万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

茨城

#4825 いま、君を帰したあとで柊の花に気づいた、ほら、門のとこ

令和7年12月21日(日) 【旧 11月2日 赤口】 大雪・鱖魚群(さけのうおむらがる)

いま、君を帰したあとで柊の花に気づいた、ほら、門のとこ
  ~千種創一(1988-)『砂丘律』

251221_柊の花一本の香かな
Photo:ヒイラギの花 ~photoAC(三次郎さん)

 柊の赤い実はクリスマスツリーやリースの飾りには欠かせません。「ひいらぎと蔦は」や「ひいらぎ飾ろう」というクリスマスキャロルもありました。ただしこれはモチノキ科のセイヨウヒイラギのこと。本当のヒイラギはモクセイ科の植物で初夏に赤とは程遠い暗紫色の地味な実を付けます。そしてクリスマスのこの時期には小さな白い花を付けてキンモクセイのような香りを漂わせます。日本の短歌や俳句で詠まれる場合は殆どがこちらのヒイラギのことです。冒頭の短歌もそうですが、きっと花の香りでヒイラギの存在に気付いたのでしょう。セイヨウヒイラギとは全く別物ですがどちらも葉に棘があるところが似ています。

柊の花一本の香かな
  ~高野素十(1893-1976)

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#4762 しろたへの衣手寒き秋雨に庭の木犀香に聞え來も

令和7年10月19日(日) 【旧 8月28日 大安】 寒露・蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)

夜道よし木犀の香のとゞきゐて
  ~山口誓子(1901-1994)

251019_夜道よし木犀の香のとゞきゐて
Photo:ギンモクセイ ~BOTANICA

 金木犀ほどではありませんがそれでも心地よい芳香を放つ銀木犀。花期は9月から10月です。単にモクセイと言った場合は銀木犀を指していますが、どちらも中国原産で日本に渡来したのは江戸時代。強い香りが遠くまで届くと言うことから中国では九里香とも呼ばれますが、桂花と言うのが正式名だそうで、中国の観光都市である桂林はモクセイが多いことが地名の由来だそうです。

しろたへの衣手寒き秋雨に庭の木犀香に聞え來も
  ~長塚節(1879-1915)『長塚節歌集』

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#4666 揖保乃糸ひたすら啜り上げてゐる夕べは暑く人間とおし

令和7年7月15日(火) 【旧 6月21日 友引】 小暑・「蓮始開(はすはじめてさく)」

揖保乃糸ひたすら啜り上げてゐる夕べは暑く人間とおし
  ~浦河奈々(1966-)『マトリョーシカ』

 今日、7月15日は道教に由来する三元の一つ「中元」。もともと旧暦の7月15日に贖罪の行事が行われていましたが現在は新暦で行われるようになりました。と言っても一般人の年中行事としては「お中元」の贈答だけになってしまいましたね。「お素麺」はそのお中元の定番商品の一つですね。

250715_三輪山の山下響《とよ》み行く水の
Photo:Picky's Life

 「揖保乃糸」は手延そうめんの銘柄です。厳選した小麦と赤穂の塩を原料に気候風土が適した兵庫県揖保郡でおよそ600年に亘って受け継がれてきた播州の名産品。暑い夏の季節には食欲も減退気味になりますが、素麺はそんなときに最適なメニューです。関西で素麺といえばもう一つの代表が「三輪素麺」。こちらは奈良県桜井市。ここも素麺づくりにはかかせない清らかな水に恵まれています。その歴史は奈良時代の遣唐使によって小麦の栽培や製粉技術が伝えられたとか。平安時代に編まれた『延喜式』にはそうめんのルーツとなる唐菓子「麦縄」のことが記されています。

三輪山の山下響《とよ》み行く水の水脈《みを》し絶えずは後も我が妻
  ~作者未詳 『万葉集』 巻12-3014 寄物陳思

三輪山の山の麓を響かせて流れる水の水脈が絶えないように、お前はいつまでも私の妻だよ。

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#4638 筑波嶺のさ百合の花の夜床にも愛しけ妹ぞ昼も愛しけ

令和7年6月17日(火) 【旧 5月22日 友引】 芒種・「梅子黄(うめのみきばむ)」

筑波嶺のさ百合《ゆる》の花の夜床《ゆとこ》にも愛《かな》しけ妹ぞ昼も愛しけ
  ~大舎人部千文 『万葉集』 巻18-4369

筑波山の百合の夜床の愛しい妻は昼も愛しい妻なのだよ。

 大舎人部千文《おおとねりべのちふみ》は常陸国(茨城県)から派遣された防人。「さ百合《ゆる》」「夜床《ゆとこ》」は東国方言の訛りです。万葉集に詠まれた百合の花はいずれも日本固有種で、関西ではササユリ、関東ではヤマユリであろうと考えられています。

250617_筑波嶺のさ百合の花の夜床にも
Photo:大神《おおみわ》神社のササユリ ~みんなの趣味の園芸

 奈良の大神神社の摂社である率川《いさがわ》神社の祭神がいた三輪山のふもとに咲いているのはササユリの花。しかし、ササユリは環境に敏感なうえに、近年ではイノシシによる被害や乱獲などで減少しています。大神神社では、ササユリの栽培に取り組み、今では境内には約3000株のササユリが植えらた「ささゆり園」がこの花の名所になっています。今日6月17日には率川神社の例祭「三枝祭《さいくさのまつり》」が行われ、ササユリが神前に捧げられます。

人も来ぬ奥山路の百合の花神や宿らん折らんと思へど
  ~正岡子規(1867-1902)『竹の里歌』

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#4635 音楽の絶えてこの夜になかりせばサン・サーンスの雨の山査子

令和7年6月14日(土) 【旧 5月19日 大安】 芒種・「腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)」

音楽の絶えてこの夜になかりせばサン・サーンスの雨の山査子《さんざし》
  ~塚本邦雄(1920-2005)『されど遊星』

250614_音楽の絶えてこの夜になかりせば
Photo:山田和樹(1979-)


 私が山田和樹という指揮者を初めて知ったのはもう10年以上も前。大阪フィルを振ったコンサートで、たしかベートーヴェンの7番を聴いたのを覚えています。その山田和樹がベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会に招かれたのが話題になっています。すでに終わった1日目の演奏はオーケストラが掃けた後まで拍手が鳴り止まないほどの名演だったそうです(下の写真)。同じ曲目で指揮台に立つ3日目の模様が今夜(正確には日付が変わった16日)の深夜2時にNHKEテレとBS4Kで生中継されます。曲目はレスピーギ「ローマの噴水」、武満徹「ウォーター・ドリーミング」、そしてサン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付」。ご興味のある方は要チェックです。

250614_サン・サーンスの雨の山査子
Photo:2025年6月14日のベルリン・フィル定期演奏会1日目。終演後も鳴り止まない拍手。


 でも、私に言わせると日本人の指揮者がベルリン・フィルを振るからといっても少々騒ぎすぎかも。確かにベルリン・フィルは世界屈指のオーケストラであり、その「定期公演」に招かれるのは別格ですが、定期公演以外も含めるとベルリン・フィルを指揮した日本人は近衛秀麿から山田耕筰、朝比奈隆、小澤征爾、佐渡裕、そして沖澤のどか、等など他にも多数。世界の音楽界をリードしている日本人の指揮者や演奏家は山ほどいるのに、その多くが海外を拠点に活躍されているため、逆に日本ではあまり知られていないのが少々残念なところです。

今よりも幸せだろうかカラヤンのように世界を指揮できたなら
  ~河辺新太郎(水戸市)「読売歌壇」2010年11月23日(俵万智選)

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