万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

百人一首

#4780 瀬を早み岩にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ

令和7年11月6日(木) 【旧 9月17日 先勝】 霜降・楓蔦黄(もみじつだきばむ)

青ぬたや昔なじみは皆故人
  ~桂八十八(1925-2015)

 今日は三代目桂米朝の生誕百年目にあたります。「八十八《やそはち》」は漢字の米を分解した俳号で米朝師匠が好んで使っていました。本名は中川清。旧満州の大連生まれで出身は兵庫県姫路市。戦後滅びかけていた上方落語を継承し、後に六代目笑福亭松鶴・三代目桂小文枝・三代目桂春団治とともに上方落語四天王の一人としてその復興に大きな貢献を果たしました。

251106_青ぬたや昔なじみは皆故人
Photo:三代目桂米朝 ~日本経済新聞

 1996年に重要無形文化財(人間国宝)に認定されたのは落語界では柳家小さんに続いて二人目、また2002年には演芸人として史上初の文化功労者顕彰を受けています。2015年3月19日肺炎のために亡くなり、日本政府からこの日付をもって従三位に叙されています。米朝の持ちネタがいくつあるか、おそらくご自身も数えていなかっただろうと思われるくらいたくさんありますが、私の好きなのは『崇徳院』。中学生時代に小倉百人一首に興味を持ったのはこの落語がきっかけでした。

瀬を早み岩にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ
   ~崇徳院 『詞花集』 0229 恋歌上(小倉百人一首077)

川の瀬が岩にぶつかった滝川の水が、一度別れてしまっても、まためぐり逢ってひとつになるのだと思うよ。

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#4661 渡津海の豊旗雲に入日さし今夜の月夜清明こそ

令和7年7月10日(木) 【旧 6月16日 先負】 小暑・「温風至(あつかぜいたる)」
 
渡津海《わたつみ》の豊旗雲に入日さし今夜《こよひ》の月夜清明《あきらけく》こそ
   ~天智天皇(626-672)『 万葉集』巻1-0015 雑歌

沖の海に大きな旗のような雲に夕日が差している。今宵の月は 名月になるだろう。

 古代史上最大のクーデター事件「乙巳《いっし》の変」があったのは1380年前の今日 645年7月10日(皇極天皇4年6月12日)。飛鳥板蓋宮《いたぶきのみや》に於いて当時の最高権力者蘇我入鹿が皇極天皇の面前で中大兄皇子(後の天智天皇)と中臣鎌子(後の藤原鎌足)によって斬殺されたのです。

250710_渡津海の豊旗雲に 入日さし
Photo:Photo:「乙巳の変」~多武峰縁起絵巻 (談山神社蔵)

 その後の「大化の改新」は律令国家建設と中央集権化への第一歩とされていますが、これらの改革の多くはすでに推古天皇の時代から聖徳太子や蘇我氏によって進められており、『日本書紀』によるクーデターを美化する潤色があると考えられています。とはいえ、蘇我氏本宗家の滅亡により天皇への権力集中が完成したことは間違いないようです。天智天皇の和歌をもう一首。『小倉百人一首』の第1番にも採られています。

秋の田のかりほの庵の苫をあらみわが衣手は露にぬれつつ
  ~同 『後撰和歌集』 巻6-0302 秋歌中

秋の田の近くに据えた仮小屋の、屋根を葺いた苫の編み目が粗いので、私の衣の袖は露に濡れるばかりだよ。

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#4642 夏の夜はまだ宵ながらあけぬるを雲のいづこに月やどるらむ

令和7年6月21日(土) 【旧 5月26日 赤口】 夏至・「乃東枯(なつかれくさかるる)」

夏至の日の幽かに聴こゆ馬の鈴
  ~原石鼎(1886-1951)

