万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

#4895 かぎろひの春なりければ木の芽みな吹き出づる山べ行きゆくわれよ

令和8年2月28日(土) 【旧 1月12日 赤口】 雨水・草木萌動

かぎろひの春なりければ木の芽みな吹き出づる山べ行きゆくわれよ
  ~斎藤茂吉(1882-1953)『赤光』

260228_かぎろひの春なりければ木の芽みな
Photo:枯木逢春

 七十二候の第6候は「草木萌動(そうもくめばえいずる)」。草木が芽吹き始める頃で二十四節気「雨水」の末候にあたります。これは何も新しい命の誕生だけに限りません。すっかり枯れてしまったように見える草木も春が来て蘇ったように花を咲かせることもあります。「枯れ木に花」という意味に近い「枯木逢春《こぼくほうしゅん》」という四字熟語があります。衰え果てたものや絶望的な逆境にあるものが、再び勢いを盛り返し、活力や希望を取り戻す事をたとえた言葉です。

よからずや木の芽誘ふ雨も又
  ~稲畑汀子(1931-2022)

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#4892 あめの下のがるる人のなければや着てし濡れ衣干るよしもなき

令和8年2月25日(水) 【旧 1月9日 先負】 雨水・霞始靆

あめの下のがるる人のなければや着てし濡れ衣干るよしもなき
  ~菅原道真(845-903)『拾遺和歌集』 巻19-1216 雑恋

雨が降るような天下では逃れる人がいないからであろうか。着ている濡れ衣を乾かすすべもないようだ。

260225_ともしびの洩れくる菜種御供の森
Photo:道明寺天満宮の菜種御供大祭(大阪府藤井寺市)~OH! MATSURI

 延喜3年2月25日(903年3月26日)、菅原道真は左遷先の大宰府で亡くなっています。その後、彼を追いやった藤原時平は急死し、醍醐天皇の皇子が相次いで病死。京都では疫病や落雷事故など天変地異が続いたため、菅原道真の祟りと怖れられました。このため、天慶5(942)年、多治比文子が北野の右近馬場に社殿をかまえて菅原道真の霊を祀るべしという御神託をうけて、天暦元(947)年に創建されたのが京都の北野天満宮です。菅原道真の命日にあたるこの日、北野天満宮では「梅花祭」が、また大阪の道明寺天満宮では「菜種御供《なたねごく》」が行われます。

ともしびの洩れくる菜種御供の森
  ~加藤三七子(1925-2005) 

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#4886 春の雨のあまねき御代を頼むかな霜に枯れ行く草葉もらすな

令和8年2月19日(木) 【旧 1月3日 先負】 雨水・土脉潤起

春の雨のあまねき御代を頼むかな霜に枯れ行く草葉もらすな
  ~藤原有家(1155-1216)『新古今和歌集』 巻16-1478 雑歌

春の雨があまねく大地を潤すように、御代におすがりするのです。霜に枯れてゆく草葉のような私にも、漏らすことなくご慈悲を賜りますように。

 二十四節気の2番目は「雨水」。『暦便覧』には「陽気地上に発し、雪氷とけて雨水となればなり」とあり、そろそろ雪が雨に変わる頃。とはいえ、まだまだ北国や山間部は深い雪に閉ざされているところが多く、これが解け始める過程では雪崩や雪下ろし作業中の事故などには一層の注意が必要になる時季です。

260219_春の雨のあまねき御代を頼むかな
Photo:暮瀬堂日記〜俳諧師たちの春の雨

 七十二候では「雨水」の初候4日間は第4候の「土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)」。春の雨が降って土が湿り気を含んでくるころ。少しづつ春の草花が芽吹く条件を整えてくれているというところでしょうか。

落ちてゐし種ふくらめる雨水かな
  ~滝沢伊代次(1925-2010)

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#4827 なつかしき春の形見かうつぼ草夏の花かや紫にして

令和7年12月23日(火) 【旧 11月4日 友引】 冬至・乃東生(なつかれくさしょうず)

夏枯草の畦に座れば雨落つる
  ~西口百艸(1893-1968)

 期間としての「冬至」は次の「小寒」の前日までの半月間です。その初候4日間(12月22日~25日)は七十二候の第64候「乃東生(なつかれくさしょうず)」。乃東は一般には「夏枯草」と書かれます。これを音読みで「かこそう」とも言い、さらに靭草《ウツボグサ》という別名で呼ばれることもあります。

251223_夏枯草の畦に座れば雨落つる
Photo:夏枯草の芽吹き ~多摩てばこネット

 多くの植物が冬枯れしていく中で、シソ科の多年草、夏枯草はこの時期に芽吹き始めます。6月頃、紫色の花が花穂の下から上に向かって咲いていきます。しかし、一番上の花が咲く頃には下の方から枯れ始め、夏至の頃にはすっかり枯れてしまうのでこの名が付きました。実際「夏至」の初候には七十二候の「乃東枯」(なつかれくさかるる)」が置かれています。「靭草」というのは枯れきった花穂が武士の矢を入れる靭に似ているところから付けられました。

なつかしき春の形見かうつぼ草夏の花かや紫にして
  ~与謝野晶子(1878-1942)『夢之華』

251223_なつかしき春の形見かうつぼ草
Photo:夏枯草の花(左)と枯れてしまった花穂(右)~Urban Green(稲毛高浜北団地の緑)

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#4807 ゆふされば大根の葉にふる時雨いたく寂しく降りにけるかも

令和7年12月3日(水) 【旧 10月14日 大安】 小雪・橘始黄(たちばなはじめてきばむ)

流れ行く大根の葉の早さかな
  ~高浜虚子(1874-1959)

 大根の旬は寒い冬の季節。アブラナ科の植物で実は地中海・中東地方が原産だそうです。弥生時代には既に日本でも栽培されていて地下に伸びた根を食用にしていました。春の七草の一つ「すずしろ」は大根のこと。花を咲かせるのは3月から5月頃です。

251203_ゆふされば大根の葉にふる時雨
Photo:大衆道楽割烹三代目あかつ

 食用としては春大根、夏大根もあって一年中いただくことができますが、春夏の大根は辛味が強くなります。代表的な青首大根の旬は冬。冬の大根は寒さに耐えるために甘みが増してきます。そのうえ、大根にふくまれるビタミンCは免疫機能の維持に欠かせない役割があるので風邪の予防にもぴったりです。おでんやぶり大根などしっかりと出汁が染み込んだ大根の味は絶品ですね。ちなみに葉に近い部分が最も甘く、尻尾のほうが辛味が強くなります。

ゆふされば大根の葉にふる時雨いたく寂しく降りにけるかも
  ~斎藤茂吉(1882-1953)

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