万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

#4433 冬の虹途切れたままにきらめいて、きみの家族がわたしだけになる

令和6年11月23日(土) 【旧 一〇月二三日 友引】 小雪・虹蟄不見(にじかくれてみえず)

冬の虹途切れたままにきらめいて、きみの家族がわたしだけになる
  ~大森静佳(1989-)

241123_冬の虹途切れたままにきらめいて
Photo:冬の虹 ~木瓜帽子のぶログ

 二十四節気「小雪」の初候5日間(11月22-26日)は七十二候の第58候「虹蔵不見(にじかくれてみえず)」。虹は太陽の光が大気中の水滴に反射し、屈折して現れるので、気圧配置の関係で日本海側では初冬に虹がよく現れるそうです。ところが真冬になると雨は雪に変わってしまうため、水滴が大気中に残らず、虹を作り出すことが難しくなるというわけです。実際に少しづつ寒さが強くなってきました。私の感覚では最低気温が10℃を切るとまさしく冬に突入した感があります。体調に気をつけなければ。ということで「勤労感謝の日」の俳句を一句。

今日仕事忘れ勤労感謝の日
  ~稲畑汀子(1931-2022)

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#4208 わが恋は虹にもまして美しきいなづまとこそ似むと願ひぬ

令和6年4月14日(日) 【旧 三月六日 友引】・清明 虹始見(にじはじめてあらわる)

わが恋は虹にもまして美しきいなづまとこそ似むと願ひぬ
  ~与謝野晶子(1878-1942)『恋衣』

240414_わが恋は虹にもまして美しき
Photo:七十二候だより

 今日は七十二候の第15候「虹始見(にじはじめてあらわる)」。二十四節気「清明」の末候にあたる5日間です。空気が乾燥した寒い冬から春にかけて少しづつ潤い始め、これからは雨上がりに虹を見ることが多くなってきます。晶子の恋はそんな美しい虹ではなく、稲妻のように激しいものであってほしいと言っています。それ、自分で言うか?というところが与謝野晶子の晶子たるところで、12人もの子だくさんに恵まれたわけですね。

春の虹となりの家も窓ひらく
  ~大野林火(1904-1982)『早桃』

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#4189 今やかの三つのベースに人満ちてそゞろに胸のうちさわぐかな

令和6年3月26日(火) 【旧 二月一七日 赤口】・春分 桜始開(さくらはじめてさく)

虹の環を以て地上のものかこむ
  ~山口誓子(1901-1994)

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Photo:山口誓子が晩年の居宅跡煮立てられた句碑(兵庫県西宮市苦楽園)~西宮流

 俳人山口誓子が亡くなったのは平成6年3月26日。今日はちょうど30年目に当たります。享年92歳。これは晩年の旧宅跡に建てられた句碑(写真)に刻まれた一句です。山口誓子の出生地は京都市の岡崎でした。俳句は中学校時代に始め、高校時代には日野草城、鈴鹿野風呂の指導を受けて「ホトトギス」に投句を始めています。本名は山口新比古(ちかひこ)でしたが、俳号はそれをもじって「誓子《ちかひこ》」としたのですが、初対面の人がみんな「せいし」と読んだため、その読みにしたとか。東京大学法学部卒。野球観戦が好きだったようで、後楽園球場ではこんな句を詠んでいます。

ナイターに見る夜の土不思議な土
  ~同(1901-1994)『青銅』

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Photo:山口誓子 ~Akita International Haiku Network

 大卒後就職先の神戸に移ったときにはきっと甲子園球場にも足を運んでいたことでしょう。ただし贔屓は巨人でも阪神でもなく、大洋ホエールズだったとか。ただ、テレビでの野球観戦はあまり好まず、球場に足を運んだのは、試合そのものより球場の雰囲気が好きだったようです。東大入学前に句会で出会った高浜虚子に師事していることから見れば、やはり野球好きは大先生の正岡子規の影響があるのでしょうか。

今やかの三つのベースに人満ちてそゞろに胸のうちさわぐかな
  ~正岡子規(1867-1902)

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#4066 むら雲の絶え間の空に虹立ちて時雨過ぎぬるをちの山の端

令和5年11月24日(金) 【旧 一〇月一二日 先負】・小雪 虹蔵不見(にじかくれてみえず)

むら雲の絶え間の空に虹立ちて時雨過ぎぬるをちの山の端
  ~藤原定家(1162-1241)『玉葉和歌集』 巻6-0847 冬歌

雲の間の空に虹が立って時雨は過ぎてゆく、遠くの山の端のほうへと。

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Photo:和歌山県白浜町で観測された月虹(2020/09/02)~AGARA紀伊民報

 虹は光が大気中に含まれる水滴(雨滴)を通過する際に分散することで見られます。一般には太陽光の下で起こることが多いのですが、条件が揃えば月虹が出る場合もあるそうです。今は七十二候の第58候「虹蔵不見(にじかくれてみえず)」。二十四節気では「小雪」の初候(11月22-26日)にあたります。陽の光が弱まり、空気が乾燥してしまうこの時季になると虹を見る機会も少なくなってしまいます。俳句では「虹」は夏の季語ですが、冬には「冬の虹」という季語もあります。

涙眼をあやふくささふ冬の虹
  ~上田五千石(1933-1997)『田園』

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#3849 港の葦が中なる玉小菅刈り来我が背子床の隔しに

令和5年4月21日(金) 【旧 三月二日 仏滅】・穀雨・葭始生(あしはじめてしょうず)

芦むらにうすれかかりぬ虹の端
  ~石原舟月(1892-1984)

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Photo:水辺のアシの群生 ~tenki.jp

 二十四節気の「穀雨」は昨日一日だけではなく、次の「立夏」の前日までの半月間をいいます。その初候5日間(4月20日~24日)は七十二候の第16候「葭始生(あしはじめてしょうず)」。この半月の間に気候もどんどん暖かくなって、野山の緑は少しずつ濃くなり、水辺の葦も芽を吹き始めます。晩春の季語である葦ですが、その葦を編んで垣根にした「葦垣」が『万葉集』にたくさん詠まれています。次の歌は家の垣根ではなく夫婦の寝間に仕切りを作ってくれという歌。夫のいびきがよほどうるさいのでしょうか。

港の葦が中なる玉小菅刈り来我が背子床の隔しに
  ~作者未詳(東歌)『万葉集』 巻14-3445

港の葦の中に生い茂る小菅を刈り取って来てください、あなた。寝床の仕切りにしたいから。

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