万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

静岡

#4451 荒熊の棲むとふ山の師歯迫山責めて問ふとも汝が名は告らじ

令和6年12月11日(水) 【旧 一一月一一日 先負】 大雪・「熊蟄穴(くまあなにこもる)」

荒熊の棲むとふ山の師歯迫山《しはせやま》責めて問ふとも汝《な》が名は告《の》らじ
   ~作者未詳 『万葉集』 巻11-2696 寄物陳思

荒々しい熊が棲むと言う師歯迫山の名のように、いくら問い詰められても、決して貴男の名前は言いません。

 この歌で荒熊に例えられているのはこの娘の母親。娘に変な虫(男)がつかないように見張るのは父親ではなく母親の役目だったようです。

241211_荒熊の棲むとふ山の師歯迫山
Photo:ツキノワグマ ~そらのした Style

 ということで今日は七十二候の第62候「熊蟄穴(くまあなにこもる)」。二十四節気「大雪」の次候にあたり、そろそろ熊さんも冬眠に入る季節だという意味。今年話題になったのは人里に近づいた熊を駆除するハンターに対する風当たりです。殺される熊が可愛そうという抗議電話が話題になったり、北海道では砂川町の要請で駆除のために猟銃を撃ったハンターが、跳弾が建物に当たる「可能性」があったとして銃の使用許可を取り消されたりしたこともありました。これには猟友会が反発し、今後熊の駆除には協力しないと申し合わせることに発展するなど、今までになかった様相を呈しています。熊さんにも言い分があるのでしょうが、スーパーマーケットに入ってきてはいけません。

熊撃ちに行くとふ微笑髯の中
  ~遠山陽子(1932-)

Youtube:さだおのアニメから


  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑

#4442 この雪の消残る時にいざ行かな山橘の実の照るも4

令和6年12月2日(月) 【旧 一一月二日 赤口】 小雪・「橘始黄(たちばなはじめてきばむ)」

橘の黄の小さきは右近かな
  ~吉田鴻司(1918-2005)

 京都御所内裏の紫宸殿正面に植えられた左近の桜と右近の橘。言うまでもありませんがこの左・右は左大臣・右大臣の席と同じく天皇から見た左右なので私達が一般公開で訪れると左右が逆に見えます。

241202_橘の黄の小さきは右近かな
Photo:京都御所の紫宸殿(京都市上京区)

 さて、今日は七十二候の第60候「橘始黄(たちばなはじめてきばむ)」。橘の実が黄色く色づき始める頃。二十四節気「小雪」の末候に当たります。橘とは日本に古くから自生していた「ヤマトタチバナ」のことですが、昔は柑橘類の総称として使われていました。俳句で「橘」といえば実のほうを指して晩秋の季語。「花橘」とすれば仲夏の季語として使われます。どちらかといえば花橘を詠んだ句のほうが多いようですが、和歌でも同じ。万葉集に登場するのもほとんどが「花橘」を愛でた歌です。数少ない橘の実を詠んだ歌の中から一首です。

この雪の消《け》残る時にいざ行かな山橘の実の照るも見む
  ~大伴家持(718-785)『万葉集』 巻19-4226

この雪が消えてしまわないうちに、いざ行こう。山橘の実が照っているのを見ようではないか。

241202_この雪の消残る時にいざ行かな
Photo:橘の実 ~tenki.jp

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑

#4427 木の下のほの明るきは何なると寄る朝光に水仙咲けり

令和6年11月17日(日) 【旧 一〇月一七日 友引】 立冬・金盞香(きんせんかさく)

木の下のほの明るきは何なると寄る朝光に水仙咲けり
  ~大下一真 『漆桶』

241117_木の下のほの明るきは何なると
Photo:とんぼ池公園(大阪府岸和田市)の水仙郷に咲く水仙たち ~祈りログ~

 二十四節気「立冬」の末候は七十二候56番目の「金盞香(きんせんかさく)」。金盞花とはキク科のキンセンカではなく、ヒガンバナ科のスイセンの花のこと。金盞とは黄金の盃のことで、水仙の花の中央に見える筒状の花びらを指しているようです。原産地はイベリア半島から地中海沿岸地域。日本には中国を経て平安時代に渡来したそうです。さて実際に今水仙が咲いているかといえばどうでしょうか。ニホンスイセンの群生地として有名なところはたくさんありますが、開花期は早いところでも12月に入る頃なので、もう少し待ったほうがよさそうですね。大下さんの短歌は朝の光の中の水仙。夕暮れの水仙を詠んだ俳句もありました。

