万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

#5031 彦星の妻迎へ舟漕ぎ出らし天の川原に 霧の立てるは

令和8年7月7日(火) 【旧 5月23日 先負】 小暑・温風至

序破急に小暑の不快指数かな
  ~鈴木しげを(1942-)

 今日は二十四節気11番目の「小暑」です。期間としては次の「大暑」までの15日間。例年であればだいたいこの時期に梅雨が終わるはず。『暦便覧』には「大暑来れる前なればなり」と記されていますが、既にここから本格的な夏が始まると考えたほうがよさそうです。

260707_彦星の妻迎へ舟漕ぎ出らし
Photo:Discover Japan

 そして7月7日は「七夕」。本当は旧暦七月七日の行事なので俳句では初秋の季語とされています。昔から秋の風物詩として「七夕」に関する和歌はたくさん詠み続けられてきました。男女が一年に一度しか会えないという切ない恋の物語は時代を越えて共感されています。ちなみに『万葉集』だけでも130首以上の七夕の歌が詠まれています。

彦星の妻迎へ舟漕ぎ出らし天の川原に霧の立てるは
  ~山上憶良(660-733)『万葉集』 巻8-1527 雑歌

彦星が妻を迎えに舟を漕ぎだしたようだ。天の川原に霧が立っているのは。

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#4940 生きざまも自由律動放哉の深き孤独に酒を供えむ

令和8年4月7日(火) 【旧 2月20日 先負】 清明・玄鳥至

春の山のうしろから烟が出だした
  ~尾崎放哉(1885-1926)(辞世)

 種田山頭火と並ぶ自由律俳句の著名な俳人、尾崎放哉《ほうさい》はちょうど100年前の今日、1926(大正15)年4月7日に香川県小豆島の南郷庵で亡くなりました。出身は鳥取県。放哉の句作は中学時代にはじまっており、その後一高から帝大に在学中までの作品は定型句でした。

郷を去る一里朝霧はれにけり
  ~同(大学時代の定型句)

260407_春の山のうしろから烟が出だした
Photo:尾崎放哉

 帝大法科を卒業し、一校時代の俳句仲間だった荻原井泉水《せいせんすい》が提唱する自由律俳句に刺激されて作風が一挙に変わっています。自由律俳句とは五・七・五の定型や季語、切れ字に縛られず、感じたままの心の動きを独自の律動で表現する俳句です。放哉のエピソードを見ると酒で保険会社を免職、妻に心中を迫って逃げられるなど、なるほどと思わせる生活態度だったようです。死因は肺結核、海の見えるところで死にたいと言って亡くなった小豆島の南郷庵に放哉の墓と尾崎放哉記念館があります。

生きざまも自由律動放哉の深き孤独に酒を供えむ
  ~林龍三(1952-)

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#4809 消してしまうあの霧になりに行くバミューダトライアングルを飛ぶ

令和7年12月5日(金) 【旧 10月16日 先勝】 小雪・橘始黄(たちばなはじめてきばむ)

消してしまうあの霧になりに行くバミューダトライアングルを飛ぶ
  ~綿鍋和智子

 今からちょうど80年前(1945年12月5日)、アメリカ海軍フライト19(第19編隊)のアヴェンジャー雷撃機5機が訓練飛行中に突然消息を絶つという事件がありました。遭難推定地域は一般にバミューダトライアングルと呼ばれるフロリダ半島の先端とプエルトリコ、バミューダ諸島を結んだ三角形130万k㎡の海域でした。以後、12月5日は「バミューダトライアングルの日」とされています。

251205_消してしまうあの霧になりに行く
Photo:フライト19のアベンジャー雷撃機 ~超常現象の謎解き

 バミューダトライアングルに関する遭難事件はその後も相次ぎます。近くは2005年6月に3人乗り軽飛行機が、2015年10月にはアメリカの貨物船が消息不明となり、2017年5月には4人乗り小型機がレーダーから消えました。天候の急変や磁力異常、ダウンバーストから時空間移動や宇宙人まで、原因とされる説がたくさんあって、私もこういう話題に興味は尽きません。そういえばスピルバーグの映画『未知との遭遇』(1978年)の冒頭シーンではフライト19の5機が時空を越えて搭乗者14人と共に現代に帰ってきたシーンでしたね。

秋の日の澄み徹りゐる道をゆき神隠しにわが遇ふにもあらず
  ~大西民子(1924-1994)『風水』

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#4700 川千鳥棲む沢の上に立つ霧のいちしろけむな相言ひそめてば

令和7年8月18日(月) 【旧 閏6月25日 赤口】 立秋・蒙霧升降(ふかききりまとう)

川千鳥棲む沢の上に立つ霧のいちしろけむな相言ひそめてば
  ~作者未詳 『万葉集』 巻11-2680 寄物陳思

川千鳥が棲むという沢の上に湧く霧のように目立ってしまうだろう。こんなに愛を語り合えば。

250818_川千鳥棲む沢の上に立つ霧の
Photo:かもめ日記

 今日は七十二候の第39候「蒙霧升降(ふかききりまとう)」。「蒙霧《もうむ》」はもうもうと立ち込める霧。朝晩の空気が涼しくなって霧が立ち込める頃。春先の霧のような冷気とはまた違う、まとわりつくような湿度を感じさせる霧です。昼間の蒸し暑さは相変わらずですが、それでも熱帯夜とはお別れすべき季節には違いありません。

山霧の梢に透る朝日かな
  ~黒柳召波(1727-1772)

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#4693 関守に富士のあるべき方を問ふ朝霧深き箱根路の湖

令和7年8月11日(月) 【旧 閏6月18日 大安】 立秋・涼風至(すづかぜいたる)

関守に富士のあるべき方を問ふ朝霧深き箱根路の湖
  ~林龍三 『塔』 2019年12月号

 私が芦ノ湖を訪れた日は朝からすごい霧に包まれていて、この写真のような風景どころかあたりは真っ白。「箱根関所」の観光案内の方に普通の日なら富士山はどの方向に見えるのか尋ねたという歌でございます。

250811_関守に富士のあるべき方を問ふ
Photo:箱根芦ノ湖から望む富士山 ~Yahoo! ニュース

 8月11日は「山の日」。たまたま今日は月曜日ですが、ハッピーマンデーによるものではなく固定祝日です。制定の経緯としてはお盆休みにつなげる意味から当初8月12日とする案が出されましたが、1985年8月12日に世界最多の犠牲者を出した「日本航空123便墜落事故」がありました。毎年のように御巣鷹山において追悼式があることからこの日を避けて11日に決定されたのです。いずれにせよ13日からお盆休みが始まるために12日も併せて休みにする企業が多く、「山の日」を制定したために日本のお盆は大型連休化が当たり前のようになりました。

夏川や鳥居太しき登山口
  ~小澤碧童(1881-1941)

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