万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

神奈川

#4506 せつぶん草さく山道の森かげに雪はのこりて春なほさむし

令和7年2月4日(火) 【旧 1月7日 先勝】 立春・東風解凍(はるかぜこおりをとく)

せつぶん草さく山道の森かげに雪はのこりて春なほさむし
  ~昭和天皇(1901-1989)

250204_せつぶん草さく山道の森かげに
Photo:セツブンソウ(広島県総領町)~庄原観光ナビ

 節分草《セツブンソウ》はキンポウゲ科の多年草。まだ雪が残っているような節分の頃に咲き始めるためにこの名があります。古くは家楡《いえにれ》とも呼ばれ、一本の茎には2センチくらいの白い花をひとつだけ咲かせます。ただし花に見えるのは花弁状の萼片です。日本固有種で栃木県の星野の里や兵庫県丹波市などに群生地がありますが、乱獲や環境破壊によって希少植物になっています。花言葉は「気品」「高貴」「微笑み」など。残念ながらそんな花言葉に縁遠い私などはまだ出会ったことがありません。

又も聞く節分草は見たきもの
  ~高澤良一(1940-)『素抱』

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#4495 庭隅にゆふさり来れば眼のごとくボンタンの實ほのか光れり

令和7年1月24日(金) 【旧 一二月二五日 赤口】 大寒・款冬華(ふきのはなさく)

伊予柑に光沢与ふ燧灘
  ~高澤良一(1940-)『寒暑』

 燧灘《ひうちなだ》は瀬戸内海の中央部にあたる海域で愛媛県高縄半島と香川県の荘内半島の間の海域。具体的には今治、新居浜 四国中央、観音寺などの各市の沖合いの一帯の海。詳しくは存じませんがこの地区にも伊予柑の農家があるのでしょう。

250124_伊予柑に光沢与ふ燧灘
Photo:伊予柑 ~GIFYPAD

 「伊予柑」は春の季語ですが、一般に柑橘類は寒い時期に旬を迎えるものが多いようです。愛媛に伊予柑があれば高知には土佐文旦あり。九州地方ではボンタンとも呼ばれますが同じ果物を指します。伊予柑よりははるかにデカい。でかいうえに皮が分厚いので食べるのには少々時間がかかります。今年はカメムシの被害で蜜柑の値段が高騰していますが、これだけ皮の厚い文旦にはさすがのカメムシも歯が立たないでしょうね。

庭隅にゆふさり来れば眼のごとくボンタンの實ほのか光れり
  ~中村憲吉(1889-1934)

250124_庭隅にゆふさり来れば眼のごとく
Photo:土佐文旦 ~宮地さん家

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#4492 さきがけて地を割りそめし蕗の薹あさ黃みどりのひとつを摘みぬ

令和7年1月21日(火) 【旧 一二月二二日 先負】 大寒・款冬華(ふきのはなさく)

さきがけて地を割りそめし蕗の薹あさ黃みどりのひとつを摘みぬ
  ~長沢美津(195-2005)

250121_さきがけて地を割りそめし蕗の薹
Photo:蕗の薹 ~AWAKANスタッフブログ

 二十四節気「大寒」の初候5日間(1月20日-24日)は七十二候の第70候「款冬華(ふきのはなさく)」。厳しい寒さの中、雪の中に埋もれていても黄色い蕾をそっと出すフキノトウ。春の兆しを伝える植物の中でも一番最初に姿を表します。冬に黄色い花を咲かせるところから、「冬黃」からフキとなったと考えられています。「款冬」はフキのことで、フキノトウはその花茎のことを指します。

持ち上げし土をまだ出ず蕗の薹
  ~稲畑汀子(1931-2022)

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#4458 この家の誰より古き伝説となりて渇きぬ柊一樹

令和6年12月18日(水) 【旧 一一月一八日 仏滅】 大雪・「鮭魚群(さけのうおむらがる)」

この家の誰より古き伝説となりて渇きぬ柊一樹
  ~佐伯裕子(1947-)『未完の手紙』

241218_この家の誰より古き伝説と
Photo:初めて花が咲いた我が家のヒイラギです。

 柊《ヒイラギ》はモクセイ科の常緑小高木。クリスマスのリースに使われるのは赤い実をつけるセイヨウヒイラギなのでこれとは違います。ここで言うヒイラギは「冬になると白い小花が集まって咲き、甘い香りを放つ」とWikipediaで説明されています。しかし我が家のヒイラギは今まで一度も花を咲かせたことがありませんでした。本当にヒイラギだろうかと常々思っていたのですが、今年始めてその白い花が咲いているのを見つけました。今まで気づかなかっただけなのかなあと、今度は自分を疑った次第。ところで和名の「ヒイラギ」というのは痛いという意味の古語「疼《ひひら》ぐ」から取られたもので、もちろん触れると痛いトゲのある葉のことを指しています。

葉はふれず花柊の香には触れ
  ~稲畑汀子(1931-2022)

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#4457 さ夜ふけゆきて朱硯に蚊がひとつとまりて居るも心がなしも

令和6年12月17日(火) 【旧 一一月一七日 先負】 大雪・「鮭魚群(さけのうおむらがる)」

十二月十七日を鳴く蚊過ぐ
  ~秋元不死男(1901-1977)


 この季節に蚊の話題? と言っても今や驚かないのではないでしょうか。都市化が進むとビルの地下水槽や排水槽、地下鉄の構内など、蚊にとっては年中温暖な環境もたくさんあることは想像に難くありません。ヤブ蚊(ヒトスジシマカ)は寒くなり始めると十分な吸血をして越冬させる卵を産んでから死んでしまいます。アカイエカは秋に羽化しますがそのまま休眠に入って翌年の春に活動し始めます。冬も前述の温暖な環境下を根城にしながら休眠せずに活動するのはチカイエカだそうです。でも最近は地球温暖化のせいもあって、ヤブ蚊も結構長く生き残っているから要注意。我が家でも殺虫剤は冬でも切らさないように常備しております。

さ夜ふけゆきて朱硯に蚊がひとつとまりて居るも心がなしも
  ~斎藤茂吉(1882-1953)

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