万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

福岡

#4899 吹く風に動く菜の花音もなく周辺しづけき朝ぼらけかな

令和8年3月4日(水) 【旧 1月16日 仏滅】 雨水・草木萌動

菜の花や月は東に日は西に
  ~与謝蕪村(1716-1784)

 菜の花が咲きそろうこの時期、西に沈みかけた太陽と入れ替わるように満月が東から顔を覗かせる。そんな今日は春の十六夜の月が見られます。この句が詠まれたのは安永3(1774)年3月23日。蕪村が、六甲山地の摩耶山(現在の神戸市灘区)を訪れたときの句です。

260304_吹く風に動く菜の花音もなく
Photo:菜の花の季節 ~埼玉日和

 天文学的計算では安永3年の春、月と地球と太陽がこのような状態で並ぶのは3月10日~15日の間だとのことで、今の暦に換算すると1774年4月20~25日くらいになるのだとか。蕪村は摩耶山でこの景色を見てから10日くらい後に詠んだということのようです。次は江戸時代末期、夕方ではなく早朝の菜の花畑を詠んだ福岡の歌人大隈言道《おおすみことみち》の和歌です。

吹く風に動く菜の花音もなく周辺《あたり》しづけき朝ぼらけかな
  ~大隈言道(1798-1868)

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#4892 あめの下のがるる人のなければや着てし濡れ衣干るよしもなき

令和8年2月25日(水) 【旧 1月9日 先負】 雨水・霞始靆

あめの下のがるる人のなければや着てし濡れ衣干るよしもなき
  ~菅原道真(845-903)『拾遺和歌集』 巻19-1216 雑恋

雨が降るような天下では逃れる人がいないからであろうか。着ている濡れ衣を乾かすすべもないようだ。

260225_ともしびの洩れくる菜種御供の森
Photo:道明寺天満宮の菜種御供大祭(大阪府藤井寺市)~OH! MATSURI

 延喜3年2月25日(903年3月26日)、菅原道真は左遷先の大宰府で亡くなっています。その後、彼を追いやった藤原時平は急死し、醍醐天皇の皇子が相次いで病死。京都では疫病や落雷事故など天変地異が続いたため、菅原道真の祟りと怖れられました。このため、天慶5(942)年、多治比文子が北野の右近馬場に社殿をかまえて菅原道真の霊を祀るべしという御神託をうけて、天暦元(947)年に創建されたのが京都の北野天満宮です。菅原道真の命日にあたるこの日、北野天満宮では「梅花祭」が、また大阪の道明寺天満宮では「菜種御供《なたねごく》」が行われます。

ともしびの洩れくる菜種御供の森
  ~加藤三七子(1925-2005) 

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#4828 ガラス壁に映るツリーもきらきらりはじめましてと見上げてゐたり

令和7年12月24日(水) 【旧 11月5日 先負】 冬至・乃東生(なつかれくさしょうず)

刻かけて海を来る闇クリスマス
  ~藤田湘子(1926-2005)

 1777年12月24日、イギリスの探検家ジェームス・クックが南太平洋・オセアニアの小さな島に上陸しました。この日がクリスマス前夜であったため、クリスマス島と命名されています。現在は33の環礁からなるキリバス共和国の一部です。西洋人は「発見」と言いますがアメリカ大陸と同様、この島にも元々ミクロネシアの先住民がいたのですから単に「上陸」という方が正しいのでしょうね。

251224_刻かけて海を来る闇クリスマス
Photo:世界で最も早く日が昇る国 - クリスマス島(キリバス)~FREETRAVEL

 南半球のクリスマスは当然ながら夏真っ盛り。トナカイがサンタのソリを引いているのではなく、サンタが短パンで波乗りをしている絵柄の楽しいクリスマスカードを見たことがあります。ちょっとイメージが違いますが、やはりクリスマスは降誕祭、あるいは聖夜という厳かな行事というよりは世界のお祭りになっているのですね。

ガラス壁に映るツリーもきらきらりはじめましてと見上げてゐたり
  ~大野英子 「南の魚座 福岡短歌日乗」

251224_ガラス壁に映るツリーもきらきらり
Photo:オリーブオイルをひとまわし

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#4819 フェルメールの女は真珠「健康」という誕生石の言葉思えり

令和7年12月15日(月) 【旧 10月26日 大安】 大雪・熊蟄穴(くまあなにこもる)

フェルメールの女は真珠「健康」という誕生石の言葉思えり
  ~松村由利子(1960-)『大女伝説』

 17世紀オランダの画家フェルメールが亡くなったのは1675年の今日12月15日。レンブラント、カラヴァッジョ、ルーベンス、ベラスケス等とともにバロック絵画を代表する画家の一人です。フェルメールブルーと呼ばれる青は当時純金と同じくらいに高価であったラピスラズリを原料とするウルトラマリンの絵の具から生み出されたものです。ベロ藍を使った北斎ブルーを思い出します。

251215_フェルメールの女は真珠「健康」という
Photo:真珠の耳飾りの少女(1665年?)

 私が彼のことを知ったのは絵画そのものではなく、学生時代に読んだ彼の絵が登場するミステリー小説からでした(題名は失念しました)。今では驚くような高値がつく彼の作品ですが、その要因の一つはあまりにも残された絵が少ないこと。実際に度々盗難にあったり贋作が出回ったり、またナチス・ドイツとの関わりなど、ミステリー小説の素材には事欠かないようです。もう一首、村松由利子さんの短歌です。フェルメールのどの絵を指しているかすぐにわかりますよね。

一心にミルクを注ぐ幸いよ永遠はその静けき角度
  ~同『大女伝説』

251215_一心にミルクを注ぐ幸いよ
Photo:牛乳を注ぐ女(1657-1658年頃)

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#4792 掘りあげた芋の重さに比例する歓声あがる空まであがる

令和7年11月18日(火) 【旧 9月29日 先勝】 立冬・金盞香(きんせんかさく)

焼芋の固きをつつく火箸かな
  ~室生犀星(1889-1962)

 さつまいもはヒルガオ科サツマイモ属の多年生植物で原産地は中南米だそうです。中国名である「甘藷《かんしょ》」とも呼ばれ、あるいは「唐芋」という別名もあることからも、おそらく中国経由で渡来したのでしょう。

251118_焼芋の固きをつつく火箸かな
Photo:ZOJIRUSHI 暮らしのかくし味

 享保の大飢饉では薩摩で栽培されていた甘藷が多くの人々を救ったということもあり、青木昆陽が徳川吉宗に上申し、小石川薬園で本格的に栽培されるようになりました。この時はあくまで災害や飢饉に備えた救荒食としての栽培でしたが、今では秋の味覚として欠かすことのできない食材となっています。サツマイモご飯やおかずの煮物としてだけでなく焼くだけでもスイーツになることから、この時期の幼稚園でも「芋掘り体験」が盛んに行われています。先日も孫がでかいのを持って帰ってくれました。

掘りあげた芋の重さに比例する歓声あがる空まであがる
  ~栗山由利 「南の魚座 福岡短歌日乗」

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