万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

神奈川

#4874 風越によすが残れる聖火台思へば懐かしふたつの五輪

令和8年2月7日(土) 【旧 12月20日 先勝】 立春・東風解凍

アイスホッケー恋を奪り合うごとくかな
  ~黛まどか(1962-)『くちづけ』

 昨日に続いてオリンピックの話題。ただし、この句はミラノ・コルティナではなく、1998年長野オリンピック冬季大会での選手の活躍を詠まれています。1998年のこの日に開会式が行われたことに由来して、2月7日は「長野オリンピックメモリアル・デー」。

260207_風越によすが残れる聖火台
Photo:軽井沢アイスパークのカーリング競技場 ~軽井沢風越公園

 この長野大会から正式種目に採用されたカーリング競技の会場は軽井沢町でした。そしてもう一つ、軽井沢は1964年の東京オリンピックでも総合馬術競技が開催された地でもあります。東京から近く、気候と地質の良さから選ばれたそうで、夏と冬両方のオリンピック競技が行われたのは日本で唯一ここだけ。その軽井沢、風越《かざこし》公園には夏冬二つの大会で使われた聖火台など4つのモニュメントが残されています。

風越によすが残れる聖火台思へば懐かしふたつの五輪
  ~片岡守之「軽井沢で短歌と写真と・・・

260207_思へば懐かしふたつの五輪
Photo:風越公園のオリンピック記念碑 ~「軽井沢で短歌と写真と・・・

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#4870 月夜にはそれとも見えず梅の花香をたづねてぞ知るべかりける

令和8年2月3日(火) 【旧 12月16日 先負】 大寒・鶏始乳

月夜にはそれとも見えず梅の花香をたづねてぞ知るべかりける
  ~凡河内躬恒(859?-925)『古今和歌集』 巻1-0040 春歌

月夜の梅は光に紛れて見えづらいが香りを頼りにすればよかったのだ。

 この梅とは雪に覆われた白梅。月の光に照らされて雪に紛れたというのですが、ちょっと大げさな感が否めません。旧暦12月16日は月齢15.3の満月ですから、こんな日に詠まれた歌かもしれません。

260203_冬の月かこみ輝き星数多
Photo:2月の満月「スノームーン」 ~ECナビ

 和歌や俳句で中秋の名月が詠まれる一つの理由が空気が澄んでいるからとも言われますが、その理由に限ると冬のほうがよほど空気が済んでいます。月は冬こそ美しいと考えれば、今日は冬と春との季節を分ける「節分」。冬の満月が観られる最後の日ですね。ちなみに2月の満月は別名「スノームーン」とも呼ばれます。

冬の月かこみ輝き星数多
  ~高木晴子(1915-2000)『晴居』

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#4853 捜査犬われにぞありける夢にして生者の息のかぐはしさ知る

令和8年1月17日(土) 【旧 11月29日 先負】 小寒・雉始雊

捜査犬われにぞありける夢にして生者の息のかぐはしさ知る
  ~水原紫苑(1959-)

 阪神・淡路大震災から今日は31年目。この大地震による死者・行方不明は6437名。そして住家の全壊全焼17万戸、半壊半焼13.7万戸という膨大な被害を出しています。一方で1995年が「ボランティア元年」と呼ばれるように、この悲惨な事態を契機に新しい動きも始まりました。

260117_捜査犬われにぞありける夢にして
Photo:能登半島地震で活躍する災害救助犬ジェニファー ~産経新聞(2024年1月3日)

 翌年1996年に東京消防庁にハイパーレスキュー(消防救助機動部隊)が、2005年には厚生労働省の日本DMAT(災害派遣医療チーム)が発足しています。またカセットコンロのガスボンベの規格が統一されたのも被災者の利便性によるものでした。意外なところでは水栓のレバーが上げ止めであったのが下げ止めになったのもこの震災がきっかけだったとか。崩壊物の落下によりレバーが下がって水道が出しっぱなしになった例が多かったためだそうです。多くの犠牲者を出しましたが、今の神戸市街地は美しく生まれ変わりました。関東大震災や戦時中の空襲など破壊が新しい創造に繋がるというのも皮肉な現実でもあるようです。

地震《なゐ》あとの春待つ顔を上げにけり
  ~桂信子(1914-2004)『花影』

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#4851 高円の尾上のきぎすあさなあさな妻に恋ひつつ鳴く音かなしも

令和8年1月15日(木) 【旧 11月27日 先勝】 小寒・雉始雊

雉子の声死後にも似たる朝景色
  ~右城暮石(1899-1995)

 朝の田園の澄み切った空気をつんざくような雉の声。「死後にも似たる」というのはその音と景色が生み出す鋭い透明感からの印象なのでしょう。

260115_高円の尾上のきぎすあさなあさな
Photo:キジの求愛 ~ぶらり自然散歩

 二十四節気「小寒」の末候は七十二候の第69候「雉始雊(きじはじめてなく)」。冬の寒さが深まった頃、雄の雉が雌を求めて鳴き始めます。雉がなく時は翼をバタバタを母衣打ちしながら「ケーンケーン」と甲高い声で鳴いて雌にプロポーズします。それに対する雌の行動はまさしく人間と同じ、受け入れれば「よろしくお願いします」、気に入らなければ「ごめんなさい」。それならまだいいほうですが、バカにするように「ホロロ」と鳴いてとっとと去っていくことも。「けんもほろろ」は雉さんのプロポーズが語源だったんですね。

高円の尾上のきぎすあさなあさな妻に恋ひつつ鳴く音かなしも
  ~源実朝(1192-1219)

高円の丘の上で雉が毎朝のように妻を求めて鳴く声が、なんとも物哀しい事だ。

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#4868 佐保川に凍りわたれる薄ら氷の薄き心を我が思はなくに

令和8年1月10日(土) 【旧 11月22日 友引】 小寒・水泉動

薄氷《うすらひ》に透けてゐる色生きてをり
  ~稲畑汀子(1931-2022)

260110_薄氷に透けてゐる色生きてをり
Photo:氷の下の魚を追うにゃんこ ~ねこナビ

 今日は七十二候の第68候「水泉動(しみずあたたかをふくむ)」。 地中で凍った泉が動き始める頃という意味で二十四節気「小寒」の次候に当たります。とは言え「小寒」のあとには、寒さがより厳しくなる「大寒」が控えており、氷が融けるどころではありません。それでも土の中ではもう春の兆しが芽生え始めているのだと信じたい古代人の思いではないでしょうか。

佐保川に凍りわたれる薄ら氷の薄き心を我が思はなくに
  ~大原櫻井真人《おほはらのさくらゐまさと》『万葉集』 巻20-4478

佐保川に張りつめた薄氷のような薄っぺらい心であなたを思っているのではないのです。

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