万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

秋田

#4302 投げられしまま指揮棒は彗星となりて白鳥座を目指したり

令和6年7月16日(火) 【旧 六月一一日 赤口】・小暑 「蓮始開」(はすはじめてひらく)

ヘルベルト・フォン・カラヤンのつひの汗
  ~林翔(1914-2009)

240716_ヘルベルト・フォン・カラヤンのつひの汗
Photo:中学生の時、父が買ってきたステレオで聞いて、おったまげたというレコードがこれでした。

 今日7月16日は間違いなく20世紀で最も有名な指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908-1989)35年目の命日。ベルリン・フィルハーモニーの終身指揮者であり芸術監督としてのイメージが強いかもしれませんが、実はオーストリア生れ。ナチス党員であったことから戦後はソ連占領軍によって公開演奏停止処分を受けた時期があります。彼が「帝王」と呼ばれるのはやはり多くのレコーディングを通してクラシック音楽ファンの裾野を世界中に広げたことにもあるのではないでしょうか。コンサートホールの音を自宅でも体験できる為にと、演奏はもちろん録音や映像技術にもこだわり貫いた、初めての演奏家であったと言えるでしょう。かく言う私もこの人のレコードの迫力の虜になった一人です。

投げられしまま指揮棒は彗星となりて白鳥座を目指したり
  ~冨樫由美子(1976-)

Youtube:ベートーヴェン交響曲第5番冒頭(カラヤン指揮ベルリン・フィル)


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#4261 草をとる手に蟷螂の上り来て透けたる細き脚もて身構ふ

令和6年6月6日(木) 【旧 五月一日 大安】・芒種 螳螂生(かまきりしょうず)

草をとる手に蟷螂の上り来て透けたる細き脚もて身構ふ
  ~山岡弘道 『碧き湖』

240606_草をとる手に蟷螂の上り来て
Photo:でれすけ

 二十四節気「芒種」の初候5日間(6月5日-9日)は七十二候の第25候「螳螂生(かまきりしょうず)」。前年の秋に交尾し、草の茎や小枝、建物の壁などに産み付けられたカマキリの卵が一斉に孵化する時期です。昆虫を大まかな印象で、カワイイ系、コワイ系、キモチワルイ系の3つに分けると、カマキリはおそらくコワイ系に入るのでしょうが、生まれたばかりのかまきりはまだカワイイ系と言ってもいいかもしれません。大きくなったからと言っても毒があるわけでもないのですが、交尾の後にメスはオスを頭からかじって食い殺すといいます。やっぱりコワイ系ですね。私もカマキリではなく、人間のオスに生まれてつくづく良かったと思っております。

野の風や蟷螂生る雷神
  ~島田五空(1875-1928)

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#4141 玫瑰の花をし見れば帰りゆかむ思ひはつのる国後島遙かに

令和6年2月7日(水) 【旧 一二月二八日 先負】・立春 東風解凍(はるかぜこおりをとく)

玫瑰《はまなす》の花をし見れば帰りゆかむ思ひはつのる国後島遙かに
  ~東海林諦顕(1934-)『さらば国後島-故郷喪失の悲哀』

240207_はまなすの花をし見れば帰りゆかむ
Photo:国後の夜明け ~photoAC(フランクさん)

 東海林諦顕《しょうじたいけん》氏は国後島のご出身。現在は秋田市に住まれ、1991年にロシアとの合意による「ビザなし交流」を利用して、何度か故郷・国後を訪問されています。しかし2022年9月にロシアは元島民らによる「ビザなし交流」や「自由訪問」を一方的に破棄しました。そもそも択捉島・国後島・色丹島・歯舞群島は1885(安政元)年に「日露和親条約」において日本の領土となり、1875(明治8)」年には樺太をロシア領とするかわりに千島列島をすべて日本領にするという平和裡に締結された条約によるものです。今日2月7日は「日露和親条約」締結の日に基づき、「北方領土の日」と定められています。同じ歌集からもう一首。

故郷国後島を訪ふことが当たり前になることあるべきか
  ~同

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#3759 来てみれば雪消の川辺のしろがねの柳ふふめり蕗の薹も咲けり

令和5年1月21日(土) 【旧 一二月三〇日 大安】・大寒・款冬華(ふきのはなさく)

来てみれば雪消の川辺のしろがねの柳ふふめり蕗の薹も咲けり
  ~斎藤茂吉(1882-1953)

230121_来てみれば雪消の川辺のしろがねの.jpg
Photo:ふきのとう ~Food Layout

 二十四節気「大寒」の初候5日間(1月20~24日)は七十二候の第70候「款冬華(ふきのはなさく)」。ふきのとうが地中から出る頃です。雪解けを待たずに最も早く顔を出してくるふきのとうはキク科フキ属の多年草で、全国に自生している蕗の花の蕾(花茎)のこと。フキの語源は「冬黄」で、冬に黄色い花をつけることからなのですが、俳句では春の季語となっています。短歌には季語のお約束はないので、その点自由ですが、それでも蕗を詠んだら自然と早春の歌になってしまいます。

春寒の凝りてや蕗の薹青し
  ~石井露月(1873-1928)

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#3274 参道の風にたゆたふ彼岸花……他俳句

令和3年9月23日(木) 【旧 八月十七日 赤口】・秋分・雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)

秋分の正午の日ざし真向《まむき》にす
  ~菅裸馬《すが らば》

 菅裸馬は秋田県土橋生まれ。古河グループを支えた日本の実業家、菅礼之助の俳号です。

210923_秋日ざし明るき町のこころよし.jpg
Photo:霊園と彼岸花 ~成和㈱ のHPより

 今日は二十四節気の第16、「秋分」。『暦便覧』には「陰陽の中分なれば也」とあり、昼と夜の時間が同じ長さになる日です(正確には若干昼の時間が長い)。この日が祝日となったのは1878(明治11)年から。ただし1948(昭和23)年までは「秋季皇霊祭」という名称でした。太陽が真東から登って真西に沈むというこの日は御仏の住む西方浄土に向かって祈る彼岸会の日でもあります。今日はその中日。お墓参りをされる方は彼岸の明けの26日までにされるとよいでしょう。

参道の風にたゆたふ彼岸花歩幅のあはぬ石段降りぬ
  ~林龍三 『塔』2021年1月号

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