万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

#4837 あらたまの年をくもゐに迎かふとて今日もろひとに神酒たまふなり

令和8年1月2日(金) 【旧 11月14日 赤口】 冬至・雪下出麦

あらたまの年をくもゐに迎かふとて今日もろひとに神酒たまふなり
  ~藤原良経(1001-1058) 『六百番歌合』 巻1-0001 春歌

新らしい年を宮中に迎えるからと、今日多くの人々に神酒《みき》を下さることだ。

260102_あらたまの年をくもゐに迎かふとて
Photo:2025年1月2日の新年一般参賀 ~読売新聞オンライン

 正月二日は恒例の皇居一般参賀の日。天皇・皇后両陛下を始め皇族方が長和殿のベランダにお出ましになられます。一般参賀は一年に二度、新年1月2日と天皇誕生日に行われ、一般の人々が直接皇居に参入し、皇室とともに祝賀の意を表する事ができる唯一の機会です。新年の参賀が元旦に出来ないのは四方拝などの皇室行事があるためで、2日には参加者を入れ替えて5回行われます。一昨年2024年は1月1日に能登半島地震が発生したために中止されましたが去年は無事開催されています。

朝拝や春は曙一の人
  ~内藤鳴雪(1847-1926)

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#4789 とこしへに夏冬行けや裘扇放たぬ山に住む人

令和7年11月15日(土) 【旧 9月26日 仏滅】 立冬・地始凍(ちはじめてこおる)

とこしへに夏冬行けや裘《かはごろも》扇放たぬ山に住む人
  ~柿本人麻呂 『万葉集』 巻9-1682 雑歌

絶対に夏と冬が一緒に来る事などなかろうに、毛皮の衣も扇も手放さないのだろうか、山に住む仙人は。

 仙人の絵といえば白い衣装に杖を持っているというのが定番ですが、『古事記』などを素材にした能楽の「一角仙人」は確かに団扇のような大きな葉を手に持っています。人麻呂が見た絵に描かれている仙人はこれかもしれませんね。

251115_濁酒仙人仙女板戸絵に
Photo:能楽「一角仙人」(左)シテ:一角仙人、(右)ツレ:旋陀夫人

 すっかり寒くなって、今どき半袖のシャツを着ている人はいなくなりました。ところが先日(今月はじめ)、大阪のミナミを歩いていると、海外からやって来た観光客の中にTシャツ・短パン姿でリュックを担いだマッチョなカップルがいたのです。風邪を引くと帰りの飛行機に乗せてくれないから気を付けたほうがいいのにと、ついつい余計なことを思ってしまいます。あの人たち、北欧から来た仙人かもしれない。

濁酒仙人仙女板戸絵に
  ~有馬朗人(1930-2020)

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#4757 松茸のかをりを嗅げば村住の友がこころに触るるおもひす

令和7年10月14日(火) 【旧 8月23日 赤口】 寒露・菊花開(きくのはなひらく)

盃にとくとく鳴りて土瓶蒸
  ~阿波野青畝(1899-1992)

251014_盃にとくとく鳴りて土瓶蒸
Photo:陶磁庵

 秋の味覚のうちでいつの間にやら高級食材になってしまった松茸。土瓶蒸しを最後に頂いたのはいつのことやらすっかり忘れてしまいました。若い頃は焼き松茸や松茸ご飯などとともに土瓶蒸しもよく食卓に上がっていましたが、いまはたまに食べるのも輸入物ばかりです。輸入物は香りが違うといいますが、たしかに、永谷園の松茸の味お吸い物のほうがそれらしい香りが立っているようです。恥ずかしながら国産松茸の香りは忘れてしまったのでなんとも言いようがありませんが。

松茸のかをりを嗅げば村住の友がこころに触るるおもひす
  ~若山牧水(1885-1928)

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#4747 国よりは党を重んじ党よりも身を重んずる人の群れ哉

令和7年10月4日(土) 【旧 8月13日 友引】 秋分・水始涸(みずはじめてかる)

戊申紀元節
憲政施行二十年
此間更見國光宣
死餘老骨傾杯酒
恩賜館中會衆賢

  ~伊藤博文(1841-1909)

【訓読】
憲政施行二十年
此の間更に見る、国光の宣《のた》ぶるを
死余の老骨、杯酒を傾け、
恩賜館中、衆賢に会す。

【通釈】
立憲政治が行われて二十年、
この間、わが国の威光が広まるのを目てきた。
今日のめでたい日、死を待つばかりの老骨も杯を傾けて酒を飲み、
ここ恩賜館に集まってくれた賢人たちに会って楽しもう。

 詩題の「戊辰紀元節」は明治41(1908)年に行われた紀元節(2月11日)の集い。時の総理大臣は第12代西園寺公望でした。初代首相はもちろん伊藤博文ですが、伊藤はその後も第5代、第7代、第10代と併せて4度にわたって総理に任じられています。この漢詩には憲政以後、我こそが我が国の隆盛を実現してきたのだという自負が垣間見えています。

251004_国よりは党を重んじ党よりも
Photo:NHKニュース(2025年9月21日)より

 それから117年。今日は自由民主党の総裁選の投開票が予定されています。少数与党に落ちぶれたとはいえ、今日選ばれる自民党総裁が、おそらくはそのまま第104代内閣総理大臣になるのでしょう。街頭インタビューで「誰がなってもいっしょでしょ」と答える無関心な人もいるようですが、それは大違い。党員は「改革」を言うだけの人と実行できる気概のある人をちゃんと見極めて一票を投じてほしいものです。

国よりは党を重んじ党よりも身を重んずる人の群れ哉
  ~尾崎行雄(1858-1954)

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#4722 我が宿の菊の白露今日ごとに幾世つもりて淵となるらん

令和7年9月9日(火) 【旧 7月18日 赤口】 白露・草露白(くさのつゆしろし)

菊の酒人の心をくみて酌
  ~星野立子(1903-1984)

 今日9月9日は重陽の節句。この日に菊酒を飲むのは、中国の『芸文類聚』の中に、魏の文帝が書家でもあった重臣の鍾繇《けんしょう》に菊の花を贈ったという記事に由来するそうです。

250909_菊の酒人の心をくみて酌
Photo:MITSUKOSHI ISETAN MAGAZINE

 「重陽」は五節句の一つで、陰陽思想では奇数が陽であり、陽の数の中で最も大きい「九」が2つ重なる目出度い日であるとされています。もともとは奇数が重なると陽の気が強すぎて不吉なので、それを払うために節句があったのですが、これが後に祝い事に転じたとされています。もちろん本来は旧暦で祝うものであり、発祥の地である中国や台湾、ベトナムでは旧暦9月9日は祖先の墓を訪れて敬意を払う日であり、祝日となっています。日本では明治時代に太陽暦に転じましたが、太陽暦で重陽を祝うのはどうやら日本だけのようです。

我が宿の菊の白露今日ごとに幾世つもりて淵となるらん
  ~清原元輔(908-990)『拾遺和歌集』 巻3-0184 秋歌下

我が家の菊の白露は、毎年九月九日ごとに幾世も積もって目出度い淵となるのだろうか。

250909_幾世つもりて淵となるらん
Photo:こちらも祝杯。

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