夕雲の水仙を呼ぶひかりなり
  ~藤田湘子(1926-2005)『てんてん』

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑

#4378 彼岸花 水引草 鶏頭 緋の色のやや寂しきを秋と呼ぼうか

令和6年9月30日(月) 【旧 八月二八日 大安】秋分・蟄虫坯戸(むしかくれてとをふさぐ)

肉たるむ鶏頭倦めり九月尽
  ~有働亨(1920-2010)

240930_彼岸花水引草鶏頭緋の色の
Photo:ケイトウ ~Plantia

 九月も今日で終わり。さすがに35℃以上の猛暑日は影を潜めて、やっと秋の兆しを感じる程度になってきました。さて、ヒユ科の一年生植物、鶏頭《ケイトウ》の原産地はインドや熱帯アジア。早いものでは7月頃から咲き始めますが開花期は長く、11月頃まで咲き続けます。俳句では秋の季語です。鶏のトサカに似ているから名付けられた名前ですが種類が多く、羽毛状や球形、あるいはノゲイトウのように細長い円錐形の花穂を付けるものもあります。いずれにせよ秋は野の花が百花繚乱。これから冬に向かって寂しくなっていく前に私達の目を楽しませてくれます。

彼岸花 水引草 鶏頭 緋の色のやや寂しきを秋と呼ぼうか
  ~大下一真(1948-)『漆桶』

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑

#4363 治まれるやまとの國に咲き匂ふいく萬代の花の春風

令和6年9月15日(日) 【旧 八月一三日 友引】白露・鶺鴒鳴(せきれいなく)

治まれるやまとの國に咲き匂ふいく萬代《よろづよ》の花の春風
  ~徳川家康(1543-1616)『戦国時代和歌集』

 徳川家康が亡くなった元和2(1616)年、駿府で詠んだ和歌です。

240915_治まれるやまとの國に咲き匂ふいく萬代の花の春風
Photo:自民党総裁選立候補者一覧 ~自由民主党HP


 さて、15日に公示された自由民主党の総裁選は9月27日に投開票が行われます。実質的に次の内閣総理大臣が決まる重要な選挙ですが、国民が直接投票できるわけではないので、自民党の国会議員や党員のみなさんには、当然ながら保身の為ではなく国家国民の為に本当に尽力されるであろう方を見極めていただきたいものです。僭越ながら、我が国のオールスター偉人内閣を夢想してみました。新総理になられる方にも日本史に残るような偉業を期待しています。

総理大臣:徳川家康 (副)中臣鎌足
官房長官:北条政子 (副)豊臣秀長
総務大臣:保科正之 (副)蔦屋重三郎
法務大臣:藤原不比等 (副)北条泰時
外務大臣:吉備真備 (副)坂本龍馬
財務大臣:平清盛 (副)日野富子
文科大臣:菅原道真 (副)渋川春海
厚労大臣:山上憶良 (副)長谷川平蔵
農水大臣:上杉鷹山 (副)青木昆陽
経産大臣:織田信長 (副)田沼意次
国交大臣:伊能忠敬 (副)間宮林蔵
環境大臣:和気清麻呂 (副)安倍晴明
防衛大臣:北条時宗 (副)林子平
デジタル大臣:関孝和 (副)平賀源内
復興大臣:行基 (副)木下藤吉郎
宮内庁長官:楠木正成

注:皇族および明治以降を除く(女性が少なくてすみません)。

餅を搗く町長選挙投票後
  ~山本照雪

  にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ にほんブログ村
d ^_^;  よろしければ 1Day 1Click を↑
記事検索
🎼 I love music ♪

読んでくれたひと(感謝)
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

過去記事すべて見られます▼
📖私の著書です
【電子書籍・紙書籍】


  • ライブドアブログ