万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

群馬

#5007 歌碑祭は雨の降るなか献酒する牧水やはり雨男なり

令和8年6月13日(土) 【旧 4月28日 先勝】 芒種・螳螂生

歌碑祭は雨の降るなか献酒する牧水やはり雨男なり
  ~奥村清美(群馬県)「第9回若山牧水みなかみ紀行短歌大会」

 牧水は物心がつく頃から雨に濡れる坪谷の渓谷と尾鈴山が好きで、歌を詠み始めた中学生の頃は自らを「雨山《うざん》」とか「白雨」とか呼んでいたそうです。18歳の時に名乗り始めた「牧水」も母の名の牧《まき》と雨にちなんだ水の字をとったのだとか。

260613_歌碑祭は雨の降るなか献酒する
Photo:AI大竹耕太郎さん(郡広典さんのフェイスブック投稿より)

 プロ野球はセパ交流戦真っ只中ですが、これも例年梅雨の時期と重なります。どこの世界にも雨男はいるようで、我が阪神タイガースにも大竹耕太郎という雨男がおります。大竹選手は2022年の現役ドラフトでソフトバンクから移籍して、今では先発投手陣の一角なのですが、なぜか登板予定日が雨で流れたり、試合中に雨が降ったりという巡り合わせになってしまいます。最近は防御率も2.41とそれほど悪くはないのに得点に恵まれなかったり、味方のエラーや審判の微妙なジャッジにも泣かされたりで勝ち星が得られずちょっとお気の毒。次はおそらく17日の楽天戦? 雨にならなければいいのですが。

雨男らしき用意の梅雨の傘 
  ~三村純也(1953-)

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#4969 草枕旅に物思ひ我が聞けば夕かたまけて鳴くかはづかも

令和8年5月6日(水) 【旧 3月20日 仏滅】 立夏・蛙始鳴

草枕旅に物思ひ我が聞けば夕かたまけて鳴くかはづかも
  ~作者未詳 『万葉集』 巻10-2163 雑歌

旅にあって物思いに耽っている夕方、蛙の鳴く声が聞こえてきたよ。

 二十四節気「立夏」の初候6日間(5月5日-10日)は七十二候の第19候「蛙始鳴(かわずはじめてなく)。オタマジャクシから成長した蛙が鳴き始める頃。子どもの頃、近くの淀川にザリガニやタニシを採りに行けばいつも聞こえた蛙の声ですが、今は田園が広がる郊外に出かけた時にしかその声を耳にする機会がありません。萩原朔太郎が従兄の萩原栄次に捧げた詩集「月に吠える」の中に「蛙よ」という一節がありました。

260506_草枕旅に物思ひ我が聞けば
Photo:Oggi.jp

蛙よ、
靑いすすきやよしの生えてる中で、
蛙は白くふくらんでゐるやうだ、
雨のいつぱいにふる夕景に、
ぎよ、ぎよ、ぎよ、ぎよ、と鳴く蛙。

まつくらの地面をたたきつける、
今夜は雨や風のはげしい晩だ、
つめたい草の葉つぱの上でも、
ほつと息をすひこむ蛙、
ぎよ、ぎよ、ぎよ、ぎよ、と鳴く蛙。

蛙よ、
わたしの心はお前から遠くはなれて居ない、
わたしは手に燈灯《あかり》をもつて、
くらい庭の面を眺めて居た、
雨にしほるる草木の葉を、つかれた心もちで眺めて居た。

  ~萩原朔太郎(1886-1942) 『月に吠える』より「蛙よ」

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#4765 秋の花種々にありと色ごとに見し明らむる今日の貴とさ

令和7年10月22日(水) 【旧 9月2日 仏滅】 寒露・蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)

秋の花種々《くさぐさ》にありと色ごとに見《め》し明《あき》らむる今日の貴とさ
  ~大伴家持(718-785) 『万葉集』 巻19-4255

秋の花には色々な花がありますが、それをひとつひとつご覧になり 愛でられる、今日は貴き日でございます。

 751(天平勝宝3)年の秋、藤原一族の光明子を母に持つ孝謙天皇に捧げた家持の歌ですが、「秋の花」といって、何の花か特定していないのにはわけがありました。実は種々の花というのは大伴一族の官人たちを喩えてます。ひとりひとり優秀な人材がここにもいますよと訴え、平等な叙任を願う歌でした。

