめの樹に文鳥の釣籠ひとつ暮れにけるかも
  ~中村憲吉(1889-1934)『林泉集』 構橋晩景

 今から215年前の今日、隅田川にかかる永代橋で犠牲者が1400人を超える大惨事が起こっています。もともとろくな維持費もかけず修復を繰り返していた橋で起こったこの事故は、2001年の明石の歩道橋事故に似て、複数の要因が重なった明らかな人災でした。

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Photo:ライトアップされた永代橋 ~東京風物詩

 1809年9月20日(文化4年8月19日)、富岡八幡宮で12年ぶりに行われた深川祭の為に集まった群衆が永代橋に押し寄せたとき、ちょうど一橋家の船がその下を通ると言うので役人がその間無礼がないようにと永代橋を一時通行止めにしました。通行止めが解除されると人々は両側から一斉に渡り始めます。橋はその重みに耐えきれず、中央部分から崩れ落ちたのです。事故に気付かずさらに群衆が押し出されて次々に転落し犠牲者が増えていきました。私は杉本苑子の小説『永代橋崩落』を読んでこの事故を知ったのですが、同時代に生きた大田南畝(蜀山人)の『夢の憂橋』の中にこの事故を取り上げた狂歌がありました。

永代とかけたる橋は落ちにけりきょうは祭礼あすは葬礼
  ~大田南畝(1749-1823) 『夢の憂橋』

220920_永代とかけたる橋は落ちにけり.jpg
Photo:「永代橋落下の光景」(永代橋危難記)~落語「永代橋」の舞台を歩く

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