万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

防人

#4742 ふるさとの訛なくせし友といてモカ珈琲はかくまでにがし

令和7年9月29日(月) 【旧 8月8日 先負】 秋分・蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)

夕占《ゆふけ》にも今夜《こよひ》と告《の》らろ我が背なは何《あぜ》ぞも今夜寄しろ来まさぬ
  ~作者未詳(東歌)『万葉集』 巻14-3469 防人歌

夕占にも今夜だと告げられたのに、私の彼氏はどうして今夜来てくれないのでしょう。

 『万葉集』の巻14は東国で詠まれた和歌を収録した「東歌《あづまうた》」。東歌の面白さは東国の方言そのままで詠まれているところです。「夕占」は夕方の道端で往来の人の言葉で吉凶をうらなうことで、この言葉は方言ではありませんが、「告《の》らろ」や「何《あぜ》」、「寄しろ」は当時の東国独特の表現ですね。方言といえば、青森県出身の寺山修司にもこんな短歌がありました。

250929_若布煮て大阪弁の語尾甘し
Photo:大阪梅田の工事現場の仮囲い ~読売新聞オンライン

ふるさとの訛なくせし友といてモカ珈琲はかくまでにがし
  ~寺山修司(1935-1983)『空には本』

 「ふるさとの訛」と聞けば石川啄木の歌を思い浮かべますが、寺山の気持ちもよくわかります。テレビを見ていると関西出身の有名な俳優がたくさんいらっしゃいます。当然ドラマの中ではほぼ標準語ですが、インタビューやバラエティーの時も関西出身を悟らせないような完璧な標準語を喋っているのを見ると少しさみしい気がしないでもありません。「ふるさとの訛」ははずかしいですか。

若布煮て大阪弁の語尾甘し
  ~籏こと

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#4638 筑波嶺のさ百合の花の夜床にも愛しけ妹ぞ昼も愛しけ

令和7年6月17日(火) 【旧 5月22日 友引】 芒種・「梅子黄(うめのみきばむ)」

筑波嶺のさ百合《ゆる》の花の夜床《ゆとこ》にも愛《かな》しけ妹ぞ昼も愛しけ
  ~大舎人部千文 『万葉集』 巻18-4369

筑波山の百合の夜床の愛しい妻は昼も愛しい妻なのだよ。

 大舎人部千文《おおとねりべのちふみ》は常陸国(茨城県)から派遣された防人。「さ百合《ゆる》」「夜床《ゆとこ》」は東国方言の訛りです。万葉集に詠まれた百合の花はいずれも日本固有種で、関西ではササユリ、関東ではヤマユリであろうと考えられています。

250617_筑波嶺のさ百合の花の夜床にも
Photo:大神《おおみわ》神社のササユリ ~みんなの趣味の園芸

 奈良の大神神社の摂社である率川《いさがわ》神社の祭神がいた三輪山のふもとに咲いているのはササユリの花。しかし、ササユリは環境に敏感なうえに、近年ではイノシシによる被害や乱獲などで減少しています。大神神社では、ササユリの栽培に取り組み、今では境内には約3000株のササユリが植えらた「ささゆり園」がこの花の名所になっています。今日6月17日には率川神社の例祭「三枝祭《さいくさのまつり》」が行われ、ササユリが神前に捧げられます。

人も来ぬ奥山路の百合の花神や宿らん折らんと思へど
  ~正岡子規(1867-1902)『竹の里歌』

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#4608 湖が見たくて蔓をのばしゆき薔薇は煉瓦の塀をこえたり

令和7年5月18日(日) 【旧 4月21日 赤口】 立夏・「竹笋生(たけのこしょうず)」

湖が見たくて蔓をのばしゆき薔薇は煉瓦の塀をこえたり
  ~小林幸子 『日暈』

 バラ(薔薇)は草本ではなく、木本性の蔓性植物です。冬に見られるのはほとんどが温室育ちですが、春にも秋にも咲く種類がたくさんあり、今では年間を通してバラの花が見られます。しかし最も美しく咲くのは5月から6月ですね。

250518_湖が見たくて蔓をのばしゆき
Photo:万博記念公園の「平和のバラ園」(大阪府吹田市)~NOIBARA

 もともとバラの原種はヨーロッパ・中近東・中国・北米など様々な地域で見られ、日本も万葉集に詠み込まれたノイバラなどの自生地として世界的に知られています。これらを元に長年にわたって様々な品種改良が行われて多彩な園芸品種が生まれてきました。不思議なことに南半球にはバラが自生していなかったそうです。

道の辺の茨《うまら》の末《うれ》に延《は》ほ豆のからまる君を別れか行かむ
   ~丈部鳥《はせつかべのとり》 『万葉集』 巻20-4352

道端のイバラの枝先に絡みつく豆のつるのように、別れを悲しんですがる妻を残して旅立たねばならない。

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#4479 松の木の並みたる見れば家人の我れを見送ると立たりしもころ

令和7年1月8日(水) 【旧 一二月九日 友引】 小寒・「芹乃栄(せりすなわちさかう)」

松の木の並みたる見れば家人の我れを見送ると立たりしもころ
  ~物部真嶋 『万葉集』 巻20-4375

松の木が並んで立っているのを見ると、家の人々が並んで私を見送ってくれた様子にそっくりだ。

 物部真嶋は下野国の防人。天平勝宝7年に旅立つ際に詠んだ歌です。昔も今も常緑の松はおめでたいものの象徴として詩歌に詠まれてきました。


 今日は「正月事納め」といわれ、「松の内」または「注連《しめ》の内」の期間に飾られた門松や注連縄《しめなわ》の飾りを取り外す日とされています。「松の内」「注連の内」はかつては1月1日の「元日」から1月15日までとされてましたが、関東では1月7日までとするところが多いようです。お正月を一段落させる行事としては他にも「鏡開き」や「松納《まつおさめ》」「左義長(どんど焼き)」「小正月」「二十日正月」などがありますが、地域によってそれぞれ慣習や日にちが異なっているのが面白いですね。

われとわがこゝろに松を納めけり
  ~久保田万太郎(1889-1963)

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#4297 スマートフォンあやつる人ら満載し電車は夜の馬喰町過ぐ

令和6年7月11日(木) 【旧 六月六日 大安】・小暑 温風至(あつかぜいたる)

スマートフォンあやつる人ら満載し電車は夜の馬喰町過ぐ
  ~栗木京子(1954-)

240711_スマートフォンあやつる人ら満載し
Photo:アイフォーンを手にしたアップル創業者スティーブ・ジョブス氏~毎日新聞経済プレミア

 初代のiPhoneが最初に発売されたのは2007年でしたが、このときは日本の通信方式に対応していませんでした。翌年2008年の今日7月11日に2代目のiPhone3GがSoftBankから初めて日本で発売されました。一方、無償で提供されているGoogle社のAndroidOSを搭載した携帯電話も同じ頃に発売されはじめ、今では老若男女のほとんどがどちらかの端末を使うようになりました。発売当初は外出中にまで電話に追いかけ回されるのはお断りとばかりに、携帯を拒否する人も少なくなかったのですが、社会は技術の進歩に抗うこと出来ないようです。

吾子三才スマホでつなぐ尖閣の冬
  ~山本徳二(北海道)~第2回「海上保安の日」俳句コンテスト特選句

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