万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

#4811 雪のみや降りぬとは思ふ山里にわれも多くの年ぞ積もれる

令和7年12月7日(日) 【旧 10月18日 先負】 大雪・閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)

雪のみや降りぬとは思ふ山里にわれも多くの年ぞ積もれる
  ~紀貫之(872-945)『新古今和歌集』 巻6-0676 冬歌

雪だけが降ったと思っていたが、山里に埋もれた私も多くの年を積もらせてきたものだ。

251207_雪のみや降りぬとは思ふ山里に
Photo:Adobe Stock

 二十四節気の21番目は「大雪《たいせつ》」。雪が激しく降り始める頃で、『暦便覧』では「雪いよいよ降り重ねる折からなれば也」と説明しています。また、期間としての大雪は次の「冬至」までの半月間でそれを三等分した最初の5日間は七十二候の第61候「閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)」。天地の気が塞がって本格的に冬になり、今年も残すところあと僅かと実感し始める頃ですね。

ヴィヴァルディ「四季」の大トリ雪荒ぶ
  ~林龍三(1952-)


Youtube:ヴィヴァルディ協奏曲集『四季』から冬の第3楽章(3’19”)

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑

#4805 体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ

令和7年12月1日(月) 【旧 10月12日 先負】 小雪・朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)

極月の雪ほぐしをり善光寺
  ~西本一都(1905-1991)『景色』

 今日から12月。12月の異称といえば「師走」がよく知られていますが、「極月《ごくづき・ごくげつ》」も12月のことを指します。一年が極まる最後と月ということで俳句や詩では好んで使われます。

251201_極月の雪ほぐしをり善光寺
Photo:雪の善光寺さん ~trounecoさん(GANREF)

 歳を重ねれば一年の時の流れの速さを感じることはしょっちゅうあります。さらに12月の声を聞くとその思いは格別。「今年の漢字」やら「十大ニュース」、「流行語大賞」、更には「クリスマス」に「レコード大賞」「紅白歌合戦」。興味ないとは言いながら、イベントが賑やかであればあるほど別れを押し付けられるような寂しさを感じます。今年は例年よりインフルエンザの流行が随分前倒しに始まりました。先日は孫が突然の発熱で日曜朝の朝4時に40℃超え。救急車のお世話になった次第です。皆様もあと1ヶ月、元気に乗り切りましょう。

体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ
  ~穂村弘(1962-)

注:体温計をくわえて「雪だ!」と言ったつもりの彼女にツッコミをいれた歌のようです。

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑

#4798 潮騒に伊良虞の島辺漕ぐ舟に妹乗るらむか荒き島廻を

令和7年11月24日(月) 【旧 10月5日 友引】 小雪・虹蔵不見(にじかくれてみえず)

ダフニスとクロエのかける夏野かな
  ~山田禮子 「遠嶺」 2001年10月

 シャルル・デュトワの指揮による一昨日土曜日の大阪フィル定期演奏会、後半のプログラムは『ダフニスとクロエ』でした。原典は紀元2世紀のギリシャの詩人ロンゴスの著した散文作品。山羊飼いの少年ダフニスと羊飼いの少女クロエの苦難に打ち勝った純愛の物語をフランスの作曲家モーリス・ラヴェルがバレエ音楽にしています。三島由紀夫もこの物語を知って、そのプロットを活かした文芸作品を書き上げました。

251124_ダフニスとクロエのかける夏野かな

 『ダフニスとクロエ』の舞台はエーゲ海に浮かぶレスボス島でしたが、三島は舞台を設定するに当たって『万葉集』の中の一首に着目したのです。

潮騒に伊良虞《いらご》の島辺漕ぐ舟に妹乗るらむか荒き島廻《しまみ》を
  ~柿本人麻呂(662-710)『万葉集』 巻1-0042 雑歌

潮流がざわめく今ごろ、伊良虞の島のあたりを漕ぐ舟に、愛しい人も乗っているのだろうか、あの波の荒い島のまわりを。

 人麻呂の歌にある「伊良虞の島」について、直接水産庁にまで問い合わせて見つけたのが三重県鳥羽市の歌島(神島の古名)でした。そして主人公の山羊飼いと羊飼いは若く純朴な漁夫と海女に置きかえられました。日本的風景の中に溶け込んだ純愛小説『潮騒』は世界中で翻訳され、アメリカではベストセラーになりました。そして日本では映画化だけでも5度、テレビやラジオ、舞台などでも数限りなく脚本化されています。

251124_潮騒に伊良虞《いらご》の島辺 漕ぐ舟に

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑

#4796 螢田てふ駅に降りたち一分の間にみたざる虹とあひたり

令和7年11月22日(土) 【旧 10月3日 赤口】 小雪・虹蔵不見(にじかくれてみえず)

小雪や実の紅の葉におよび
  ~鷹羽狩行(1930-2024)

251122_小雪や実の紅の葉におよび
Photo:南天の実 ~mkbkc’s diary(Hatena Blog)

 二十四節気の第20「小雪」。『暦便覧』には「冷ゆるが故に雨も雪となりてくだるが故也」とあり、わずかながらも雪が降り始める頃です。期間としての「小雪」は次の「大雪」までの半月間で、この間に日差しがどんどん弱くなり、紅葉も殆ど散ってしまいます。そして「小雪」の初候5日間は七十二候の第58候「虹蔵不見(にじかくれてみえず)」。さすがに雨が雪に変わるほど寒くなってくると大気中に水滴は残らず虹も現れにくくなるようです。

螢田《ほたるだ》てふ駅に降りたち一分の間にみたざる虹とあひたり
  ~小中英之(1937-2001)『翼鏡』

 小中英之は京都市舞鶴市生まれの歌人ですが、螢田駅は神奈川県小田原市、小田急小田原線の駅です。

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑

#4791 白鳥が生みたるもののここちして朝夕めづる水仙の花

令和7年11月17日(月) 【旧 9月28日 赤口】 立冬・金盞香(きんせんかさく)

白鳥が生みたるもののここちして朝夕めづる水仙の花
  ~与謝野晶子(1878-1942)『草の夢』

 今日は二十四節気「立冬」の末候、七十二候の第57候「金盞香(きんせんかさく)」。金盞とは黄金の盃のことで、水仙の異名でもあります。この花が咲いて香りが漂うころ。花びらにみえる外側は白い萼(がく)で、内側の筒状の3枚が花びらです。これが銀の台に乗った黄金の盃に見えるところからこうよばれます。

251117_ふりかくす雪うちはらひ仙人の
Photo:雪に耐える、水仙 ~GANREF(RYU!)

 今、普通に「キンセンカ」と呼ぶと水仙ではなく、マリーゴールドのことを指すので要注意です。一方、本名?の「水仙」は「天にあるを天仙、地にあるを地仙、水にあるを水仙」という中国の古典から採られたもの。二十四節気も「立冬」が過ぎると次は「小雪」。雪の中でも凛と咲くその姿から「雪中花」という別名もあります。風雪にびくともしない冬の花です。

崖ゆする浪の荒れざま野水仙
  ~上村占魚(1920-1996)

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑
記事検索
🎼 I love music ♪

読んでくれたひと(感謝)
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

過去記事すべて見られます▼
📖私の著書です
【電子書籍・紙書籍】


  • ライブドアブログ