250621_夏至の日の幽かに聴こゆ馬の鈴
Photo:夏の昼下がり ~白秋の黄昏

 今日は二十四節気の10番目「夏至」。『暦便覧』には「陽熱至極しまた、日の長きのいたりなるを以てなり」と記されています。一年で昼の長さが最も長くなる日。ということはこの日を境に夜明けはだんだん遅くなり、日没が早くなっていきます。少しづつなのでほとんど気づきませんが、ある日突然日が短くなったことに気づいたりします。もちろんオーストラリアやニュージーランドなど南半球ではちょうど逆の現象ですね。

夏の夜はまだ宵ながらあけぬるを雲のいづこに月やどるらむ
  ~清原深養父(平安中期)『古今和歌集』 巻3-0166 夏歌

夏の夜はまだ宵のうちと思っている間に明けてしまったが、今宵の月は雲のどこに宿を借りているのだろうか。

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#4530 まだきにぞ摘みに来にけるはるばると今もえ出づる野べのさわらび

令和7年2月28日(金) 【旧 2月1日 友引】 雨水・草木萌動(そうもくめばえいずる)

びろうどのあたたかさうな草も萌ゆ
  ~山口青邨(1892-1988)

 今日は七十二候の第6候「草木萌動(そうもくめばえいずる)」。草木が芽を吹き始めるころという意味で、二十四節気「雨水」の末候にあたります。

250228_びろうどのあたたかさうな草も萌ゆ
Photo:背景ラボ

 平安時代に編まれた『堀川百首』にも次のような歌がありました。ここでは「はるばる」と春を懸けている早春の和歌です。

まだきにぞ摘みに来にけるはるばると今もえ出づる野べのさわらび
  ~祐子内親王家紀伊 『堀川百首』 0143 春歌

待ちきれずに遥々とここまで摘みに来たのですが、やっと今萌え出たばかりなのですね 野辺の早蕨は。

 祐子内親王家紀伊《ゆうしないしんのうけのきい》は平安時代、後朱雀天皇の皇女であった祐子内親王に仕えた女房で「女房三十六歌仙」のひとり。小倉百人一首の72番にも彼女の歌が採られています。

音に聞く高師の浜のあだ波はかけじや袖のぬれもこそすれ
  ~祐子内親王家紀伊 『金葉和歌集』 巻8-0469 恋歌下

名高い高師浜のあだ波は我が身に掛けはいたしません。袖が濡れてしまいますから。

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#4494 朝ぼらけ有明の月とみるまでに吉野の里にふれる白雪

令和7年1月23日(木) 【旧 一二月二四日 大安】 大寒・款冬華(ふきのはなさく)

朝ぼらけ有明の月とみるまでに吉野の里にふれる白雪
  ~坂上是則 (生没年不詳)『古今和歌集』 巻6-0332 冬歌

空がほのかに明るくなりはじめた早朝、有明の月が出ているのかと思うほどに吉野の里には白々と雪が降っているよ。

250123_朝ぼらけ有明の月とみるまでに
Photo:吉野山の雪景色 ~なら旅ネット

 年が明けても春にはまだまだ遠い大寒の真っ只中。北国や山地では雪が降り続きます。「小倉百人一首」の31番に採られたこの歌の出典は『古今和歌集』。詞書には「大和国にまかれりける時に雪の降りけるを見てよめる」とあって、坂上是則は延喜8(908)年に大和国の権少掾《ごんのしょうじょう》として赴任した時の経験を詠んだものと思われます。権少掾は国司の三等官。主に書記業務や雑務に携わる官職で位階は従七位上相当。五位以上を貴族と呼ぶので、それほど身分が高くはない役人でした。

み吉野の山の白雪つもるらし ふるさと寒くなりまさるなり
  ~同 『古今和歌集』 巻6-0325 冬歌

吉野の山では雪が積もっているに違いない。奈良の古京がこんなに寒くなっているのだから。

 こちらも吉野の雪を詠んだ歌ですが、「奈良の京にまかれりける時に、やどれりける所にてよめる」との詞書があります。これは旧都平城京に宿泊した時の寒さから雪に埋もれた吉野を想像しているようです。あまり気が進まない吉野への赴任途上の歌ではないでしょうか。

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