万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

#4371 いなづまはかげろふばかり有し時秋のたのみは人しりにけり

令和6年9月23日(月) 【旧 八月二一日 仏滅】秋分・雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)

いなづまはかげろふばかり有し時秋のたのみは人しりにけり
  ~詠み人しらず 『古今和歌六帖』 第1-0816

稲妻がかげろうのようにほんの一瞬光った時、秋の逢瀬などどれほどのものかを人は知るのですよ。

240923_いなづまはかげろふばかり有し時
Photo:稲妻 ~ことくらべ

 期間としての「秋分」は次の「寒露」の前日までの半月間です。それを3等分した最初の5日間は七十二候の第46候「雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)」。春から夏にかけて鳴り響いた雷もそろそろ鳴りを潜める頃。秋の雷は稲が育つ時期と重なるため昔の人は雷が稲を実らせると考え、稲妻と呼びました。科学的にも必ずしも間違っていないそうで、雷は大気中の酸素や窒素に化学反応を起こさせ天然の肥料である窒素酸化物を作り、雨とともに大地に降り注ぐのだそうです。とはいえ、毎年のように雷による死亡事故が発生しています。ゴロゴロと遠くで雷鳴を聞いたら建物や車の中に即避難です。

かみなりの墓場もあらん見にゆかん
  ~金子兜太(1919-2018)

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#4261 草をとる手に蟷螂の上り来て透けたる細き脚もて身構ふ

令和6年6月6日(木) 【旧 五月一日 大安】・芒種 螳螂生(かまきりしょうず)

草をとる手に蟷螂の上り来て透けたる細き脚もて身構ふ
  ~山岡弘道 『碧き湖』

240606_草をとる手に蟷螂の上り来て
Photo:でれすけ

 二十四節気「芒種」の初候5日間(6月5日-9日)は七十二候の第25候「螳螂生(かまきりしょうず)」。前年の秋に交尾し、草の茎や小枝、建物の壁などに産み付けられたカマキリの卵が一斉に孵化する時期です。昆虫を大まかな印象で、カワイイ系、コワイ系、キモチワルイ系の3つに分けると、カマキリはおそらくコワイ系に入るのでしょうが、生まれたばかりのかまきりはまだカワイイ系と言ってもいいかもしれません。大きくなったからと言っても毒があるわけでもないのですが、交尾の後にメスはオスを頭からかじって食い殺すといいます。やっぱりコワイ系ですね。私もカマキリではなく、人間のオスに生まれてつくづく良かったと思っております。

野の風や蟷螂生る雷神
  ~島田五空(1875-1928)

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#4208 わが恋は虹にもまして美しきいなづまとこそ似むと願ひぬ

令和6年4月14日(日) 【旧 三月六日 友引】・清明 虹始見(にじはじめてあらわる)

わが恋は虹にもまして美しきいなづまとこそ似むと願ひぬ
  ~与謝野晶子(1878-1942)『恋衣』

240414_わが恋は虹にもまして美しき
Photo:七十二候だより

 今日は七十二候の第15候「虹始見(にじはじめてあらわる)」。二十四節気「清明」の末候にあたる5日間です。空気が乾燥した寒い冬から春にかけて少しづつ潤い始め、これからは雨上がりに虹を見ることが多くなってきます。晶子の恋はそんな美しい虹ではなく、稲妻のように激しいものであってほしいと言っています。それ、自分で言うか?というところが与謝野晶子の晶子たるところで、12人もの子だくさんに恵まれたわけですね。

春の虹となりの家も窓ひらく
  ~大野林火(1904-1982)『早桃』

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#4193 「今暫し悪い男で生きてゐよ」春雷の夜に妻が呟く

令和6年3月30日(土) 【旧 二月二一日 仏滅】・春分 雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)

「今暫し悪い男で生きてゐよ」春雷の夜に妻が呟く
  ~西王燦《にしおう さん》(1950-2023)「短歌人」2022年6月号

240330_山垣にとゞろきて消ゆ春の雷
Photo:春雷 ~サッキーのお気楽ブログ

 二十四節気「春分」の末候5日間は七十二候の第12候「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)」。昨日は4月並みの暖かさになりましたが、安心していると昨日の東京のように「春の嵐」に襲われることも。この時期は突然の雨とともに遠雷が鳴りはじめ、時として雪や雹を降らせることもあります。そうなると、またしても寒の戻りか、はたまた異常気象かとも思ってしまいますが、例年この時期は寒冷前線の通過に伴って、大気が不安定になることがあるのだそうです。

山垣にとゞろきて消ゆ春の雷
  ~及川貞《おいかわてい》(1899-1993)『榧の實』

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#4005 天の原踏みとどろかし鳴る神も思ふ仲をばさくるものかは

令和5年9月24日(日) 【旧 八月一〇日 大安】・秋分・雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)

天の原踏みとどろかし鳴る神も思ふ仲をばさくるものかは
  ~詠み人しらず 『古今和歌集』 巻14-0701 恋歌四

大空を踏み荒らして轟かせる雷でも二人の仲を決して引き離すことは出来ないだろうよ。

230924_天の原踏みとどろかし鳴る神も.jpg
Photo:稲妻 ~ことくらべ

 七十二候の第46候は「雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)」。「秋分」の初候5日間(9/23-9/27)です。雷はもともと「神鳴り」というのが由来ですから、古歌では「鳴る神」として詠まれる例が多いのは当然のことですね。また落雷は春分の末候「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)」から始まって秋分のはじめに収まるとも言われています。ほんとにその通りというわけではありませんが、これは稲が育っていく時期と重なるのです。「稲妻」という言葉もあって、昔の人が雷が稲を実らせると考えていたようです。

稲妻や豊年祭過ぎし空
  ~尾崎放哉(1885-1926)

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