万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

#4512 スノー・ドロップの花のみ土に暮れ残り死にたる人はいづこを歩む

令和7年2月10日(月) 【旧 1月13日 先勝】 立春・黄鶯睍睆(うぐいすなく)

スノー・ドロップの花のみ土に暮れ残り死にたる人はいづこを歩む
  ~大西民子(1924-1994)『花溢れゐき』

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Photo:スノードロップ ~PREMIER GARDEN

 スノードロップはヒガンバナ科ガランサス属の球根植物。冬の終わりにこれからやってくる春を告げるように花を咲かせます。学名のガランサス(Galanthus)はギリシャ語で「ミルクの花」。英語の Snowdrop は16世紀から17世紀にかけて人気のあった涙滴型の真珠のイヤリングであるドイツのSchneetropfen(Snow-drop)に由来するそうです。和名は待雪草《まつゆきそう》。エデンを追われたイブを慰めるため、天使が地上に舞い降り、降っていた雪をこの花に変えて慰めたというキリスト教の逸話から「希望」「慰め」という花言葉が生まれました。

春の雪ふる草のいよいよしづか
  ~種田山頭火(1882-1940)

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#4511 はるけくも山がひに来て白樺に触りて居たり冷たきその幹

令和7年2月9日(日) 【旧 1月12日 赤口】 立春・黄鶯睍睆(うぐいすなく)

はるけくも山がひに来て白樺に触りて居たり冷たきその幹
  ~斎藤茂吉(1882-1953)『赤光』

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Photo:白樺の林 ~Hello Interior

 シラカバはカバノキ科の落葉樹。その名の通り樹皮が白い樺の木でシラカンバやシロザクラなどとも呼ばれています。白樺は寒冷地に多く見られますが、鬱蒼とした森ではなく日当たりがよい山地に自生します。白樺の群生地として有名なのは北八ヶ岳の山麓に広がる八千穂高原でしょうか。でも白樺の大木というのはありません。というのも白樺の寿命は短く、よく育っても幹径は50cmくらいまで。あの白い樹皮も20~30年くらいで消えてしまうそうです。ちなみに白樺は春の季語。4月から5月頃に花をつけます。そういえば千昌夫の『北国の春』の出だしも「♫ 白樺 青空 南風……」でしたね。

花ゆらぐ白樺立てり雪解風
  ~水原秋櫻子(1892-1981)『殉教』

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#4510 雪のうちに春はきにけり鶯のこほれる涙いまやとくらん

令和7年2月8日(土) 【旧 1月11日 大安】 立春・黄鶯睍睆(うぐいすなく)

雪のうちに春はきにけり鶯のこほれる涙いまやとくらん
  ~二条后(842-910) 『古今和歌集』 巻1-0004 春歌上

雪が降っているのに、春が来ている。 鶯の凍っていた涙は、今はもうとけているだろうか。

 二条后とは藤原北家長良《ながら》の娘藤原高子《たかいこ》のこと。後に清和天皇の女御となり陽成天皇を生んでいます。

250208_雪のうちに春はきにけり鶯の
Photo:残り雪の中のウグイス ~よっちのバードフォト

 今日は七十二候の第2候「黄鶯睍睆(うぐいすなく)」。鶯が春を告げるさえずりを聞かせてくれる頃。二十四節気「立春」の次候にあたります。ウグイスは渡り鳥ではなく留鳥なので年中どこかで啼いているのですが、「ホーホケキョ」と美しいさえずりを聞かせてくれるのは繁殖期である春から夏にかけて、それもオスだけ。秋から冬にかけてはオスもメスも「チャッチャッチャ」という地啼きをしているのでウグイスとは気がつきません。

ほがらかに鶯なきぬ風の中
  ~日野草城(1901-1956)

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#4506 せつぶん草さく山道の森かげに雪はのこりて春なほさむし

令和7年2月4日(火) 【旧 1月7日 先勝】 立春・東風解凍(はるかぜこおりをとく)

せつぶん草さく山道の森かげに雪はのこりて春なほさむし
  ~昭和天皇(1901-1989)

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Photo:セツブンソウ(広島県総領町)~庄原観光ナビ

 節分草《セツブンソウ》はキンポウゲ科の多年草。まだ雪が残っているような節分の頃に咲き始めるためにこの名があります。古くは家楡《いえにれ》とも呼ばれ、一本の茎には2センチくらいの白い花をひとつだけ咲かせます。ただし花に見えるのは花弁状の萼片です。日本固有種で栃木県の星野の里や兵庫県丹波市などに群生地がありますが、乱獲や環境破壊によって希少植物になっています。花言葉は「気品」「高貴」「微笑み」など。残念ながらそんな花言葉に縁遠い私などはまだ出会ったことがありません。

又も聞く節分草は見たきもの
  ~高澤良一(1940-)『素抱』

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#4496 冬空の澄み極まりし青きより現はれいでて雪の散り来る

令和7年1月25日(土) 【旧 一二月二六日 先勝】 大寒・水沢腹堅(さわみずこおりつめる)

冬空の澄み極まりし青きより現はれいでて雪の散り来る
  ~窪田空穂(1877-1967)『泉のほとり』

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Photo:水沢腹堅(さわみずこおりつめる)~七十二候だより

 今日から1月29日までの5日間は七十二候の第71候「水沢腹堅(さわみずこおりつめる)」。二十四節気「大寒」の次候にあたります。寒さも極まって沢の水も凍りついてしまう頃。ちなみに「沢」とは地が低くて浅く水がたまり、草が茂っている所。特に、山間の広く浅い谷を指します。窪田空穂の生家があった長野県東筑摩郡和田村(現・松本市和田)にはそんな場所が多かったのでしょうね。

吹く風のふきのつのりに天つ空いよいよ澄みて遥かなるかな
  ~同

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