251022_はるけくも来つるものかな萩の原
Photo:第104代首相に指名された高市早苗自民党総裁 ~金融ジャーナルONLINE

 さて、昨日臨時国会において日本維新の会との連立(閣外協力)により、高市早苗自民党総裁の第104代内閣総理大臣就任が決まりました。総理大臣は日本の政治の舵取りを行う最重要ポストではありますが、一人ですべての政策を実行できるものではありません。これはどんな組織にも言えることですが、成功した会社組織の多くは、たとえワンマン社長に見えても、手元に有能な人材を配置し、それぞれの力量を最大限に発揮させているはず。閣僚人事は高市新総理の最初の腕の見せ所、その上に日本維新の会の知恵や人材もフルに活用してこの国を一層豊かで強い国に成長させていただきましょう。

はるけくも来つるものかな萩の原
  ~中曽根康弘(1918-2019)

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#4745 誰があきにあらぬものゆゑ女郎花なぞ色にいでてまだき移ろふ

令和7年10月2日(木) 【旧 8月11日 赤口】 秋分・蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)

虫つどふ金の王宮女郎花
  ~堀口星眠(1923-2015)

 小さな黄色い花を無数に咲かせる女郎花《オミナエシ》。同じ多年草のオミナエシ属で白い花の男郎花《オトコエシ》に似ているものの、男郎花よりは少しやさしい感じがします。植物の世界でもLGBTへの理解が進んでいるのでしょうか、まれにオトコエシとの間にオトコオミナエシという雑種が生まれることもあるそうです。


 秋の七草の一つとされていますが、開花にはかなり早晩の差があり、早いものでは6月頃から咲き始めています。原産地はシベリアから東アジア。「美人」のほかに「はかない恋」という花言葉もあって、次の和歌では「秋」と「飽き」を掛けています。

誰があきにあらぬものゆゑ女郎花なぞ色にいでてまだき移ろふ
  ~紀貫之(872-945)『古今和歌集』 巻4-0232 秋歌上

だれの秋というのではなく、すべてのものの秋であるのに、女郎花よ、何故に表に現わして早くも移ろうのであるか。

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#4653 ひと憎むことほど易きことはなく松の針ふる下を歩めり

令和7年7月2日(水) 【旧 6月8日 先勝】 夏至・「半夏生(はんげしょうず)」

万国旗小春の影を落としけり
  ~森迫永依(1997-)「プレバト!!」2023年11月30日放送

 先日(6月26日)、私が聴きに行ったコンサートの一曲目、三善晃(1933-2013)の『祝典序曲』は1970年の大阪万博開会式のために作曲されたもので、昭和天皇のお言葉に続いて岩城宏之の指揮・NHK交響楽団によって万博会場の「お祭り広場」において初演されました。ということですが、今日はコンサートではなく、「万博」のお話。

250702_万国旗小春の影を落としけり

 さて、「2025年大阪関西万国博覧会」の開催が決まってしばらくすると万博反対&中止せよ!のキャンペーンが始まりました。その主張は、税金を無駄遣いしたうえに、大赤字になるであろうという「予想」、というよりもむしろ赤字になって大失敗に終わることを「祈念」しておられたように見えました。まだ、始まる1年も前からこんな本(下の写真)が出版されていたくらいですから。表紙を読むと、どうやら万博にかこつけて、維新憎し、自民憎し、ついでに保守のやることみんな憎しという政治的思惑が本音のようです。

250702_ひと憎むことほど易きことはなく
Photo:万博崩壊(2023年12月)、大阪・関西万博「失敗」の本質(2024年8月)

 東京オリンピックの時にも反対運動がありましたが、万国博は社会・文化・科学技術・医療・教育など多岐にわたる分野の発展に大きな役割を担ってきたという歴史さえもあえて無視されているようです。採算面以上に次世代のために果たすべき大きな役割があるのです。しかし今回は経済効果に関してはすでに黒字が確定し、入場者数も予想を上回りそうな状況なので、アンチの方の次のターゲットは大混雑と熱中症の患者数にでもシフトされるのかも。

ひと憎むことほど易きことはなく松の針ふる下を歩めり
  ~渡辺松男(1955-)『<空き部屋>』 


Youtube:三善晃 『祝典序曲』

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