万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

英訳

#4861 寒中の氷結もまた人をとめ結びの妙の縁あるらむ

令和8年1月25日(日) 【旧 12月7日 赤口】 大寒・水沢腹堅

寒中の氷結もまた人をとめ結びの妙の縁《えにし》あるらむ
  ~稲美里佳

 稲美里佳さんは秋田県在住の歌人。秋田国際俳句川柳短歌会の会員でもあり、この短歌は英語でも詠まれています。

in deep winter
freezing also makes
me stop
it may have
the ethereal knot of fate

260125_寒中の氷結もまた人をとめ
Photo:奥日光・華厳の滝 ~photoAC(スプププさん)

 二十四節気「大寒」の次候は七十二候の第71候「水沢腹堅(さわみずこおりつめる)」。沢に氷が厚く張りつめる頃。
「沢」を『大辞林』で引くと2つの意味がありました。
 ① 山あいの谷川。源流に近い流れ
 ② 水が浅くたまり、葦・荻などの草の茂っているところ。
 どちらかと言うと、①の沢が凍りつめるほうがより寒そうに感じますね。奥日光の華厳の滝のように大きな滝が氷結するには水量にもより-10℃~ー30℃くらいになってからだそうです。

滝壺のつらら八寒地獄之図
  ~川端茅舎(1897-1941)

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#4650 夕暮れのゼブラゾーンをビートルズみたいにあるくたった一人で

令和7年6月29日(日) 【旧 6月5日 仏滅】 夏至・「菖蒲華(あやめはなさく)」

夕暮れのゼブラゾーンをビートルズみたいにあるくたった一人で
  ~木下龍也(1988-)『つむじ風、ここにあります』

250629_夕暮れのゼブラゾーンをビートルズ
Photo:アルバム『ABBY ROAD』 のジャケット写真

 ビートルズを知らない世代の人も「アビー・ロード」のジャケット写真は見たことがあるでしょう。ビートルズといえば、もう一つ有名な報道写真を思い出します。ビートルズが初めて日本にやってきたのは1966年の今日6月29日のこと。ハッピ姿で手を振りながら、日航機のタラップから下りてくる報道写真です。この時の熱狂的なファンは私よりもう少し上の世代。中二だった当時の私にはあまり関心がありませんでした。

250629_Yesterday is history.
Photo:ビートルズがやってきた1966年6月29日(羽田空港)~GIZMODO

 私自身がビートルズにハマりだしたのはもっとあと、大学生になってからでした。今では彼らのアルバムすべてを持っているほど聴き倒したものです。時により一番推しの曲はころころと変わりましたが、やっぱり最後にたどり着いたのは「イエスタディ」です。ビートルズの歌詞とは関係ありませんが、こんな言葉をインターネットで見つけてメモしていたので書いておきます。昨日の思い出は大切だけど、今日と明日をもっと大切にするために。

Yesterday is history. 
Tomorrow is mystery. 
Today is a gift. 
That’s why it is called the present.
  ~Alice Morse Earle (1851-1911)

昨日は歴史。
明日は神秘。
今日は天からの贈り物。
だから今日は「プレゼント」と呼ばれているのです。
  ~アリス・モース・アール

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#4439 だんだんに無感覚となる報道はウクライナからガザに移れど

令和6年11月29日(金) 【旧 一〇月二九日 友引】 小雪・「朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)」

だんだんに無感覚となる報道はウクライナからガザに移れど
  ~渡英子 『短歌』 2024年2月号

 1977年12月の国連決議において、今日11月29日を「パレスチナ人民連帯国際デー」が定められました。これは1948年11月29日に当時のパレスチナ問題を解決するためにイギリスの委任統治を終わらせ、アラブ人とユダヤ人の国家を創出し、エルサレムを特別な都市とする案の実施を勧告する国連決議が採択された事によるもの。ただしこの案はユダヤ人には大枠で受け入れられたもののアラブ諸国とパレスチナのアラブ人指導者たちには受け入れられないまま今日に至っています。

241129_だんだんに無感覚となる報道は
Photo:子どもを抱いて歩く少女(パレスチナ自治区ガザ地区)~AFP/Getty Images

 昨年の10月にイスラエルとガザの武力衝突が激化してから既に1年以上が経過しています。先日、米国の提案でイスラエルとレバノンを拠点にするシーア派組織ヒズボラとの停戦が合意されましたが、ウクライナ情勢とともに決定的な解決には至っていません。

 以下はパレスチナの俳人リタ・オデさん(イスラエル北部のナザレ出身)が詠んだ俳句です。

Gaza's child -
looking for her doll
among the ruins

(人形を探す瓦礫の子の哀し)
  ~リタ・オデ

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#4290 大寺院沈没する船裁判所なみいる岩に赤鬼もをおり

令和6年7月4日(木) 【旧 五月二九日 先負】・夏至 半夏生(はんげしょうず)

大寺院沈没する船裁判所なみいる岩に赤鬼もをおり
  ~大岡信(1931-2017)『アメリカ草枕』

240704_大寺院沈没する船裁判所
Photo:ラシュモア山の岩壁に放られた人の大統領(サウスダコタ州)~カラパイア

 詩人で評論家でもある大岡信《おおおかまこと》が1978年にアメリカを旅行した時に詠んだ一首。アリゾナからユタ州へ大自然の中を移動中の3日間で87首の短歌をメモしたそうです。今日7月4日はアメリカ合衆国の独立記念日。1776年に独立宣言が採択されてから今日で248年になります。良きにつけ悪しきにつけ、この国が民主主義国家の牙城であることは変わりません。しかし次の大統領に、不倫相手への口止め料を隠すために業務記録を改ざんした罪で有罪になった78歳のドナルド・トランプと、足元もおぼつかず度々誤った発言をする81歳のジョー・バイデンのどちらかを選ばなければならない米国民を気の毒に思ってしまいます。他に人がいないのかと、他人事ではなく思ってしまう今日このごろです。

あさましやいかなるゆゑのむくいにてかかることしも有る世なるらん
  ~西行(1118-1190)『山家集』 巻下 1231

How deplorable,
By what retribution does such a thing occur
in the whole country?


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#4196 日暮るればさそひしものを赤沼の真菰がくれのひとり寝ぞ憂き

令和6年4月2日(火) 【旧 二月二四日 先勝】・春分 雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)

日暮るればさそひしものを赤沼の真菰《まこも》がくれのひとり寝ぞ憂き
  ~小泉八雲(1850-1904)『怪談』

Even though at twilight I called him to me! Oh, the bitter misery of sleeping alone, hidden in the tall rushes of Akanuma!

日暮れには誘い合って共寝をしたのに、赤沼の真菰に隠れてひとりで寝るのはつらいのです。

240402_日暮るればさそひしものを赤沼の
Photo:小泉八雲旧居 ~ナオコガイドのアイルランド日記

 小泉八雲が本名のラフカディオ・ハーンの名で『怪談(kwaidan)』をアメリカで発表したのがちょうど120年前の今日、1904年4月2日のこと。この歌はその中の「おしどり」という一話にありました。村充《そんじょう》という猟師が赤沼でつがいの鴛鴦《おしどり》を見つけ、放った矢は雄の鴛鴦を射殺します。その夜のこと、村充の夢枕に若い女が立ち、泣きながらこの歌を詠んで消えていったというお話。『古今著聞集』巻20の説話に基づいた怪談です。八雲はこれを刊行してから半年後、狭心症で亡くなっています。享年54歳。

怪談に女まじりて春の宵
  ~正岡子規(1867-1902)

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