万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

長崎

#4326 盛大に花火を上げむポスターのまたうつくしく原爆忌来る

令和6年8月9日(金) 【旧 七月六日 赤口】・立秋 「涼風至」(すずかぜいたる)

盛大に花火を上げむポスターのまたうつくしく原爆忌来る
  ~竹山広(1920-2010)

 竹山広は長崎に生まれ、多くの原爆の歌を残した歌人です。原爆忌といえば真っ先にヒロシマを思い浮かべ、海外の多くの要人が訪れるのは広島ですが、その3日後の8月9日には長崎でも7万4千人が犠牲になっていることをもっと知ってもらわなくてはなりません。記念式典にイスラエルを招待しなかったことがニュースになっていますが、本当はロシアなどの核兵器を保有する戦争当事国にこそ参加してもらいたい式典ではないでしょうか。

240809_姉ちやんたちは燃えてしもうた長崎忌
Photo:少女の手記が刻まれた平和の泉 ~travel nagasaki

 広島に投下したリトルボーイが高濃縮ウランを用いたガンバレル型であったのに対して、長崎に投下したファットマンはプルトニウムを用いたインプロージョン方式の原子爆弾でした。終戦後、アメリカでは広島型の開発を中止して、プルトニウム型の原爆による核武装を選択しました。米国はこの時の日本がポツダム宣言を受け入れざるを得ない状況になっていたことを読んでいました。したがって、せっかく開発した原子爆弾の威力を比較する実験を終戦前に行ってしまいたかったのだと思わざるを得ません。戦中の日系人への迫害を謝罪した合衆国ですが、原爆投下に対しては「戦争を終えるのに必要であった」という立場を変えていません。

姉ちやんたちは燃えてしもうた長崎忌
  ~松崎鉄之介(1918-2014)

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#4255 長崎の麥の秋なるくもり日にわれひとりこそこころ安けれ

令和6年5月31日(金) 【旧 四月二四日 先負】・小満 麦秋至(むぎのときいたる)

麦秋の中なるが悲し聖廃墟
  ~水原秋桜子

240531_長崎の麥の秋なるくもり日に
Photo:麦秋 ~AERAdot

 二十四節気「小満」の末候5日間は、七十二候の第24候「麦秋至(むぎのときいたる)」。麦が熟して、薫風に黄金色の穂波がそよぎます。麦秋(ばくしゅう・むぎあき)という言葉があって、これは麦の穂が実り、収穫期を迎えた書家の頃の季節を指すので、俳句の季語としても秋ではなく、初夏。この時期は比較的雨が少なく乾燥している日が多いのですが、沖縄・奄美はすでに梅雨入りしています。本土の梅雨も、もうすぐそこですね。秋桜子の句にある「聖廃墟」は被爆後の長崎の浦上天主堂のこと。長崎といえば斎藤茂吉も長崎の病院に勤務していましたが、その当時に詠まれた麦秋の短歌です。

長崎の麥の秋なるくもり日にわれひとりこそこころ安けれ
  ~斎藤茂吉(882-1953【万葉歳時記 一日一葉】 #4255

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#4246 戦場も美しく撮るしかなくてカメラマンは瓦礫に肘をつく

令和6年5月22日(水) 【旧 四月一五日 赤口】・小満 蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)

戦場も美しく撮るしかなくてカメラマンは瓦礫に肘をつく
  ~鈴木晴香 『塔』 2022年9月号

240522_カメラマンは瓦礫に肘をつく
Photo:西南戦争、官軍側から上野彦馬が撮った熊本城攻防戦 ~本牧jack『意外と身近にある歴史散歩』

 戦場カメラマンといえば、あのまったりした語り口の渡部陽一氏を思い浮かべますが、日本で最初の戦場(従軍)カメラマンをご存知でしょうか。幕末から明治にかけて多くの歴史的な写真を撮り続けた長崎のプロカメラマン上野彦馬(1838-1904)です。蘭学者の家に生まれ、オランダ人のもとで舎密学(化学)を学び、蘭書から湿板写真術を知ったというのはまさに長崎の人ならでは。明治の高官になってから肖像写真を残した人はたくさんいますが、後に銅像にもなった坂本龍馬や高杉晋作など早世した人の面影は幕末に撮った彦馬の写真なくては残りませんでした。多くの門人を育てて明治37年5月22日。長崎にて没。65歳でした。

龍馬像仰ぐ過客に風薫る
  ~橋田壽賀子

240522_戦場も美しく撮るしかなくて
Photo:慶応元年、勝海舟が志士たちを長崎に招集した際の集合写真
    ※左上は撮影した上野彦馬 ~BlogCafe『歴史に好奇心』

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#4134 八雲立つ出雲八重垣妻籠みに八重垣作るその八重垣を

令和6年1月31日(水) 【旧 一二月二一日 友引】・大寒 鶏始乳 (にわとりはじめてとやにつく)

除夜の妻白鳥のごと湯浴みをり
  ~森澄雄(1919-2010)『雪櫟』

240131_八雲立つ出雲八重垣妻籠みに
Photo:みのり -MINORI-

 「除夜」は大晦日ですから、もう1ヶ月前なのになんでこんな句を載せたかというと、今日1月31日は「愛妻の日」だから。1月の1を"I"に見立て、「あい(I)さい(31)」の語呂合わせからというよくあるパターンですが、こんな日があってもいいかもしれません。でも「愛妻」に対して夫に向ける同義語(対義語というべきか?)がないのがちょっと癪に障らなくはないですが。ところで、和歌に詠まれた愛妻の歌を探せば、いの一番に出てくるのがこの歌。何と言ってもスサノオノミコトが残した日本最古の和歌ですからね。

八雲立つ出雲八重垣妻籠みに八重垣作るその八重垣を
  ~素盞鳴尊 『古事記』

幾重にも重なる雲が湧くこの出雲の地に、妻を招き入れる宮を造ったが、その雲のように幾重にも重なるくらいの垣を作りたいものだ。

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#4107 新しき年のはじめにおもふことひとつ心につとめて行かな

令和6年1月4日(木) 【旧 一一月二三日 先負】・冬至 雪下出麦(ゆきわたりてむぎのびる)

らちもなき御用始めの訓辞かな
  ~内藤さち子 月刊『榾《ほだ》』2020年1月号

240104_らちもなき御用始めの訓辞かな

 今日は官公庁の「御用始め」。私は公務員ではなかったので毎年同じ日にちではありませんでしたが、公務員の場合は法律で12月29日から1月3日までを急かとすることが「行政機関の休日に関する法律」で定められています。内藤さち子さんの詳しいプロフィールは存じ上げませんがおそらくはどちらかの公務員でいらっしゃったのでしょう。そしてこの日の上司の訓示のくだらないこと。これは私企業でもよく見られる光景です。でも毎年同じような内容の訓示を言葉を換えて喋るのもつらい仕事であることは管理職になってくれば分かることでしょう。ともあれ今年も頑張りましょう。

新しき年のはじめにおもふことひとつ心につとめて行かな
  ~斎藤茂吉(1882-1953)

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